Neetel Inside 文芸新都
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「良いか、今のお主は手の魔力しか使いこなせておらん」
 リーガルが一歩、前に出る。
「魔力というものは、身体全体に存在するのじゃ。もちろん、魔力が全く無い者もおる。魔力は生まれた時点で、その絶対量が決まっておるのじゃ。そしてメイジ、お主の魔力はワシから見ても凄まじい」
 リーガルがさらに一歩、前に出た。
「ワシが今から実演しよう。今のお主の魔力の使い方、すなわち手の魔力のみ使った呪文と、全身の魔力を使った呪文をそれぞれ撃つ。その威力を見ておれ」
 リーガルが右手を突き出す。
「メラミッ」
 火球。壁面へと突っ込み、そして消え去った。魔方陣が輝きだす。色は水色だ。
「続いて、全身じゃ」
 リーガルが右手を突き出した。しかし、先ほどとは何かが違う。殺気か、闘気か。メイジが思わず、リーガルを見る。
「メラミッ」
 火球。しかし、先ほどのメラミとは訳が違う。火球の周囲を電撃のような物が覆っている。そして何より、速い。
「この時点で違いが分かったじゃろう」
 壁面に触れる。魔方陣が出した色は赤。
「……なるほど」
 リーガルがじっとメイジを見つめる。驚いていない。並の魔法使いならば、あのメラミを見ただけで腰を抜かす。メラミの域を超えているのだ。しかし、メイジは驚くどころか納得しているように見えた。
「どうじゃ、全身の魔力を使いこなすだけで、これ程の威力の違いが出る」
 あえて表情を出さず、リーガルは言った。
「教えてください。今の俺じゃ、あの二人の足手まといだ」
 リーガルが頷く。メイジの拳は、硬く握られていた。
 そして、メイジの本格的な修行が始まった。使いこなす魔力を手から腕、腕から半身と段階的に増やしていく。それが増えていく度、メイジの呪文の威力は桁違いの上昇を見せた。何より、習得速度が凄まじかった。まるで忘れていた事を思い出すかのように、次々と身体の魔力を使いこなしていく。そしてついに。
「撃ってみるが良い」
 メイジが頷き、右手を突き出した。集中する。全身から闘気が溢れ出し、魔力の渦が部屋中で荒れ狂う。ビリビリと肌を突き刺す感覚が、リーガルにかすかな恐怖を感じさせた。
「メラミッ」
 火球、と表現するには生易しすぎる程のそれは、強烈な螺旋を描いて壁の魔方陣に突っ込んだ。そして、魔方陣が輝きだす。果たして、魔方陣の出した色とは?

       

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