「そっか、なら魔法乗用機でも使うか? お詫びに」
うるうると目を輝かせるアリス。
立て続けにくる大男をひょいひょいと躱すユウト。
「それがいいわ! それが理想型よ!
ふふ、けどねっ? あんたお金なんて持ってるの?
言っておくけど私はすっからかんよ!」
「威張って言うほどのことかな……、大体あの宿を取ったのは誰だと思ってるんだ」
「やっぱりあんた……お金、持ってるのね?」
「金を鼻にかける趣味はないけどな。こう見えても昔は結構リッチだったんだ」
「昔はって……」
今はないのねと項垂れるアリス。
魔法乗用機は論外とも言うほどの値段で使えないことがわかり、
待ち合わせの広場まで着くとスーシィはまだ来ていないようだった。
アリスをベンチに座らせ、ユウトは雑踏に行く人々を眺めていた。
「ねえ、誰を探しているの?」
「え!」
ユウトは虚を突かれたように慌てた。
「い、いや」
「あによ、言えないの?」
「や、その――す、スーシィまだかなって」
「へぇ、私には別の誰かを捜しているように見えたけど、まあいいわ。
気持ち悪いからもうしないでほしいとだけ言っておくわ」
アリスは少し安心していた。先ほどユウトが見せた横顔は穏やかだった。
「気持ち悪い……て」
「あ、来たわね」
そんな二人の間に小さい影が入って言った。
「ごめんなさい、待った?」