Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

 中距離戦。闘気を乗せた真空斬りが、オリアーとキラーマシンの正中線上で弾けていた。
 神器を入手するための試練。オリアーは、この試練で新たなる力を得る必要があった。その一つとして開花させたのが、この真空斬りだ。
「ですが、このままではジリ貧……!」
 オリアーが呟く。
 オリアーの真空斬りは、キラーマシンのそれと同等の力を持っていた。同等。すなわち、真空斬りがぶつかり合った瞬間に力が相殺となる。言い換えれば、中距離戦での技量は全くの互角という事だ。しかし、互角なのはあくまで技量のみだ。生身の肉体であるオリアーと、機械であるキラーマシンでは、戦闘可能時間が全く違うのである。相手は機械だ。半永久的に戦い続ける事が出来るのだ。
 もちろん、オリアーもそれは分かっていた。だからこそ、何度か工夫をこなした。真空斬りの軌道を変えたり、相手の真空斬りを避け、その後に撃ち込んだりと、色々な手を試した。だが、どれも通用しなかった。中距離という特性に悩まされるのだ。近距離ではゼロコンマいくつの世界の戦いだ。相手の動きを予測・判断し、自身も攻撃を繰り出さなければならない。つまり、一つの行動可能時間が圧倒的に限られているのだ。所が、中距離はそうではない。距離が離れている分だけ、行動可能時間は増える。その増えた行動可能時間で、オリアーの真空斬りはいなされていた。
「でも、近距離戦では勝ち目がありません。この中距離でどうにかしなければ」
 近距離戦では、キラーマシンの疾風突きがある。これに相当する技をオリアーはまだ持っていないのだ。逆に疾風突きを会得する、という考え方もあるが、技の性質がオリアー向きでは無かった。オリアーは速く細かい攻撃よりも、重い一撃必殺の攻撃の方が得意なのだ。疾風突きはどちらかと言えば、ヒウロやセシル向きの技なのである。
 どうすれば良いのか。単純に考えれば、真空斬りを超える技を会得すれば良い。しかし、どうやって。
 メイジなら、このような状況でも何らかの手を思いつくのかもしれない。オリアーはそう思った。だが、それを思った所で状況は変わらない。考えた。技量は互角だ。ならば、技自体のレベルを上げるしかない。
「真空斬りはおそらく答えとは違うのでは……。そう、あくまでヒントだとすれば」
 オリアーが考える。真空斬り。要領としては、エクスカリバーを握り込む。闘気を乗せる。それを放つ。この三動作だ。ならば、単純に闘気を多く乗せればどうなるのか。つまり、溜めるのである。やる価値はある。そう思った。
 瞬間、キラーマシンが真空斬りを放った。見えない刃が乱舞する。オリアーが集中した。剣を握り込む。闘気を乗せる。放つタイミング。こらえた。さらに闘気を乗せる。
「ッ! わかりました!」
 閃いた。闘気。エクスカリバーが蒼く輝いている。放てる。だが、普通に振るのではない。グッと拳を内側に巻き込んだ。
「空裂斬ッ!」
 地から天へ向けて、剣を振り上げる。瞬間、旋風が巻き起こった。鋭利な音。耳を貫く。キラーマシンの真空斬りが消し飛ぶ。旋風が駆け抜けていく。
「今だッ」
 旋風がキラーマシーンを吹き飛ばすと同時に、オリアーが一気に駆けた。近距離戦に持ち込むのだ。
 近距離戦はキラーマシンの方に分があった。疾風突きだ。これをどうにかしなければ、勝ち目はない。疾風突きは確かに強力だ。だが、繰り出す前に僅かな溜めが要る。その溜めの後に見えない一撃が飛んでくる。ならば、その溜めの時に攻撃を撃ち込めばどうなる?
 空裂斬。この技でオリアーは次の技も閃いていた。キラーマシン。いや、シリウスのような強者との近距離戦を渡り合うに相応しい技。オリアーが剣を構える。キラーマシーンが態勢を整える。瞬間、両者が交わった。

       

表紙
Tweet

Neetsha