Neetel Inside ニートノベル
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“今度のテストで赤点を取った奴は罰として、女装をして貰う!”
 残念な先生の一言が今回の大惨事の始まりだった。

「ははっ♪ 女装してもらうって女の私とかは、どうなるのかしらね」
「どうなるんだろうね。てか、百瀬さん赤点を取るつもりですか」
「私だって取りたくないけど、バカだからね♪」
 笑って言うような事じゃないような気が……
「ところでもちろん優希は赤点取るのよね?」
「取らないよ!」
 普通に赤点を取るつもりは無いし、女装なんて罰があるなら、尚更取らないよ。
「あれ? 優希って頭いいの?」
「いいかどうか分からないけど、悪い方では無いよ」
「それは意外だわ」
 えー、僕って頭が悪い人のように思われてたの?
 確かに秀才ってわけじゃないけど、そこまで酷く思われてたのか。
「だったら、私に勉強を教えてくれない?」
「それはいいけど……」
 何故だろうね。女の子と勉強会っていうと甘い響きがするはずなのに、とても嫌な予感
がするのは。
「じゃ、早速勉強会を始めましょうかね♪」

 悪い予感ほど当たるのは何故なんだろうね。
 僕が初めに抱いた予感は恐ろしいほど当たってしまった。
 テストに向けた普通の勉強会。そのはずだったのに――

「この格好……全然勉強とは関係ないよね……」
 案の定、普通の勉強会のはずだったのに、何故かまた女装させられている。
 断る事が出来なかったのかって? ははっ。無理に決まってるじゃないか。
 僕が百瀬さんに逆らえるとでも?
 そう。これは仕方のない事なんだよ。
「あはっ♪ 優希、とってもよく似合ってるわよ」
「はは…………」
 相変わらず嬉しくない言葉だよ。
「ほんと……萌え死……しても……おかしくは……ない」
 萌え死って何? よく分からないけど僕の方が死にそうだよ。
 それに、もうツッコムのも嫌だけど、何でチャイナ服?
 勉強とチャイナ服の関係性が知りたいね。
「優希のセクシーチャイナ服でやる気も出てきたし、テスト勉強頑張ろうかしらね♪」
「勉強……頑張る……」
 あ、よかった。勉強をするのは覚えててくれたんだね。もしこれで、勉強会をしなかったら、
僕は一体何のためにこんな辱めを受けたのは分からないもんね。

 勉強を頑張る。そんな事を言っていたような気がしたのに、不穏な空気になってきた。
 辛うじて勉強会という状況を保っているけど、先ほどから二人の視線が怖いのだ。
 深く入ったスリットを舐めるような視線で見てくるのだ。
 これなら、まだジックリと見られた方がマシなのかもしれない。
 チラチラと盗み見るような感じで見られるのは気持ちが悪いんだよね。
「チラ、チラ」
「ちら……ちら……」
 あーもうっ! ほんとに勘弁して欲しいよ。
「スリットから見える艶めかしい足。素敵だわ♪」
「チャイナ……ズルイ……」
 本気で酷い。二人の頭の中が酷い。
 こんなのに付き合っていたら、僕まで赤点を取ってしまいそうだ。
 ここは、そうそうに立ち去って一人で勉強した方がいいだろう。 
 そう思い、席を立とうとしたんだけど――

「可愛い女の子二人を残して何処に行こうとしてるのかしら?」
「……ヘタレ……?」
「…………」
 ああ。逃げられないらしい。
 泣きたい気持ちを抑えながら大人しく席に着く。
 泣きたいけど、泣くもんか。絶対に泣いてなんかやるもんか。
 悲しみの決意をしつつ勉強会を再会する。
 せめて赤点だけは……赤点だけは取らないように勉強しなければ……

 決死の覚悟で勉強会に臨んだ結果。テストの出来はというと――

「何で僕が女装させられてるんだ――っ!?」
 間違っても僕は赤点なんか取っていない。むしろ点数はいい方だった。
 あの勉強会の状況でここまでいい点数が取れたのは、一種の奇跡かもしれない。
 それなのに。ああ、それなのに何で女装させられてるんだろ?
「佐藤が女装するのは当たり前だろ。お前にテストの結果なんて関係が無い。佐藤が女装する
のは規定事項なんだからな」
「…………」
 規定事項ってなんだよ。これじゃあ、辱めに耐えながらテスト勉強した意味が無いじゃないか。
 本当に無駄な努力。なんて意味の無い事。マジで最悪だよ。
「あはっ♪ 優希似合ってるわよ」
 その言葉はもういいって。
 それにしても、勉強会の成果なのか百瀬さんは赤点を取らなかった。
 それ自体は喜ばしい事なんだけど、結局僕だけが損をしたという点だけは最悪だね。
 ほんと、勉強会もそうだったけど今回の最終的なオチも悲惨過ぎるというか、大惨事だよね。

 先生があんな事さえ言わなければこんな事にはならなかったのに。
 あんな事さえ……ね。

       

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