Neetel Inside 文芸新都
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 オリアー、キラーマシン。エクスカリバーとサーベルがぶつかり合う。火花を散らす。剣を振る。細かく丁寧に、だが力強く。大振りでは簡単に避けられるのだ。いかに隙を突こうとも、キラーマシンは、いや、シリウスは避ける。
「動きが良くなった。見違えている」
 キラーマシンは四本の足を器用に動かしながら、回避と攻撃の動作を効率よく行っていた。だが、オリアーも負けてはいない。
 オリアーは中距離戦を制した。真空斬りを超える技、空裂斬を編み出したのだ。次に制するは近距離戦。そして、それを制する鍵となる技をオリアーはすでに閃いている。
「しかし、まだ甘い」
 キラーマシンのサーベル。エクスカリバーを弾き飛ばした。右手を引く。溜めだ。疾風突きが飛んでくる。見えない一撃。威力も強烈だ。だが、この溜めに合わせる。いや、合わせる事のできる技がある。オリアーの目は死んでいない。諦めていない。
 キラーマシンが警戒した。オリアーの目が死んでいないのだ。オリアーが弾かれた剣に闘気を込める。握る。空裂斬と同じ要領。
「海破斬ッ!」
 剣が流れた。横一直線。闘気が津波の如く、キラーマシンを撃ち付ける。溜めが崩れた。疾風突きを放てない。キラーマシンがサーベルを持つ右手を持ち上げようとした。だが、上がらない。海破斬の闘気がキラーマシンの機体を縛りつけているのだ。
「シリウスさんッ」
 エクスカリバー。振り切る。クロスボウの左手を斬り飛ばした。ジジジ、バチバチといった電気音が耳を突く。
「僕はあなたの力を受け継ぎます!」
 剣を大上段に構える。日光が、太陽の光が、エクスカリバーの刀身を照り返す。闘気が宿った。空裂斬・海破斬に続く闘気を宿した剣技。
「大地斬ッ」
 振り下ろす。
「……選ばれし……者……見ご」
 真っ二つ。両断。キラーマシンの身体が左右に分かれた。
「シリウスさん、あなたは僕の知らない力を目覚めさせてくれました。この力、きっと役立ててみせます」
 言い終わると同時に、キラーマシンの残骸が地に転がり、間も無くして爆発した。
「……ありがとうございました」
 オリアーがエクスカリバーを鞘におさめた。
「見事だ」
 声。天からだ。
「選ばれし者よ。汝こそ、神器を扱うにふさしい者と判断する」
 部屋の中央。吹き抜けとなっている天井から、眩いばかりの日光が降り注いだ。
「汝に神器、神剣・フェニックスソードを授ける」
 光。白い光だ。オリアーが目を細める。天井から、一本の剣と鞘がゆっくりと降りてくる。不死鳥を模した黄金の束。神々しさを纏わせる白銀の刀身。
「これが、神器」
 オリアーがゆっくりと手を伸ばす。柄を握った。瞬間、とてつもない力が全身を駆け巡る。
「神剣・フェニックスソード」
 振るった。煌めく。光か、闘気か、力か。軌跡を形作る。一度振るっただけで、凄まじい力を持っているのが分かる。
「選ばれし者よ。この先、幾多の困難が汝を待ち受けていよう。だが、決して諦めるな。汝の力は味方の盾となり、剣となる。それを忘れてはならない。そして、我も汝と共に歩む。かつての剣聖シリウスと同じように。行け、選ばれし者よ。世界を救うのだ」
 オリアーが頷く。そして、神剣を腰に携える。
「ルミナスへ戻ります」
 合流地点。神器を手に入れた。ルミナスへ帰るのだ。
「……セシルさん」
 オリアーの嫌な予感は、まだ消えていなかった。

       

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