Neetel Inside 文芸新都
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「ええ、私は待っていたわ」

 マントの中が少し膨らんでいるだけで、
 後は手ぶらだったスーシィは何気なしにユウトの膝の上に座った。

「――はあ、ここが一番落ち着くわ」

 ユウトの頬に手を這わせるスーシィ。
 くりくりした両目がユウトの双眸(そうぼう)を捕らえて離さない。

「ちょっと! ――ちょっと!」

 アリスが不穏な気配を感じたのかスーシィを追い払うように左手を仰ぐ。
「やん」
 スーシィは大げさによろけてみせる。

「大丈夫? スーシィ」
「ええ、あなたの膝の上ですもの」
「ふふ、そうだね」何故だか妙におかしな空気が漂っている。

「え? ユウト? 気味悪いってば」

 アリスはあまりに異様な黄色い臭いに吐き気を示した。
「なあんてね」
「はっ――」

 何かに気づいたように辺りを見回すユウト。

「魅了(チャーム)の魔法よ」
「あんたねえ……『チャームの魔法よ』じゃないでしょ! あに人の使い魔にしてくれてんのよ!」

「あら、結構驚かないのね。誰でも使えるような魔法じゃないのに」
「大昔、どこぞの国の悪女はそういうので異性の心中を虜にすると読んだことがあるわ」

「そ、まあいいわ。とりあえず早く行きましょう。
 今日中にフラメィン学園につけるんだから」
「待ちなさい」
「なに」
「私の使い魔に二度とその魔法を掛けないことね。取引やめにするわよ」

 するとスーシィは低い視線から睥睨するように凄んだ。
「脚が治らなくてもいいの?」
「あんたが困るなら望むところだわ」

 アリスの方がよほど性悪なのでは、と思いながらユウトたちは街を後にした。


       

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