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『第9話、高豪花と懐かしい記憶』



死神祭りの1日目の夜に唐坂家の長男である信夫さんが何者かによって首を切られて殺された。それは昔この村に起こった『大富豪が殺された事件』に見立てた計画殺人。だが、現場には殆ど証拠いった物はなく捜査は困難を予想された…

「……」

部員全員大広間に集まり、今回の事件のについて話始める。

「殺された時にアリバイが無かったのは次男の早貴さんだけ、しかも犯行の起こった部屋の真上の部屋にいた1人でいたらしい」
「でも、夜食を作っていて途中から1人になった千代さんも犯行は可能よ」
「彼女の今の状態から察するにそれはありえないだろ…」

確かに第1発見者である千代さんも信夫さんと一緒に屋敷にいたので犯行は十分可能だが…彼女が電話を掛けてきた時、明らかに動揺しているのは声で解る。
あの声や態度が演技とは思えない…

「……」
「南条くん。さっきから黙り込んでどーしたの?」
「何か気になる事でもあるのか?」
「いや…なんでもない…」

悠木は前回から死体の側に落ちていた高豪花の花びらが気になってしょうがない。
何のために死体の側に落ちていたのか…いや、もしかしたら信夫さんが俺達に残したDM(ダイイングメッセージ)なのかも…

「何かとんだ入部歓迎会になっちゃね」
「ほんとだよ」

結局、死神祭り1日目は終了し容疑者達から良い話を聞く事が出来ないまま、2日目に突入する。

[死神祭り2日目の朝]

朝から重苦しい空気が大広間では流れている。
だが、そこには使用人の千代さんの姿はない、おそらく今でも寝ているのだろう…信夫さんの首が無くなった姿を見たのは千代さんだけ、よっぽど怖かったに違いない…

「みなさん、おはようございます…」
「佳奈さん、おはよう。ご気分はどーですか?」
「…ええ…大分良くなりました…」

佳奈さんも強がっているようだが、顔色はとても良いとは言えない状態。

「早貴。お前なんじゃないのか!!事件の時アリバイが無いのはお前だけなんだろ?」
「ぼ、ぼくは何もやってない!それに、智和伯父さんだって前日に喧嘩していたじゃないか!!!」
「止めて下さい2人とも!」
「そーですよ。君川さんの言うとおりです」

篠原が止めに入る。

「死神祭り…まだ続けるんですか?」
「そーですよ!人が死んでいるんですよ?」
「それは駄目よ!!!死神祭りは中止するなんて絶対に反対」

タカコが怒鳴る様に悠木に反論した。唐坂家として代々続けていた祭りを途中で中止する訳にはいかない。
昔1度だけ中止した事があり、その年はこの村だけに流行病が発生したそうだ。

「あの、佳奈さん…高豪花が咲いている所に連れて行って貰えません?」
「え!?高豪花ですか?」
「南条さん。私が案内して良いですか?佳奈ちゃんあんまり顔色が良くないから…」
「ええ。別にいいですけど」

昼ご飯を食べた後、君川さんと一緒に行く事になった。

「皆はどーする?」
「悠木くんもちろん私も行くよ」
「先生も行くぞ」
「南条くんばかり任せてられないからね!」

仲間とはやはり良い物だと思った。小学校・中学校そして高校と友達と呼べる人が居ないせいか、こういう場面になるとどーして照れてしまう。
何だかこの事件も乗り越えれそうな気がする…

[昼ご飯後]

昼ご飯を食べた後、部員全員と君川は晴れた高豪樹の森の中を歩いていた。

「ここから一体どれ位歩いた所にあるんですか?」
「そーですね……そんなに遠く無いですよ。10分も歩きませんから」
「大体、高豪花って何ですか?」

高豪花とは、この村にしか生えていない特殊な木で高豪樹の周りにしか咲かない花である。外部との接触を極端に嫌う高豪村では、外から来た学者を村の中に入れて貰えず、そのせいで殆ど高豪花の詳細を知る者いない。

「白くてとても綺麗な花なんですよ」
「この近くにある湖に沢山咲いているそうだ」
「これから行く所はそこじゃないんですよ」
「智和さんが湖の近くが沢山咲いていて屋敷からも近いって言ってましたけど…」
「ちょっと遠いけどこれから行く所は良い場所なんですよ」

君川さんはとても楽しそうな顔している。
少し歩くと目的地に到着し、その綺麗さに部員全員は息を飲んだ。

「すごい、とても綺麗…」
「あぁ、こんな綺麗な花は初めて見たよ。この花をこの村だけに止めるなんて…もったいない…」

そこには一面に広がる高豪花。
こんな綺麗な花が今回の事件に一体なんの関係があるんだ…
悠木は信夫さんの血で染まった高豪花を思い出す。

「どーです?本当に綺麗でしょ?この場所は小さい頃良く佳奈ちゃんと来ていたんですよ」
「佳奈さんとは幼馴染なんですか?」
「ええ、よく遊んだもんですよ。近い歳子供が少なかったので…佳奈ちゃん…高豪花が大好きなんですよ。昔は先代の当主もこの花が大好きで良く工房に飾っていたんです」
「そーいえば、大広間にも飾ってありましたよね」
「千代さんも高豪花が好きなんだよ」

心地良い風が吹く…すると、高豪花が風に揺れて花びらが舞いあがる。
何度も言うが…本当に綺麗だ…佳奈さんは達が好きになる気持ちも解る。

「そろそろ、帰りましょう。死神祭りの準備もありますし…」
「そーですね。皆も心配するだろうから」

そう言って、悠木達はこの場所を後にした。この風景を心に焼き付けて…
君川さんはお屋敷に着くと死神祭りの準備のために作業小屋に向かった。悠木達は君川さんに頼まれてタカコさんを呼びに行った。

「タカコさんの部屋って屋敷から少し離れた所にある、離れに住んでるんですね」
「家内別居ってやつだな」

コンコン
篠原はドアをノックする。

「………返事がないな…」
「どーしたんでしょうか?」
「留守じゃないですか?」

その時、悠木の脳裏に嫌な感覚が走った。必死にドアを開けようとしたが、鍵がかかっている様だ。

「ど、どーしたの南条くん?」
「ドアをぶち破る…」

その言葉に全員が驚いた。

「南条、大丈夫か?」
「安心してください先生。いたって正常です…」

部屋の前で大声で騒いでいると鍵を開き、ドアが開いた。

「ちょっと…何なのよ?人がせっかく寝ていたのに…」
「タ…タカコさん!いたんですか…」

悠木は急いで部屋に入る。が、特に争ったり荒らされた形跡もなく、いたって普通の部屋だった。

「な、なんなのよ!!いきなり人の部屋に上がり込んで!!」
「いや、すいません…君川さんが呼んで来いと言っていたので…ほら、悠木君も一緒に謝ってくれ…」

悠木は辺りも見回す。特に変わった所はない…だが、さっきからこの頭痛が治まってくれないのだ…何かある…この部屋には何か手掛かりがある。
そして、悠木はあるものに発見した。

「ちょっとあんた!さっさと出て行ってよ!」
「タカコさん…1つ聞いて良いですか?あの窓…」

悠木は部屋に1つだけある大きな窓を指さした。

「どーして、カーテンをしてないんですか?」
「私カーテン嫌いなのよ」

そー言ってタカコは部屋を出て作業小屋へと向かった。

「カーテンが何か関係あるのか?」
「あの部屋にあった大きな窓、タカコさんはカーテンが嫌いだって言っていたが、きっちりとカーテンレールがあったんだ」

この事件、悠木はずっと暗闇の中手探りで出口を探していたが、ここに来て光が少しだけ差し込んだ。新たな手掛かりを見つけた悠木だったが、それは同時に新しい疑問を生む事になる…
次回、死神祭り2日目、第2の生贄が死神の前に捧げられる…

       

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