Neetel Inside 文芸新都
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「ぬぅッ」
 ギガデイン。稲妻が乱舞する。縦横無尽に稲妻が辺りを駆け巡り、ダールのローブを紙のように貫いていく。ダールの身体を貫いていく。
「お、おのれ……!」
 ダールが片膝をついた。稲妻。身体の芯まで貫かれている。稲妻の熱にやられたのか、全身からは煙があがっていた。
「ギガデイン……。これほどとは。なるほど、時間を掛けると良い結果にはなりそうにありませんね……」
 ダールが立ち上がった。ローブを脱ぎ捨てる。首を左右に倒し、音を鳴らした。そして構える。
「本気を出してやるぞッ」
 風が鳴いた。ダールの身体。速い。アレンが剣を構える。交わった。拳と剣。鍔迫り合いだ。
「なるほど、力が増している……!」
「当たり前だ、本気を出してやってるんだからなッ」
 ダールが剣を押し込んだ。アレンの身体がよろける。
「ちッ」
「一瞬で終わらせてやるッ」
 邪気。いや、闇の闘気か。全身から噴き出す。まるで陽炎のようにダールの身体が揺らめいている。その闘気が拳へと集約された。
「閃光烈火拳ッ!」
 瞬間、ダールの両腕が消えた。アレンにはそう見えた。刹那、四、いや、五連撃。拳がアレンの腹から胸にかけて叩き込まれる。
「八連撃だ。衝撃として感覚があったのは四か五連撃かもしれんがな」
 アレンの目が霞んだ。棒立ちだ。さらに。
「正拳突きッ」
 アレンの腹を貫く。くの字に身体が曲がった。声すら出ない。
「飛び膝蹴りッ」
 さらにダールが、前に出ているアレンの顎を蹴りあげた。吐血。鮮血が天を赤く染め上げる。
「終わりだ」
 間髪入れずにダールがアレンの頭を掴み取った。右手。漆黒に包まれる。バチバチと音を立て、禍々しい闇の気がアレンの身体を包み込んだ。
「うぐぁぁぁ!?」
 アレンの叫び。闇の気がアレンの身体を貫いた。白目を剥き、全身がガクガクと痙攣している。
「生まれ変われ。魔族としてその生を受けろ!」
 瞬間、アレンの身体の中心から白い光が溢れ出した。聖なる光だ。それがダールの闇の気をかき消して行く。
「さすがは勇者アレクの子孫だ……。だが、そんなものでっ」
 闇の気を増幅させる。
「あぐっ。ぐぁぁ!」
 アレンが叫ぶ。バチバチと激しく音が鳴り響く。次の瞬間、全ての闇の気がアレンの身体を貫くと同時に、黒い気が一気に解放された。
「……どうだ? お前は何者だ?」
 ダールがアレンに問いかける。もう右手は頭から離れていた。
「……我は闇の勇者アレン。誇り高き魔王の血族」
 アレンの身体からは、すでに聖なる光は消えていた。

       

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