目の前に横たわる精液まみれの少女をナミが手厚く介抱する。
「5318人目です」
「よし、学校に行くぞ」
タケルがいつだかのバレーのときにしたイマジンクリエイトの超人的能力は『精力』に他ならない。
生命力が大幅に上がったと思っても言い換えても良い。眠る必要もなくなった。
住宅街へ出ると2メートル後ろを歩くナミ。僕はそのナミに呼びかけた。
「なあ、ナミ」
「なんですか」
手招きをして他人の距離をやめろという。
「僕さ、友達がほしいんだけど。これって変かな」
気づけばそんなことを口走っていた。
決して美少女ハラマを諦めるつもりも途中でやめるつもりもない。
ただ、今自分がしている生活には本当にただ本能という一点でのみしか機能していない。
「変だとは思わない。人は一人では生きられないという言葉を肯定するわけじゃないけど……」
「? 言いたいことがあるなら言って良いぞ」
ナミにしては歯切れが悪い。
「……私じゃ足りてない?」
胸を突くような衝撃が走ったかのように思えた。人間に近づくナミの言動は時折タクヤの想像を超える。
彼女は一体何を望んでいるのだろうか。
「足りてると……思うけど」
そう言ったときだ。目の前に一人の美少女がツインテールを揺らしながら現れる。
「……」
明らかに異質なオーラ。黒いフリルのついた制服に白いスカートはゴスファッションのようにも見える。
脚に巻かれた大量のフリルからは何やら歪な黒い塊が見える。
5メートルほど離れた位置に対峙して、少女はスカートから携帯を取り出した。
「B―53。エリア4にてレッドを視認、コード63により緊急戦闘態勢に入る。
目的は対象の生死を問わない捕獲」
『許可する――』
「おいおい……」
タクヤがここ一週間でわかったことは、この美少女達の中にはこうして組織化した者が、
街の治安を維持しテリトリーを保有していることだった。
しかし、ここまで自分に敵意を見せる相手は初めてであった。
タクヤは今までの相手も同様に戦闘になってきたが、まずは普通に呼び止められることが多かったからである。