「わかりました」
二人は顔を見合わせた後、そう言った。
「では、お行きなさい。あなたたちの力があれば、下手な援軍も返って邪魔でしょう」
オフィスの分厚い扉を開き、外へ出た二人は溜め息をつく。
「はぁ~」
「どうして私たちがあんなイカレた奴らと面と切って立ち会わないといけないわけ?」
「鏡華が直接行けばいいのに……」
ただ戦うだけなら不満はない。
しかし、鏡華の言うことはかなり無茶苦茶であった。
「A―12……、瑞華が辞めたのも頷けるわ」
二人は頷いてビルから出た。
涼しい風と春の陽気が吹きつけたのと同時、可愛い声が掛けられた。
「そこの御二人さん☆」
赤毛で妖艶な笑みを浮かべる女、
申し訳程度に下げたお下げが幼さを演出し、
そのギャップが何か本能を撫でるような淫を含んでいた。
そこには二人を遙かに凌ぐ美少女が立っていた。
「だれ」
そう先に口を開いたのは聡明な鈴音だ。
彼女は物怖じすることなく、目の前の女が敵か味方かを図りあぐねていた。
「私は亜夕花。旧姓は望月だけど、二人にはちょっと私の相手をしてもらうよ」
鈴音がタクヤの姿を見たとき、既にその場は犯されていた。
「鈴音!」
みつきが叫んだが、時遅く、タクヤの力が彼女達の力の先をいった後であった。
「くっ」
「まさか、二人に俺と同等の力があったなんてね。予想外だったよ」
隔離空間を展開したタクヤ、ナミ、結衣、亜夕花と鈴音、みつきの二人は対立するように立つ。
「不変と、修羅。間違いないですね」
ナミの言葉に亜夕花は頷いた。
「同等の力は使った者勝ちというわけ?」
「そういうことらしいな。この世界でお前の『不変』はこの空間を許容したということだ」
「ここは私たちに任せて、亜夕花とタクヤは早く外へ」
結衣が言い終わるか否かというところで、タクヤと亜夕花は隔離空間から姿を消した。
「どういうこと?」
「こういうことだよっ」
「――っ!」
結衣が黒スカートを翻すのと同時に鋭利な切っ先が鈴音の喉元へと肉迫した。