Neetel Inside ニートノベル
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 そして『定例集会』当日。僕、シノイとリリーさん、そして他の仲間の『神官』数人が打ち合わせをしてから、『定例集会』が行われる首都の城へと入る。
 この町は、首都だけあってやはり大きい。神国内では一番に発達しているにちがいない。正門から町へと入ると、家が比較的綺麗に立っていて、整備(?)が行き届いているのが一目で分かる。治安も良いという噂だ。
 そして僕らは城の客間のような所で集まる。客間などといっても、そこはやはり流石というべきか、とてもじゃないが僕らの町にあるような“そこそこ”豪華な部屋ではなく、まさに“豪華絢爛”、圧巻だと言える場所だ(過去に数回来ている)。集まった『神官』は十五人。その中でこちらの陣営に味方しているのは僕とリリーさんを含めて五人。少々厳しい数字だが、それでもこちらは機先を制する。なんとかなるだろう。
 さて、『神徒』がやってくるまでに片をつけておくことにしようかな。あの二人が来てしまっては、僕といえども厳しい。メイラちゃんにもそうするように指示されているから問題は無い。
 僕の近くにいるのは男三人、か。なるたけ剣と銃は使いたくないから、今回のメインは魔法。……まあ使えないことはないとは思う。あとは近接戦闘ってところだろうか。
 ……いや、そんな甘いことは言ってられない立場かな。僕らはどうしようもなく『悪』なんだから、今更『善』の行動をするというのも馬鹿げている。それこそまさに都合が良すぎる。そんな覚悟で改革をしようだなんて、なんていう偽善なんだか。
 僕はまず、こっちに対して背を向けている一人を背後から横へと蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたその男は突然の奇襲にどうすることもできず、そのまま壁へとぶつかる。そして蹴り飛ばした勢いをそのままに反転し、呆気に取られている残り二人に対して、片方には小型手投げナイフを二本ほど急所を外すように投げ、もう一人にも同様に急所を外して銃弾を三発ほど打ち込む。撃ち終わると、さっき蹴り飛ばした男にも一発銃弾をぶち込む。……まず三人。残りは――七人。
 ナイフ二本と銃弾を三発ぶち込まれた男二人が倒れるのを皮切りとして、残りの七人も臨戦態勢に入る。大柄な武器は持ち運びが不便なため持っている人は見受けられない。大体が剣だとか、そういうの。武器を持っていない人は魔法がメインなんだろう。
 だが、この場にいる『神官』たちは判断を間違っている。確かに最初に動いたのは僕だったけれど、それでも敵が一人とは限らないのだから。他にも裏切り者がいるかもしれないということを疑った方が良かったんだ。
 次に動いたのはリリーさんだ。彼女も他の『神官』たちに倣って細剣を取り出すふりをして、既に抜剣している。そして近くの女の『神官』二人を難なく斬り伏せる。残りは――五人。
 ここまで人数が拮抗したら、もうこちらのものだ。残りの仲間の『神官』三人がそれぞれ一人ずつに奇襲をしかけ、僕とリリーさんも一人ずつを仕留める。これで残り――零人。
 いくら戦闘能力に長けた『神官』とはいえ、奇襲に強い人間はいない。奇襲とは相手の虚を突くのが狙いであり、同時に精神的な揺さぶりをかけることもできる。そんな精神状態で、こちらとまともに戦えるわけもない。
「さて、あとは君たちに任せるとしようかな……」
 『魔王』様の働きに期待させてもらうとしよう。



 城の中が、外から見ても分かるぐらいに騒がしくなってきた。おそらく先に騒ぎを起こしてもらったシノイたちの働きだろう。これでメイラの作戦の第一段階は完了だ。
「……じゃ、今度はレクシスさんとメルちゃん、お願いね。二人はとりあえずバラバラの所から侵入すること。いろんな場所で牽制してほしいからね。で、少ししてからあたしとるーくんも侵入するよ。『神徒』さんたちの位置は地下……で間違いないんだよねメルちゃん」
「そういう“情報”が入ってますから、多分そうだと思いますよ」
「ん、おっけー。二人は今度は兵士の撹乱を頑張ってね。無事に帰ってきてね」
「それこそ私が君に言いたいことなのだけれどね。メイラちゃんは無理をし過ぎる。一応自分がまだ八歳だということを自覚しておくように」
「あはは、気に留めておくね」
 多分留めもしないんだろうな、と思う。だからこそ、俺がこいつについておかなければいけないというわけだ。ストッパーとしての役目、それが俺の役割。
「じゃ、メルちゃんたちはもう行きますね」
「うん、頑張ってねー」
 そして二人がこの場から去った。……なんだか二人きりというのも気まずい(相手は八歳児だが。いかん、これではまるで俺がロリコンみたいじゃないか)。そんな雰囲気など意にも介さないような風貌でいたメイラだったが、俺が何かを気にしているような素振りに気づいたらしく、「どしたの、るーくん?」なんて訊いてきた。
「るーおにーちゃん、って呼んでほしいのかな?」
「違えよっ!」
 どんな勘違いだ。「あはは、冗談だってば、るーくん」だなんてからかってくる。……こんな八歳児はありえない。
「ま、あたしたちも準備をしとこっか」
「……そうだな」
 そして俺たちもその場を去った。

       

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