Neetel Inside ニートノベル
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 涙を売りにいくと金になる。それに気づいてからは楽だった。毎日ペットボトルを頬に当て、壁を見つめていれば泣けてくる。自分を憐れみ陶酔することほど時間が早く経つ方法はない。四時間も泣いていればそこそこの涙が採れる。俺はそれを丁寧にキャップで締めて密封し、専売店に卸しに行く。散歩のついでに涙を売る。悲しみには値段がつくべきだし、俺は悲しむのが得意だ。涙は誰かが泣いたという事実が重要だ。形あるもの、ラベルがついているもの、それが確かだと証明されているもの。人はそれしか信用しない。ポケットの中の小銭の手触りと、店員の傷跡を見るような目を思い出しながら帰路につく。あの目。
 俺が何に見えているんだ?




       

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Neetsha