Neetel Inside 文芸新都
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 火炎系最上等級呪文、メラガイアー。烈風と共に紅蓮の熱球がほとばしった。メラガイアーが二つのメラゾーマと交わる。その瞬間、メラゾーマが二つ同時に消し飛んだ。メラガイアーに飲み込まれたのだ。グラファが驚愕の表情を浮かべる。そして、メラガイアーがグラファを飲み込んだ。衝撃波が巻き起こると同時に、火球が火柱となる。火柱が天を貫く。
「な、なんじゃとぉ……!」
 グラファが両膝を地についた。全身を焼かれている。しかし、グラファは自分が負ったダメージよりも、メイジの放った呪文に恐怖していた。
「メ、メラガイアー!? なんじゃ、その呪文は……!」
 上等級呪文を超える最上等級呪文。それは、メイジが今この場で編み出した呪文だった。つまり、新呪文だ。当然、グラファは見た事も聞いた事もない。そして、その威力。メラガイアーは、二つのメラゾーマをいとも簡単に消し飛ばした。そして、グラファの身体を焼き尽くした。
 グラファは一瞬にしてプライドを砕かれてしまっていた。自身の双魔法が、敗れたのである。
 歴代最強の魔法使い、魔人レオン。しかし、もはや魔人レオンは過去の人間だった。世代交代。今の歴代最強の魔法使いは。
「き、貴様か。若僧……!」
 グラファが立ち上がる。身体が震えていた。
「……俺は、先に進まなくてはならない」
 メイジが魔力を溜める。その魔力を神器に移していく。
「や、やめろ。来るな」
 グラファが後退りし始めた。恐怖で顔を歪ませている。グラファが手当たり次第に呪文を連打で撃ち込み始めた。追い込まれているのだ。メイジがそれを冷静に相殺・避ける。次の瞬間。
「イオグランデッ」
 メイジの爆発系最上等級呪文。大爆発。グラファの目の前で巻き起こる。あえて、グラファには放たなかった。警告。もう無駄な抵抗はやめろ。メイジはイオグランデでそれを示したのだ。
「バ、バカにしおって……!」
「もうやるだけ無駄だ。道を開けろ」
「やるだけ無駄じゃとぉ? 生意気な口を!!」
 グラファが両手を突き出す。次の瞬間、グラファの両手が跳ね上げられた。メイジのイオだった。
「う、うぬぅぅぅ!」
「お前に勝ち目はない。そこをどけ。俺に老人をいたぶる趣味はない」
「貴様ぁッ」
 右手。中等級呪文が嵐のように舞った。だが、メイジはそれを全て相殺してみせた。
「あくまでやるのか」
「ワシは魔族じゃぞ。人間如きに、クズ如きに、屈する訳が無いじゃろう! ぶっ殺してくれるわ!」
 グラファが叫ぶ。声が裏返っていた。
 メイジが目を瞑った。これ以上、言っても無駄だろう。そう思った。ならば。
 メイジが神器に魔力を移す。メラゾーマの魔力と、マヒャドの魔力。
「お前の意を汲んでやる。これから放つ呪文は、全てを滅する呪文だ。これで、お前は終わる」
 極大消滅呪文。メイジの神器が光り輝く。
「クズが、クズが……! ワシの双魔法は最強なんじゃ! クズ如きに屈するはずがないんじゃぁっ」
 両手。双魔法。グラファが二つのメラゾーマを撃ち放つ。
「あの世で喚いていろ」
 メイジが神器を突き出した。魔力を解放する。そして、目を開いた。
「メドローアッ」
 極大消滅呪文。紅と蒼が混じり合った巨大な球体が、二つのメラゾーマを、グラファを、城壁を飲み込んだ。無。飲み込まれた全てのモノは、無と化していた。
 終わった。風が、メイジの髪をなびかせる。
「……先に進む」
 メイジの足取りは、どこか虚しかった。

       

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