Neetel Inside 文芸新都
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勘違いも甚だしい。
「分かった?」
貴理子は顔を上げる。
「そうだな、胸が大きく―」
張り手。痛い。

「髪の毛切っとるやないか。」


私が住んでいるのは山奥の別所中野町という場所である。たぬきがでる、いのししがでる、狐もいる。時々、熊が出る。山奥から時々猟銃の銃声が聞こえてくる。そんな、山に囲まれた、小さな谷の村である。人口は400人。全員顔見知り。私はその村で生まれ、育った。都会へは一度行った事がある。小学生の頃だろうか、叔父が死んだというのでその葬式のために行った、と、記憶している。都会の人間はなぜか顔が全員同じように見えて、子供ながらに恐怖を覚えた。テレビの向こうに移る都会は、きらびやかで、華やかで、美しく見える。しかし、私は都会に住んでも、いや、住めたとしても、おそらく、その喧噪の中で淘汰されてしまうだろう。都会に姿を消した切り、それいらい誰も彼をみていない、なんていうのは嫌なのだ。だから、私は、この村に住んでいる。平和だ。空を飛行機が飛んでいる。縁側から空を眺めている。

隣にはワイシャツとショートパンツの貴理子がいる。
夢中にスイカを食べている。私はスイカが嫌いである。
あの、悪魔的な甘さと、水を吸わせたスポンジを食べているかのような、食感。どれも苦手である。基本的に果物が私は苦手だ。ジューシーで、甘くて、嫌いである。いや、おそらく、ジューシーで、甘い物が私は嫌いなのだ。果物に限らず。果物以外でジューシーで、甘い物があっただろうか?

チューペットは好きである。だから、スイカを食べている貴理子の隣で、私はチューペットを、母親の乳を吸う子供のように夢中で吸っている。手の温度でじわり、じわりと解けていくチューペット。うまい、た

       

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