「タクヤ、お前今、『想像創造(イマジンクリエイト)』できるか?」
「は――?」
イマジンクリエイトってなんぞや? としか思わない。
「やはり忘れているのか……」
話しによると、イマジンクリエイトとは想像したものほぼ全てを実現可能な能力だという。
そんな厨の考えそうな妄想が、この親父の頭脳では実現可能なのだと改めて畏敬の念を抱かざるを得なかった。
「そんな馬鹿げた能力を僕が?」
「そうじゃよ。それで事の全ては始まった」
「はあ――」
そんなものに手を出してしまうとは、僕はよほど何かに焦っていたに違いない。
多分それは、今では思い出しそうにもなかった……。
「何故、お前がこの力を手にいれ、何をしたかったのか、
答えを言うのは簡単だが……そろそろ登校の時間じゃな」
「うわっ、本当だ」
僕は慌てて二階へ上がって支度を済ませる。
リビングには既に制服を着た二人の姿が待っていた。
「え? 鈴音さんはわかるけど、ナミ……も通うのか」
「……うん」
さん付けしようとしたら昨日はいらないと言われた。
「さ、行きましょ。タクヤ」
鈴音さんがまた腕に絡む。外見がハーフで、愛嬌のある仕草で振る舞われると、どうしてもにやけてしまう。
「タクヤ、これを持っていけ」
亜夕花が手渡したのは一眼のカラーコンタクトだった。
「なにこれ」
「通信機兼、聴覚乃至視覚拡張器兼、データ通信――」
「ああ、もういい」
僕はそのレンズを右目に着装した。
「どうだ? 痛いとか大きいとかないか」
「ないよ。それよりなんでこんなものつける必要があるんだよ」
「登校しながら説明してやる。それより早く出た方がいいぞい」
「行ってくる!」
気を付けてなと言い終わらないうちに、タクヤの姿は玄関口へと消えた。
「何もなければいいが……」