「あら、また降ってきた。」
ちよちゃんのお母さんが言いました。
「もー、だからこの季節はイヤね。洗濯物が全然乾かないわ。」
ここ何日か雨が続いたので、お母さんはちょっと不機嫌です。
「ちよー、洗濯物取り込むの手伝って。」
「えー」
「えーじゃないの。ほら。」
「はぁい」
ちよちゃんとお母さんは、洗濯物をおうちの中に入れました。
「まったく。明日は晴れてくれないかしら。」
ちよちゃんもそう願いました。
そして翌日。
その日も朝からしとしとと雨が降っていました。
「あら、また雨?やんなっちゃうわねぇ。」
お母さんはまたちょっと不機嫌そうです。
ちよちゃんはかみさまの方をちらっと見ました。
かみさまは何となくいつもより小さくなって、
おかしな歌もうたっていませんでした。
ちよちゃんは窓の外を見ました。
同い年くらいの女の子が、新しそうな赤い傘を、
楽しそうにくるくる回しながら前の道を歩いて行きます。
その子の後ろには、ちよちゃんのかみさまより、
少し大きなかみさまがふわふわと浮かんでいました。
ちよちゃんは誰にとでも無く、「ありがとね」と呟きました。
「Учитель!」
ちよちゃんがお部屋で遊んでいると、突然大きな声が聞こえました。
びっくりして顔をあげると、目の前におかしなものが立っていました。
それは大きな頭に大きな目と口、そしてその大きな頭からは細い腕が数本生えています。
首から下はいきなり足が生えていて、かみさまみたいにちょっと浮かんでいました。
「Учитель!」
それはまた大きな声で叫びました。
けれどちよちゃんはそれがちっともこわくなくて、むしろ何だか穏やかな気分になるのでした。
「なぁに?」
ちよちゃんはそれにたずねました。
しかしどうやらそれが用があるのはちよちゃんでは無いようです。
それはちよちゃんの後ろに浮かんでいるかみさまにむかって叫んでいるようです。
「Учитель!」
それがまた叫びました。
かみさまはまったくそれを気にせず歌をうたっています。
「Учитель!」
それはさっきよりかみさまに近づくと、さらに大きな声で叫びました。
するとかみさまは歌うのをやめ、すうっと左手をあげました。
その手をみると、それはびっくりしたような顔をしました。
そしてぺこりと頭を下げると、じわりと消えてしまいました。
ちよちゃんは少し寂しい気分になったので、お母さんを探しに部屋を出ました。
かみさまはまた歌い出しました。