「――なんだよ……これ……」
タクヤの眼前。校門のそこには男、男、男だらけの掃き溜めだった。
あまりのむさ苦しさに春だというのに変な汗を背中に感じた。
「男――だらけですね」
ナミは女子の制服を着ているが、股にはナニがついている。結衣は生粋の男になったし、学校も違う。
つまり、深刻な状況とはタクヤしか女がいないということだ!
「くっ……視線で犯されてるようだ」
無論、そのような男の山に女が、しかもタクヤは美少女として顕現しているのだから、
男子の視線は圧力となってタクヤを襲う。
「やぁやぁ、こんにちは」
早速とは語弊があるかもしれない。
しかし、見た目美少女二人が校門で立ちすくんでいれば、
それは獣の巣に近づいた仔猫のようにしか映らないことだろう。
「行くぞ、ナミ」
タクヤは挨拶にやってきた男子生徒を無視して一人歩き出した。
「お、ちょっ、待ってくれ」
追い掛けてきた男子生徒をナミが捕まえる。
男は胸ぐらを捕まれたその手を軽く払おうとした。
ところが、男の腕はまるで鋼鉄に当たったかのように弾かれた。
「……ちょっと、離してくれないかな」
「追い掛けないと誓いなさい」
男は気迫に負けてなりふり構っていられなくなった。ナミの腕を両手で掴んで引き離そうとする。
「な、なんだよ! 離せよ」
離れない。それどころか、男の両足は地面から離れた。
「わかった! 誓う誓う!」
ナミの片腕から力が抜かれると男は途端に地面へ落ちた。
そのまま尻餅をついた男子生徒は登校中の男達に嗤われる羽目となる。
「ナミ」
タクヤがドスを利かせようと思ってもその声は鈴の音のように美しかった。
「すみません。男に対する応対はマニュアルしか知らないので……」
「どんなマニュアルだよ……」
確かにナミが出来てからはこれが自分以外の男との接触になる。
ナンパの躱し方も教えないとだめなのだろうか。
「はぁ……」
タクヤはナミを連れて今度こそ昇降口へと向かった。