Neetel Inside 文芸新都
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 キラーマシンの攻撃は強烈だった。守りに入ってはダメだ。攻撃に転じなければ。オリアーはそう思った。
「行きます!」
 エクスカリバー。振り上げる。
「モーションが大きい。軌道予測が容易だ」
 キラーマシーン。身体を開く。大きな風切り音と共に、エクスカリバーが空ぶった。隙。
「疾風突き」
 風が鳴く。
「ぐぅっ!?」
 オリアーの身体が吹き飛んだ。空中。何とか受け身を取る。ズザザ、という地面を擦る音と共に、着地した。矢。首をひねってかわす。
 右胸がズキズキと痛む。疾風突きのダメージだ。ピンポイントで身体の芯まで貫かれているようだ。さらに矢が飛んでくる。剣で弾き飛ばした。
「相手は遠距離攻撃も可能……!」
 分が悪い。一人になって改めて実感するが、仲間の存在は偉大だ。オリアーはそう思った。自分は近距離戦しか展開できないのだ。故に、距離が開けば開くほどに不利となる。それを補っていたのがメイジであり、ヒウロだった。
 キラーマシーンが次々に矢を撃ち込んでくる。それをあるいは避け、あるいは弾き飛ばす。そうやって、少しずつ距離を詰めて行く。キラーマシーンが左手を引いた。右手のサーベルでの攻撃に切り替えたのだ。だが、まだ剣の距離ではない。何か嫌な予感がする。オリアーがそう考えた瞬間だった。
「真空斬り」
 見えない刃。乱舞する。ファネルの技だ。しかし、射程距離が違う。ファネルの真空斬りは近距離だった。しかし、これは中距離。
 オリアーが微かな闘気を感じ取り、風の刃を避ける。鎧が削られた。だが、ひるまない。隙が出来た。オリアーが駆ける。だが。
「疾風突き」
 貫く。オリアーの身体が吹き飛んだ。せっかく詰めた距離が、また開いてしまった。近づけない。近づかなければ、話にならない。オリアーは近距離戦しか展開できないのだ。
「どうすれば!」
 歯を食いしばる。未だかつて、こんな経験をした事がない。近づく方法をどうにかして考えなければ。
 一度、状況を整理する。遠距離では矢を撃ち込んでくる。この時点では、まだキラーマシーンは剣を使っていない。所が、中距離になった途端に剣に切り替えた。中距離なら、まだ矢が有効なのにも関わらずだ。ここに何かしらのヒントがあるのではないか? オリアーはそう考えた。
「そ、そうか……!」
 オリアーが身体を起こす。
 この試練はオリアーの真の力を見極めようとしているのだ。戦士は近距離でしか戦いを展開できない。だが、果たしてそれは本当なのか? キラーマシーンは中距離での戦いをやってみせたのだ。つまり、展開できるのは近距離だけではない。その先の中距離でも戦いができるのではないか? オリアーはそう考えた。
「この試練、単に神器を手に入れるだけが目的ではない。そういう事ですか」
 剣を構える。エクスカリバー、力を貸して下さい。心でそう言った。
 矢。かわす。距離を詰めていく。キラーマシーンが左手を引いた。右手のサーベルが前に出る。中距離。
「キラーマシーンに出来るのなら」
 自分にだって出来る。オリアーはそう信じた。例え、シリウスの剣術がインプットされていようとも、元は同じ人間なのだ。自身を信じる。オリアーの身体から闘気があふれ出した。
「僕の推測が正しければッ」
 エクスカリバーに闘気を乗せる。呪文を剣に宿すように、闘気をエクスカリバーに宿していく。キラーマシーンがサーベルを振るった。見えない刃。真空斬りだ。オリアーに向かってほとばしる。オリアーがエクスカリバーを構えた。
「真空斬りッ」
 横に薙ぐ。闘気の刃を飛ばしたのだ。瞬間、中央で何かが弾けた。
「……さすがは選ばれし者だ」
 キラーマシンとオリアーの真空斬りは互いにぶつかり合い、相殺されていた。

       

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