一通りの説明を冬羽から受けた後、俺は黙祷をする。気配を察知するためだ。
時刻は二時。
場所は双桜樹公園、二つ並んだ桜の木前。
あの時ベンチに座っていた“和葉”と呼ばれるミュージシャンは、今夜はいない。
こんな夜中に何で刀で戦うんだよ、まったく。
……殺し合いか。
そこまで考えた時、ふいに後ろの方から
――じゃら
と金属音がした。振り返る俺。
と、同時に、俺の左手首に痛み、否、火であぶられたかのような激痛が劈く。
くるくると。
くるくるくると。
いとも簡単に、俺の左手首は宙を舞っていた。
ボトッと鈍い音がして、敵の目の前に落下する。
まさに瞬撃、血すら流させないほどの早業だ。
「気がつくのが遅すぎる」
“そいつ”が発する声。若い男――少年だ。前のボタンを全部外した学ランを着ていて、中学生くらいに見える。その両手には左右一つづつ鎌を持っていて、まるでカマキリのような風貌だった。
「今回はそれ、か」
外見は中学生のくせに鎖鎌という“実に人間にとって扱いにくい”武器も使いこなしていることに、実に関心する。
……感心している場合じゃない。
ボタボタと今切られたことに気がついたかのように、血が流れ出す俺の手首。
「……」
右手で、担いだ刀「百日紅」を引き抜き、俺の左手を切り落とした“そいつ”に向かって俺は突進した。
片手を失うという序盤的には致命的な肉体的欠落を許した俺は、ロジカルもくそもなく、早急に決着をつける必要があった。
「!」
俺の敵は、突進する俺に対して防御もせず、そこに立ち続けた。
横薙ぎに一閃、俺はそいつを斬った。
――ひゅん