「あっ」
その日ちよちゃんはイヤなものをみました。
それは真っ黒なようでカラフルで、だけど透明にもみえる、
かたちの定まらないぐにゃぐにゃとしたもので、
おとなりのたけるくんの肩のあたりにふよふよと浮かんでいました。
「あっ、ちよちゃんおはよー」
たけるくんはちよちゃんに気づくと、にこにこと手を振りました。
「おはよ…たけるくん、それ、どうしたの?」
ちよちゃんはたけるくんの肩のあたりを指差してききました。
「それ?それって?」
どうやらたけるくんにはそれはみえていないようです。
そういえばたけるくんは前から、ちよちゃんのかみさまもみえないようだし、
たけるくん自身にかみさまもついていませんでした。
「…ううん、なんでもない」
「ふぅん…じゃあ、なにしてあそぶ?」
たけるくんが近づくと、何だかとても切なくなるにおいがしたので、
ちよちゃんは、
「ううん、かえる」
と言っておうちに帰りました。
季節が変わる前に、たけるくんは遠くへ行ってしまいました。