「タクヤ、来ます!」
――シュ。
空気を滑る音と、何かの初動作が見えた。タクヤは戦闘が騒ぎにならないように創造する必要がまずあった。
『半径2000メートルを一時的に三人の共有意識へ』
正確には2kmも正確に想像できるはずはないが、とりあえず途方もない距離を想像することで事足りる。
この瞬間からこの街の一角で自分たちの他の人間に意識されることはない。
「タクヤ、毒塗りのナイフ使いです。神経毒を食らいました」
いつの間にかナミは片腕で飛来した子ナイフを受けていた。タクヤが標的になった瞬間、
ナミは即座にタクヤの肉壁として機能することを選んでいたのだ。
「ごめん、ナミはもう下がっていていい」
「この毒は……っ、呼吸器系――ッ」
ナミの呼吸は途端に浅く速くなり、両膝を折って座り込み頭を垂れる。
相当苦しいのだろう、命に関わるかもしれない。それでも倒れないのはナミの執念という他ない。
「女が盾になったか。この毒は我が社が作り出した特製でね。残念ながら解毒剤はないんだ。
ほとんどの毒に耐性がある昆虫ですら麻痺する代物だ。捕獲されるまで生きていれば御の字だな」
『全ての神経毒に対する最も効果ある解毒剤』
タクヤはこの隙にすでに注射器を握っていた。それをナミの腕に射し入れる。
「ふん、どこから取り出したか知らないが無駄だ」
少女は背中から大型のナイフを取り出す。
サバイバルナイフ(BMF)のような峰の部分がギザギザになったやつだ。
両手に二本、脚を組み直して構えた。
「殺す気か?」
「お前はこの世界の創造主だろう? ただの人間ではないことくらい解っている」
何故知っている――?
僕もまた姿勢を構えた。皮肉なことに顔だけは可愛い。
あのフリルの中に逸物をくわえ込ませて濁流を流し込みたい。
頭の中で戦闘とは関係のない黒いオーラがわき起こり、戦慄とは違う武者震いが起こった。
「余裕だな。丸腰の分際でっ」
少女が駆け出す。しかし、それとは対照的に僕は目を瞑った。想像するのは――。
『目の前の女の●●コに俺の逸物の先を空間転移』
「?!ッ――」
思わず声を上げた少女は駆けだしたその姿勢のまま動かなくなり、
恐る恐る目線を下にやる。僕は下着の中が温かく、それでいて窮屈で、
何か柔らかなものに包まれている感触に浸っていた。