咄嗟にタクヤは手を放した。
それは愛撫の中止であり、遠目から見てもわかる内股の生理現象を放棄したということでもある。
「――ふぇ? ァっ、えっ? ッ――」
直前で止められた甘美は小さな余波となって少女を襲った。
それは熱い舌でありとあらゆる性感の地肌をゆっくりとなで上げられたような快感。
彼女は得体の知れない心地に吐き気を催すほどの歓喜と劣情を焚きつけられた。
「う――ッ、はぁ、ぅく」
生殺し。まさにその一言でしかない。
少女は周囲の状況など忘れ、何かを求めるようによろよろと公園を出て行く。
「(計算通り)」
「あんた……普通じゃない」
朝陽はあからさまな敵意を見せ、柊は女の敵と言ったような目つきでタクヤを見る。
「今頃気づいたのか。まあ、気づいたところで、お前たちには何もできない」
おもむろに素早く朝陽は銃を拾いタクヤに向けた。
――ダンダンダンダンダン。
「…………」
リボルバー式の拳銃の衝撃は相当だろうが、
それを転ばずに撃っただけでも朝陽は射撃の才能があるに違いなかった。
「タクヤを殺すことは私がいる限り、させない。不可能」
「うそ……」
そこには映画でしか見たことがないような弾頭だけが空中で止まっている状態があった。
その後ろに長髪のナミが端正な美顔で二人を睨んでいた。
「化け物……」
そう言った時だった。公園の頭上から突如巨大な影が差し込んだ。
「そう、殺せないのね、なら封印するまで」
白いワンピースに身を包んだ少女が涼しい声で突如朝陽たちのそばに現れた。
「ちょっと、何あれ……」
頭上には直径100メートルはあろうかという巨大な岩の塊が落ちてきている。
気がつくと朝陽と柊は公園の外に立っていた。
「え?」
「やっちゃうよ~!」
思考が追いつかないまま、元気な声が何処からか聞こえる。
ナミとタクヤは声を失っていた。岩の造形は籠のようにドーム型になっている。
無難にやり過ごすなら逃げるしかない。
「ナミっ!」