返事はない。
しんと静まり返った屋敷はただ不気味な空の色を室内に取りこむばかりだ。
「さ、探すのか?」
タクヤは恐る恐る聞いてみる。
「……」
綾女は自分の家のことだけあって、気になっている様子であった。
鈴音は怖いモノ見たさからか、楽しそうにも見える。
ナミの表情からは何も読み取れない。
『っばっかもん! いいから探せ!』
突然脳裏に響いた声は亜夕花のものだった。
「うわっ」
米神を抑えてタクヤは屈む。
朝方に貰ったコンタクトからの通信だろう。亜夕花もこの状況を把握しているようだった。
「親父、聞こえるのか?」
『ああ、当たり前だ。それより、ちょっといいか?』
視線を起こすと、怪訝な顔ぶれが三つあった。
「あ、あーてすとてすと」
刹那、喉に鈍痛が走ったかと思うと、タクヤの喉から亜夕花の声が聞こえてきた。
「きゃ、なんなのそれ」
「ぼ、僕じゃない」
「その通りだ。タクヤの声帯を借りてお前達と通信している」
タクヤの喉元からは依然として女の子の声が聞こえてくる。
これも父の発明なのか? 常識とモラルを逸したとんでもない発明である。
やりすぎよ、という鈴音の意見はどこか弱々しく聞こえた。
「お前達が入ったという屋敷だがな、どうにもおかしい」
亜夕花は少し間を置いて、全員が聴く態度を取ったのを見計らって切り出した。
「お前達がその屋敷へ入った途端、お前達を追っていたこちらのレーダーから生体反応が消えた。
厳密に言うと、生体波長と呼べる生き物が持つ活動音と、電気信号の反応のことだ」
「つまり、私たちはこの屋敷に入った途端に死んだとでもいいたいの?」
「いや、そうではない。近くに強力な磁場があるか、
生き物のようなものの体内に入ったかという説がより論理的だろうか」
「簡単に言ってくれ」
「ふむ……」
亜夕花は少し考える間をおいてから、ゆっくりと言った。