Neetel Inside 文芸新都
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「うー…ないなぁ…」

ちよちゃんがお庭のすみにしゃがみこんで、何かを探しています。
どうやら四つ葉のクローバーを探しているようで、夢中で葉っぱをかきわけています。

「もー、ぜんぜんないなぁ」

ちよちゃんはあやちゃんの誕生日に、それをプレゼントするつもりでした。
あやちゃんはちよちゃんよりもひとつお姉さんなので、明日で5才にになるのです。

「もー」

ぷりぷりと怒りながら探すちよちゃんを、かみさまは静かに見つめていました。
そんなかみさまを、ちよちゃんは時々ふりかえりながら、必死に四つ葉のクローバーを探しました。

けっきょく、その日クローバーは見つかりませんでした。

次の日、ちよちゃんとお母さんはあやちゃんのおうちにむかう途中、お花を買いました。
本当はどうせなら大きな花束を買いたかったのですが、ちよちゃんのおこづかいでは1本しか買えません。
不満そうにしているちよちゃんに、「きっと喜んでくれるわよ。」とお母さんは言いました。
ちよちゃんは、きっとお母さんが焼いたケーキの方が喜ばれるだろうなと、お母さんが手に持った箱を見ました。

「いらっしゃい!」
おうちに着くと、あやちゃんが元気よくむかえてくれました。
ちよちゃんは小さな声で「おめでとう」と言うと、あやちゃんにお花をプレゼントしました。
「ありがとう!」
喜ぶあやちゃんに、ちよちゃんは本当は四つ葉のクローバーをプレゼントしたかったけれど、どうしても見つから無かった事を話しました。
けれどあやちゃんは「ううん、このおはなのほうがうれしいよ!」と笑いました。

そのあと二人でちよちゃんのお母さんの作ったケーキを食べました。
それはとっても美味しくて、いつの間にかちよちゃんも笑顔になっていました。

そんな二人を、ちよちゃんのかみさまは静かに見つめていました。
あやちゃんのかみさまはどこにも姿が見えませんでしたが、誰も気づきません。
2人はにこにこと、幸せそうにケーキを食べていました。

       

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