Neetel Inside ニートノベル
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わが地獄(仮)
今は、

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 拳でモモを打ちつけてみた。じいんとした痛みが広がる。たとえるなら肉がひどく吊ったときに似ている。あの痺れが走った。その間、俺の意識は明瞭になり、いくらか正気が戻ってきた。だが、それも痛みが潮のように引くと寄せては返す波と同じで、またあの茫洋とした狂気が戻ってきた。こんなことばかりを繰り返している。
 台風が近づいているらしい。外は銀色の光に満ち満ちている。外野で仕事をする人間には辛い気候だろう。そういう人たちのことを誰も思いやらない。かといって思いやったところで、なんだというんだろう。金も出さなければ声もかけない。そんな心配に価値があるのか。あると信じたいが、誰よりも世間というやつらが、俺のなけなしの徳を踏みにじる。
 俺はたまらずに叫んだ。けだもののような声が出た。頭を抱える。孤独と寂しさで死にそうだった。吐き気がして食欲がわかず、常にぼうっと頭の中に白いもやがかかっていた。何を読んでもつまらなく、色あせて見えた。何を読んでもこの俺のみじめな境遇を笑っているように思えた。
 気が狂いそうだった。どうにかなりそうだった。すぐにカッとした。それを自分でおさえられない。おさえれば泣き出してしまいそうだった。
 早く死にたい。一刻も早く。この俺が一秒生きながらえるごとに取り返しのつかないことが進行しているような気がする。早く死にたい。少しでも早く。
 誰に何を言っても信じてもらえない気がする。そんな風にされたら何も言えなくなるというのに。俺を怒らせたいのだろうか? 俺に殺されたいのだろうか?
 いや、違う、すべて幻だ。何もかもが気のせいだし、そうでなくても、どうということはないのだ。
 早く消えたい。頭がどうにかなりそうだ。そして俺は信じている、この苦しみ悶える俺の脳髄が所詮は肉体の反応で、俺の魂、俺の本質、それだけはそのままどこかにそっくり残っていて、いつかまた燃え上がってくれることを。
 だが、今は死にたい。


       

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