「現実を認めなさい、アリス。あなたはもう歩けない。それだけの魔法を過ったの」
押し黙るアリスに少女は続ける。
「あなたが使った土壇場での魔法。
あれは本来一番やってはいけないこと、それくらい判っていたでしょう?」
「……わかってたわよ」
ぶっきらぼうに答えるアリスをベッドに座らせるユウト。
「その神経と筋肉が滅茶苦茶になった脚はまず間違いなく二度と使い物にはならないわよ」
「…………」
アリスは俯いた。
今まで考えないようにしていただけで、この脚はもう二度と歩けるようにはならない。
ようするにあの時はただ後先考えず、必死にあがいただけだ。
「えっと……」
「スーシィでいいわよ」
「スーシィ、お前がアリスをこんな目に遭わせたのか?」
「違う……と言ったらおかしいけれど、誘因となるようなことをしたのは間違いないの」
ユウトはアリスに問い詰めた。
「どういうことだ、アリス。俺は彼女、スーシィをつまみ出した方がいいのか?」
アリスは目を瞑ったまま首を横に振る。
「スーシィ、あんたが言う取引って何よ」
もたげた首をスーシィに向けてアリスが言った。
「ようやくその気になったわね」
スーシィは椅子から飛び降りるように地面に立ち、言葉を紡いだ。
「私はあなたのその脚を治すことができる」
治癒魔法か? ユウトはそう思った。
「ただし、条件がいくつかある。私を匿(かくま)って。それが条件の一つ」
「待ってくれ、スーシィ。お前はアリスの脚を治せるって言ったけど、治癒魔法で治せるものなのか?
それならどこでも――」
「違う、治癒魔法で治るなら『取引』になんてならないわ」
「それじゃ、あんたしか治せないとでも言うわけ」
「そうよ、それは治癒魔法では治らない。――けれど、私には治すことができる」
スーシィはくすりと笑った。