Neetel Inside ニートノベル
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MTG戦記
第四章:特訓

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――――カランコロン

「いらっしゃいませ!おお、これはこれは坊ちゃん!よくぞいらっしゃいました」

「5名だ、案内してくれ」

「かしこまりました」

 俺達は唖然としたまま席まで案内された。

(なんで外装は洋風なのに中は純和風なんだ・・・)

 奢る、という言葉に俺達はまんまと釣られた。流石に悪い、とは思ったものの、所詮は貧乏学生に
過ぎない俺達に、それを断る意志の強さは無かった。

「気にせず、好きなものを頼んでくれ」

「・・・マジっすか?」

「マジだ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

そんな擬音が聴こえた気がする。

「じゃあ、俺はこの和牛ステーキ膳を」

「俺はこの、キャビア丼ってやつを」

 みんな遠慮なく高そうなものを頼み始める。しかし、どうでもいいがこの店のラインナップは一体
なんなのだろうか?

「さて、早速だが君達に頼みがある」

「・・・まあ、話の流れから考えれば解りますけどね」

「ならば話は早い、君達にはGLP主催のトーナメント、「レボリューションカップ」に私と共に出場
してもらいたい」

「まあ、俺自身は出場するのは構わないんですけど・・・」

そう言って荒木は他3名の顔を窺う。

「俺も構わないな。こんな高い料理を奢ってもらう上に、大会の参加費も免除されるのだしな」

ちなみに俺が頼んだ料理は「松茸尽くし」と書かれた異様に高い料理だ。どんなものが現れるか、
楽しみで仕方がない。

「俺はまだ快諾できないな」

「中島・・・!?」

他3名がのろうとしてる中、中島が一人、空気を読まない。

「中島君、だったかな?理由はなんだい?」

「快諾できない、と言っただけで、断るとは言ってない。俺にとって重要なのは、これから来る料理が
美味いかどうか、それだけのこと」

「中島・・・」

「ククク、そうか、ならば料理を食べてから結論を聞くとしよう・・・」


――――15分後


「もちろん参加だ!」

料理を一口、口にするや否や、中島は参加を表明していた。

「ハッハッハッ!どうやら気に入ってもらえたようだね?それは良かった良かった!」

俺は贅沢にまるごと松茸の入った吸い物をすする。

「しかし、俺達でいいんですか?プロ時代の知り合いや、他にもっと強い人達を呼ぶことも出来る
のでは?」

「もっともな疑問だな。答えよう。まず、プロ時代の知り合い、確かに知り合いは今でも数名存在
するし、その中には親しい間柄も少なくはない。だが、彼等は今でもプロなのだよ」

「あ、なるほど・・・」

荒木は手塚が何を言いたいか気づいたようだ。

「荒木君は「レボリューションカップ」の詳細について知っているのかな?」

「え、ええ、大まかにはですが・・・」

「わからない者もいるようだし説明しよう。まず「レボリューションカップ」の特徴だが、これは
プロ、アマ問わずに参加可能な大会だ。参加には全国各地で行われてるGLP公認の大会で結果を出し、
推薦状を貰う必要があるのだが、プロはこの限りではない、何故ならばプロはこの大会のガーディアン
としての側面があるからだ」

 手塚の話では、多くのプロは大会の構成員となり、大会の指揮や、出場選手をふるいにかける役割
があるという。もちろん、チームとして参加している者もいるが、それらも運営の指示のもと選り
すぐりのエリートで構成されているらしい。

「彼等はその指示のもとに動く、大会への個人的な参加は許されていないのだ。私のように移行を
拒否した変わり者でもなければ、自由な参加は出来ないのだよ」

それはそうだろうな、と思った。余程の理由がない限り、わざわざライセンスを放棄するような真似
、普通はしないだろう。

「もともと「手塚コーポレーション」は、父が1代で築いた企業だ。0から始め、今の地位を築いた
父にとって、今のこの状況は当時に比べれば大分マシだと言える。会社の事は父に任せておけば問題
ないだろう。だが、私は今のプロの在り方に不満があるのだよ」

それは、今のGLPの利益主義を指して言っているのだろう。どんなジャンルであっても、そのものが
好きなわけではなく、ただ金が稼げるから、といった理由で勤め、あるいは選手であろうとする者
はいる。そういった事は仕方ない事だと思うし、考え方の違いである以上文句は言えない。しかし、
どんなモノでも、度が過ぎればそれは人々の目に醜く映ってしまう。現状の、稼げるからプロになる
、稼ぐために駒となるという傾向は、昔にくらべて世間の評価を辛いものとしていた。

「私は、この嘆かわしい状況を、1プレイヤーとして変えたいと思っている」

「・・・それで、俺達のような、好きでマジックをやっているアマチュアの手を借りようと思ったん
ですね」

「そうだ、君達には失礼な事かもしれないがね。ただ、君達だって現状の業界に不満があるのだろう?
どうか、古き良き時代を取り戻すため、私と一緒に戦ってくれないか?この通りだ」

そういって手塚は頭を下げた。

「や、やめてください!そんな、頭まで下げてもらわなくても俺達は!」

「ああ、そうだぜ手塚さん。むしろこっちから一緒に戦わせてくれと言いたいくらいだ」

山田の発言に皆で頷く。

「・・・ありがとう」

そう言っていい笑顔を見せる手塚。しかし次の瞬間その顔は真剣なものへと変わっていた。

「では、これから大会に向けて、時間の許す限り、私の屋敷で特訓をしてもらう事とする!デッキの
完成度、知識を今よりも格段に上げてもらう!妥協は許さないからな!」

――――かくして、俺達の特訓は始まった。

       

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