Neetel Inside ニートノベル
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社長室は外の豪華な装飾品だらけな部屋と違い。思ったよりこじんまりとして
質素な印象を受けた。
「藤堂、これが君の言っていた例のボーディガードかね?」
奥に鎮座している社長がそう言う。後ろに設置されている窓からの光で
顔がよく分らない。
「はい、彼がそうです。どうですか?」
一瞬の間があったあと社長は言った。
「うむ、実にいい。風貌が特に気に入った。明日から私に付けてくれ。」
「わかりました。では、失礼します。」
えっ、それだけで終わりなのか?まだ挨拶もしてないぞ。
俺は、藤堂に引きずられる形で社長室を後にした。
「社長はシャイなんです。今後の説明をするのであの店に戻りましょう。」
またあの店か勘弁してもらいたい。だが俺は頷くことしかできなかった。


「で、顔すら分らないし状況も把握できなくて置いてきぼりなのだが
そこ等辺もちゃんと説明してくれるんだろうな藤堂!」
あのメルヘンの店に着くやいなや俺は怒り心頭だ。
「まあまあ、増田さん落ち着いて下さいな。」
「ふん、これが落ち着いてられるかよ!」
「ごもっともです。」
どうもこいつの調子に乗せられているような気がしてなお腹が立つ。
「社長は、一部の人間にしかその姿を見せません。ですが貴方はどうやら合格みたいで
僕も内心ほっとしましたよ。」
こいつ本当に他人事だよな…。
「んで、どうすればいいんだこれから?」
「うーん、あの警戒心の強い社長が明日から付けてくれと言うとはなあ。」
今度は独り言のように言い始めた。
「とにかく増田さんを社長好みにしたのが吉でしたね。」
まったく腹が立つやつだな。怒りを通り越してもうどうでもよくなってきた。
「はあ、お前には調子を狂わされるわ。」
「増田さん、ポジティブにいきましょう。とにかく明日またこの店で八時に会いましょう。」
お前はそれでいいかもしれないが俺はとにかく置いてきぼりだよ。
「そのときにまた詳しく話をしますから、おっと…僕もこのあと会議なんで失礼します。」
「おっおい。ここの金はどうするんだよ?」
「大丈夫です、ここ僕の店ですから!いくらでも飲んで食べてください!では!」
藤堂は嵐のように店を去った。
「ウェイターさん、とりあえずさっきと同じ紅茶となんか飯下さい。」
もうこうなりゃ自棄だ食い散らかして帰ってやるわ!



       

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