Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 ガーターベルトっていうのかな? よくわからないけど、まさかそんな物を装着する日が
来るなんて夢にも思わなかったよ。
「いや~ん。ゴスロリ優希可愛いわね♪」
「確かに……想像以上の可愛さ……」
「は、はは……」
 やっぱり、こんな事で褒められても全然嬉しくないよ。
「そうだぞ。今回の衣装は俺の中でも歴代トップ3には入るぞ」
「そうかよ。僕の中でお前は今すぐ消えて欲しいランキングの第一位だよ」
 因みにこのランキングは未来永劫変わる事は無いと思う。
「そして、どうしてここに頼子ちゃんがいるの?」
 何時のまに現れたんだろう? そして、出来る事なら彼女にはこんな姿を見せたくは無かった。
「……気にしないで……」
「かなり気になるんだけど……」
「気にしたら……負け……」
 何に負けるのだろう?
「あなたの……いるところにわたしは……いつでもいる」
 ……怖すぎますよ頼子ちゃん。
「余計な存在が増えるのは私的によくないけど、今は優希の可愛らしい姿を満喫するのが
先だからね。それに悔しいけど彼女もなかなかいい趣味をしてるみたいだしね♪」
「褒められても困る……」
 僕も変態が増えるのは非常に困る。

『こまけぇことはどうでもいい!』
『今は我らがアイドルの勇姿をその目に焼きつけよう』
『この後の授業なんかやっている場合じゃない!』
 
 あーあ。クラスの変態共が騒ぎだしたよ。
「教師としてはお前等の発言は止めるべきなんだが、佐藤が可愛いのが悪いし今回は目を瞑ろう」
 いや、ここは教師として皆の暴走を止めるのが、あなたの役目でしょ!
 何で僕の女装ひとつで、後半の授業が全てなくなるんだよ!?
 教育者としてそれはどうなのよ。
「お前等、先生が校長を説得してくるから存分に楽しめよ!」
 とても凛々しい表情を見せて、校長室に向かう先生。
 どうしてこんな時にそんな表情を見せるのだろうか? 凛々しい表情を見せるのは、もっと違う場面で
見せるべきだと思うんだよね。
『せ、先生……!』
『先生の犠牲は無駄にはしないよ……』
『先生は教師の鑑ですよ……』
 そして、コイツ達は一体何を言っているんだろう?
 感動するポイントが全然分からないんだが。

「教師からのお許しも出たことだし、さっそく――」
「さっそく、優希で楽しみましょうかね♪」
「な――っ!? お、俺の台詞――」
「もう少し……スカートの裾を……あげて……欲しいかも」
「ま、また台詞が!?」
 お前の台詞が遮られるのは問題ないだよ。
 むしろ、誰かに遮られる事によってお前の声を聞かなくていいから都合がいいんだよ。
 そして、僕で遊ぶのを回避する事は無理なんだね。
 分かり切っている事だけど、やはり悲しいものがあるよ。
 僕は皆の玩具じゃないって言いたいけど、言ったらどうせ「何言ってるんだ? お前は皆の玩具だろ」
って、言葉が返ってくるに決まってるからね。
 言うだけ無駄なんだよ。
「早く……スカートの裾を……」
 これだから変態は困る。
 もう少し人としての常識を持って欲しい。
「スカート……」
 あと、一人でもいいから僕を助けてくれるような人が欲しいよね。
 この変態共を黙らせる事が出来るような人が……
「……もういい。自分でやるから……」
「ちょっ――っ!? 頼子ちゃん、何スカートの裾をあげようとしてるんだよ!?」
「散々……人を無視……するのが悪い……」
「いや、無視って……」
 スカートの裾をあげろって言われたら、普通は無視するでしょ。
 何で僕が皆にサービスをしてあげないといけないんだよ。もし、そんな事をしたら変態共が調子に乗る
から絶対にお断りだよ。
「それに……裾をあげるのは……皆の総意だから……」
「そ、総意って……」
 変態共の欲望のために僕は犠牲になるというのか?
 激しく遠慮したい所だね。
 まぁ、すでに女装してるから説得力はないけどね。
 それでも最後の意地だけは貫き通したい。
 だから……ね。

『じぃ――っ!』
『じぃ――――――っ!』
『じぃ――――――――――っ!』
 
 その場の全員がジト目で僕を見つめる。
 何これ? まるで全員で空気を読めっていっているような感じは。
 あれですか? 本当に僕はスカートの裾をあげないといけないんですか?
 
「優希、早くしなさい」
「……はやく……」
「さぁ、兄弟! 早く俺に奇跡を見せてくれ!」

 逃げられない現実。皆さんはそんな現実にぶつかった時、どうしますか?
 僕は――

 
 ――その現実を甘んじて受け入れようと思います。
 …………チクチョウ。


『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?』
 変態共の叫びが木霊する。
 本当にこの後の授業が全てなくなってしまった。
 校長は一体何をやっているのだろうか? そして先生は一体どんな説得をしたのだろう。
 何で世界は変態共に優しく出来ているんでしょうか?
 もう少し僕に優しく出来ていてもいいと思う……
 

       

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