Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

『第11話、作戦』




智和は死んでいた。白いボートの中で…
体と首が完全に分かれている、小学生でも解る…これは死んでいると…
ボートの中には水が入っており、そこに沢山の赤く染まった高豪花が散らばっている。

「また、高豪花ですか…」
「これを見ろ悠木君」

篠原が悠木にある紙を渡した。

「それは死体の側に落ちていた物だ…」

紙にはこう書いてある…

『我、欲望を狩る者なり。遺産に目が眩みし者達よ…汝らのその首、死神に捧げたまへ』


それは…死神からの挑戦状…


「二人目の犠牲者が出てしまったのか…」

先生が死体の処理をし始めた。智和さんの死体に大きな布を掛け、両手を合わせて祈る…

「信夫さんの時もそうでしたけど…貴方達は一体誰なんですか?」
「そーよ!さっきから死体をずっと調べているようだけど…」

部員達は顔を見合わせた。
お互い目で会話し理解したらしく、全員はうなずいた。

「我々は本当は歴史研究部なんかじゃありません…」
「私達は殺人事件研究クラブです」
「殺人事件研究クラブ?」
「実は佳奈さんから遺産問題ついて依頼がありまして、そのためにこの村に来ました…警察には顔が利きますので、警察が到着するまでは我々の指示に従ってください」

そう、部長の篠原は現警視総監の息子さんなのだ。親から特別に捜査が出来る権限を持っているらしい…

「死んでから恐らく、一時間~二時間はたってるな」
「智和さんをここに呼んで、殺したって事?」
「そーかもしれない…わざわざ、こんな所に呼んで殺して、ボートに乗っけて流しているしね…」
「ご丁寧に高豪花まで添えるからね…。とりあえず、みなさんのいた場所を聞かせて下さい」

悠木はまず君川さんとタカコさんに聞いた。

「僕はタカコさんと一緒に死神祭りの準備していたよ」
「今日は死神役は早貴さんなのにですか?」
「こっちにも色々準備あるんですよ…」

次は早貴さん。

「私は死神役なので村を回っていました」
「一人でですか?」
「ええ…」

佳奈さんにも聞こうと思ったが、よく見ると佳奈さんと…いや、千代さんも姿が見えない…

「先生。そーいえば、佳奈さんと千代さんは?」
「あの二人は今も屋敷にいるよ。智和さんが見当たらなくなった時からずっと一緒だった」

まず、悠木はここである疑問が出現…
まただ、また早貴さんだけアリバイが無い。信夫さん時もそうだった…

「う~ん」
「南条くん今何考えてるの?」

悠木は皆にある提案を持ちかける…それはもう誰も死なないために、悠木ができる精一杯の死神に対するあがき。

「今日、皆一緒の部屋で寝ませんか?」
「え?」

その場にいた全員が驚いた…

「な、なんで私が南条くんと一緒に!!」

セナは顔を真っ赤にして、慌て始めた。

「いや、別に天川さんと寝る訳じゃないよ。死神はこの中にいる…だから、もう死神の思い通りには絶対にさせない!」

この作戦はもっと早めに決行すべきだった。
悠木は今更ながら後悔している、信夫さんの時は余りにも手掛かりが少なすぎて作戦を実行する事は出来なかった。だが、そんな自分のせいで智和さんまで殺されてしまった…もう、悠長な事は言ってられない…

「私も、南条くんの意見に賛成です。わたしはもう周りの人間が死ぬのを見たくない…」

君川さんが悠木の案に賛同した。

「まぁ、仕方ないわね…」
「わかったよ」

早貴さん、タカコさん共に賛成。

「ありがとうございます。それでは屋敷に戻りましょう」

全員が屋敷に向かって歩く。
悠木は思った。
乗ってきた…死神が自分の作戦に乗ってきたぞ…という事は、死神も何か手があるってことだ…絶対に油断できない!これは俺と死神の心理戦だ…

「悠木君もしかして犯人がわかったんだね?だから、あんな提案を…」
「ほんとか!南条」
「智和さん殺しでかなり見当がついてきましたよ。疑問の思ったのは死にかたです」
「死にかた?」

そう、信夫さんの時は首が完全になくなっていた(8話)が、智和さんの時は首が無くなっておらず(10話の最後らへん)首と胴体が離れていただけ…

「考えられるのは、首を処理する事が出来なかったってことですよ。信夫さんの時は死神に見立てるために、わざわざ処理したが智和さん時は出来なかった…そう考えるのが妥当です」
「…なるほど。その日はどーしても処理できなかった理由があるってことだな」
「だけど、今回の殺しではかなりの量の高豪花が使われていましたよね?あれがどーも引っ掛かる…」
「私も高豪花の事はずっと考えているんだがね…」

今回の事件で言える事は犯人はかなりの計画を練っている事だ…
二人も殺しておいて強力な手掛かりが少ない、これが計画殺人って奴なのか?…

「あれ?そーえば、天川さんは?」
「そーいえば…」

さっきから姿が見えない…まさか、死神に…

「天川ならずっと、あそこにいるぞ」

先生が湖の方を指さす。悠木はセナの所に走った。

「何、やってるんですか?」
「…」

セナはまだ顔を真っ赤にしている。どうやら恥ずかしくて悠木を直視出来ないらしい…

「あの…何か勘違いしていませんか?俺は『みんなで』寝ると言った訳で…一言も『天川さんと』寝るとは言ってませんけど…」
「そ、そんな事…わ、解ってるわよ…」
「俺…興味ありませんから」

無論、悠木は悪気あって『興味がない』といった訳ではない…
悠木自身はそういった『寝るという行為』に興味がないだけであって、けして絶対に『天川セナ』という一人の女性対して興味がない訳じゃない。
だが、人という生き物はどーして解り合えないのだろうか?すれ違いに、すれ違いを重ねて人はようやく解り合えるようになれるのかもしれない…それが何十年にもなろうとも。

「きょ、興味無い…南条くんは私に興味無い…興味無い…南条くんは私に興味無い…」

セナはうつむきだした。
だんだん声が小さくなっていき、ブツブツと呪文の様に繰り返し始める。

「そーだよ!やっと、わかってくれたのか。俺は興味がないんだよ!」

あぁ、勘違いとは怖い物だ…

「篠原…青いな…」
「はい、先生!本当に青いですよ」

ここまでの疑問
・返り血
・血が付着していない円状の跡
・なくなった首
・落ちていた花びら
・カーテンのついていない窓
・犯行が起こった日
・アリバイ

首切り村編もそろそろクライマックス。
対死神用の作戦を決行した悠木は次回、死神祭り三日目に突入する…

       

表紙
Tweet

Neetsha