「奴らは生命として極限に進化した生き物だ。
繁殖能力も高く、あらゆる個体に種付けすることができる上、
直接遺伝子を書き替えて同種族にしてしまうことも出来る前代未聞のモンスターなんだよ」
タクヤはナプキンで口を拭くと麗未に礼をして亜夕花に向き直った。
「何でそんな危険生物がいるんだ?」
「わからん、わかっているのはそいつが五十年前に何の前触れもなく滝川家の屋敷から現れ、
傷を受けた者、交わった者、その悉くが異形の姿へとなりかわってしまったことだ」
「まるでバイオハザードだな……ナミや鈴音はどうしたんだ、あの後」
亜夕花は立ち上がり、空を一瞬仰いだ。
「生きている。ついてこい」
亜夕花に続くタクヤ。小さい背中を向けながら部屋を出て狭い通路を進んでいく。
「ナミ、鈴音、綾女この三人だったな」
「ああ」
他にも誰か居た気がするが、それは思い出せなかった。
道を抜け出たところで大きな壁へ突き当たった。
そこは強固というよりは生々しいほどに鋼鉄で固められた扉だ。
「この奥にいるのか?」
「そうだ」
亜夕花は静かにそう言ってロックを解除する。
徐々に荘厳な扉が開かれていき、エメラルドに輝く三つの柱が垣間見えた。
「これ……は……」
あられもない二人の赤裸々な姿がそこにあった。
円柱はディスプレイの向こう側で二人の体を包み込んでいた。
「我々は奴らと交戦して敗北した。今から四十五年前だ、たったの五年しか持たなかった」
「敗北って……二人は死んでいるのか?」
「いや、生きている。しかし、肉体の変質を防ぐためにあの状態で留めているだけで――」
「それは、つまりあそこからは出せないってわけか」
「そうなる」
「――お前っ、四十五年も何してたんだよ!」
タクヤは亜夕花の胸ぐらを両手で掴んで持ち上げた。あまりの軽さに亜夕花は空に浮いた。
「ぐっ、勘違いするな。わ、私だってそれなりに努力した。
だがな、これはもう理屈では覆せない力だったんだ。
ああやって時間を置くことでしか手段がなかった――わかってくれ……」
「今残ってる美少女の数は?」
震えた声でタクヤはそれを聞いた。聞かざるを得ない。