Neetel Inside 文芸新都
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 一方その頃、高層48階建ての最上階オフィスに、飲料水製造会社『リンクポトン』の社長が居た。
「今日から社長に就任する水無瀬鏡華(みなせきょうか)と申します。
 製造ロットを早速改変致しますので各々部署に緊急招集を掛けてください」

 タクヤとナミは一つの問題点を見逃していた。
 それは置き換えによって経験や記憶までもが置き換わるわけではないという問題点だ。
 つまりは、『美少女個人の経験・能力を超える置き換えは成立しない』ということである。
 
 しかし、この街が今日までその均衡を崩さずにあったのは偏に優秀な彼女たちの働きのおかげである。
 そう、タクヤが呼び寄せた理想の高すぎる少女たちの大半、
 否、全ては決してただの美少女だけのカテゴライズで収まる者達ではない。
 その実体は現実世界を超越したエキスパート達の集団だったのだ。
「社長、B―53からの連絡です」
 側近の凛々しい美少女がアタッシュケースに詰められた複数の携帯の一つを取り上げて言う。
「繋いで」
『――こちらB―53。エリア3問題なし。活性エリア内オールグリーンです。
 局部的にイエローでしたが、先鋭人材を投与しました。緊急を要した為、独断で行いましたが認可願います』
「こちらZ―1。お勤めご苦労さまです。そちらの行動は認可致します。
 引き続き巡回警備、及び異端排除にまわってください」
『――了解しました』
 ピッという電子音で静寂が訪れる。無線を持ってきた彼女は一礼してその場を後にする。
「必ずいるはずよ……この街に、もっと強大な力の持ち主が」
 オフィスの窓から鏡華は見下ろす。青空の下に高層建築が建て並んでいる。
 この何処かに『元凶』がいるはずなのだと彼女は小さく美しい唇を結んだ。

 何事もなくタクヤが能力を得てから一ヶ月が経とうとしていた。
 二月ももう終わりであることくらいしかタクヤの頭にはない。
 当初の目的、『美少女ハラマ』に基づき、美少女は着々と手に入れているタクヤだが、
 どうもしっくりこない。簡単すぎるのだ。

「はぁあああ――ん」
 地下三千メートルの研究施設は今やただの肉欲と劣情の巣窟でしかない。
「これ、何人目?」

       

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