Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 15年生きてきて、未だに自分は「眠る」という行為が良く分からないのです。
 そもそもおかしくはないですか? 良く考えてみてください。当たり前の事に思えるかもしれませんが、今、こうしてこれを読んでいるあなたは当然意識があります。しかしこれから数時間後には確実に意識を失っていて、再びその数時間後には意識を取り戻している。肉体が破損し、生命が維持出来なくなって死ぬのならまだ分かります。しかし健康状態に何の悪化が見られなくても、いやむしろ、睡眠が出来ない事、つまり「意識を失えない事」を不眠症などと病気扱いするくらい当然のように、全ての人間が毎日「眠っている」。信じがたい出来事です。
 「眠くなる」という感覚が分からないのではありません。頭の動きが硬化していき、瞼が自然と重くなり、横たわるとやけに鼓動が大きく聞こえてくるあの感覚。もちろん自分もそれを毎日味わいながら眠りへと落ちるのですが、意識が完全になくなるその瞬間まで不安は消えません。「今から自分は『眠る』では、『起きる』とはなんなんだ」と。
 おそらく大半の人にとって、意味が分からない事を自分は今言っているのだろうという自覚はあります。これは自分の人生経験に基づいて構築された感覚による所が大きいので、仮に誰かが理解出来たとしてもその人にはきっと何の利益もありません。ただ、自分の誰かに激しく痛めつけられないと起きられないこの体質は、決してそこまで異常ではないのではないか、という気持ちの部分だけは、せめて理解していただきたいのです。
 小さい頃の事は記憶も曖昧で、確信を持てませんが、ランドセルを背負った時にはもう既に、酷く寝起きが悪かったように覚えています。母と2人で暮らしていた時、目覚ましが鳴ろうが地震が来ようが隣でツイストを踊られようが、あまりにも起きない自分は、いよいよキレた母に生ケツをシバかれて起きていました。そして中学に上がり、母が前からしていた仕事に本格的に復帰する際、朝一に自分を虐待する権利が知らぬ間にくりちゃんに譲渡され、それからくりちゃんは毎日かかさず起こしにきてくれていたのです。以来毎朝、くりちゃんからもらってきた一撃は、自分にとっては蘇生の心臓マッサージでした。
 それが明日から無くなるという事はつまり、どういう事か。
 答えは実に簡単です。心配停止。蘇生の見込みなし。ご臨終のご愁傷様です。
 漫画、アニメ、ゲーム、もしかしたら浮世絵やパピルスですらありがちかもしれない、「幼馴染が朝起こしにきてくれる」というシチュエーションを、ちょっとした痛みを引き換えに毎日享受していた自分は、思い返すになるほど幸せ者でした。くりちゃんとの別れは、「好きな人に嫌われちゃってかなちいよ~」といった糞にも劣る少女思考ではなく、歴とした「死活問題」です。以前、くりちゃんが誘拐された時に1度だけ、自分の力でナチュラルに起床した事がありましたが、あれはどうやら奇跡だったらしく、それ以降自分で起きられた事はありません。
 絵にもならない眠り姫(いや、この場合は王子と呼ぶべきかもしれませんが、自分で名乗ったらただの痛い人ですから、眠り変態とでも置き換えましょう)。今目の前にあるシナリオは、明日から数ヵ月後、真夏の暑さに晒されて腐乱臭が漂い始めた自分の死体を近所の人が発見するという最悪のバッドエンドへと向かっています。


 で、す、が。
 裁判所から裸足で飛び出してきた自分は、手に持った半紙をビッと縦に広げます。そこにはこう書かれてあります。「謝る気はありません」
 確かに、無断でHVDO能力を発動させたのは自分の悪い癖というか、お茶目というか、どうしようもない男の性ではありますが、あくまでも親切心から出た事ですし、そもそもくりちゃんはこれまで何度も自分の餌食になってきたのですから、今更何を、という話です。
 思うにくりちゃんは、今日あった出来事、つまり事前に頼んだというのに自分と同じクラスになった事も、しかも出席番号から自分の席の真後ろになった事も、等々力氏によって全一レベルの貧乳として注目を浴びた事も、それら不都合な全ての事を心の中で自分のせいにしているのではないでしょうか。
 だとしたらとんだ勘違い女です。別に自分は今挙げた事に対してあれこれ画策はしていませんし、むしろ貧乳ばかりを意図的に集めたようなクラス編成に大いなる疑問と若干のきな臭さを感じる立場にあるくらいです。ましてやくりちゃんが貧乳なのは自分のせいではありませんし、等々力氏がヤバいのももちろん自分のせいではありません。
 謝る必然性が無いのに謝るのは、自分の道義に反します。いくら命が懸かっているとはいえ、見当違いのヒステリーをぶつける女、しかも将来的には肉便器として扱ってやろうという性対象に、形だけとはいえ侘びを入れるくらいなら、自分は名誉ある(多分無い)死を選びます。
 それに、何もくりちゃんは核戦争後の力だけが支配する社会に生き残った唯一の女という訳でもありませんから、何もこだわる必要はないのです。誰か他の人に頼めばいい。言ってみれば、ただそれだけの事です。
 となると、重要になってくるのは人選です。まず1番に頭に浮かんだ人物がいましたが、それはあえて一旦置いておき、1番無い可能性から消去法でいきましょう。理由は後に述べます。
 ありえなさNo.1で言うならば、ロリコンのHVDO能力者、春木氏です。まず男に起こされるというのが最悪な上、もしも仮に頼んでみたら、例の晴れがましい笑顔で「いいよ」と快諾してくれそうな所が逆に怖いのです。春木氏の消息は一切不明ですが、しかし世界が滅んでもいなければロリだらけになっている訳でもない所を見るに、まだ性癖バトル10勝目、即ち「世界改変態」が行われていないという事は分かっています。 そこまでのんきに構えていてもいいのか? と、思われるかもしれませんが、あいにくと自分の性格は、勇者向きではないのです。賢者に転職しないタイプの遊び人か、50G渡して行って来いの号令だけかける王様の方が理想とする人生例です。
 次に浮かんだのは、これは少し不思議なのですが後輩である音羽君でした。まず了承してくれないでしょうし、もしも何かの気まぐれで引き受けてくれてもそれは上辺だけで、彼女はくりちゃんの方に味方して自分の事など放置するでしょう。信用度で言えば限りなく0%ですが、春木氏よりマシと思ったのはそこそこ見られる女子であるという要素による所ですが、そもそも連絡先自体知らず、卒業式の日以来見てすらいないので、やはりこれも消去です。
 その次に柚之原姉妹の事が浮かびました。姉、知恵様の拷問キチっぷりは未だ自分のトラウマとして深く深くに根付いていますが、起床に確実性があるといった意味ではアリです。しかしながら、いかんせんどこまでされるか分からない、ケツに何を入れられるか分からないという恐怖もあり消去。妹、命さんについては、よく知らないので消去。しかし毎朝年上の美人なお姉さんがわざわざ起こしにきてくれるシチュエーションは、巨万の富にも値するという点で、前の2つよりはマシでしょう。


 等々力氏は気持ちが悪いので無しとして、やはり最終的に残ったのはあの人だけでした。
 三枝委員長、役職から外れたので今はただの三枝瑞樹さんですが、なんとも呼びなれませんので、代名詞としてこれからは「淫乱」と呼ばせてもらいます。
 淫乱はそもそも、別の学校に行ってしまったという最大の壁がありますが、彼女は自分の奴隷なのですから、命令があればそれは絶対のはずです。当然そうなると自分としては「フェラで起こせ」とベタな指示を下してしまう訳で、淫乱は淫乱なのできっと指示に従ってくれるでしょう。そうなると毎朝が快楽天です。
 そろそろ何故淫乱を後回しにしたかの理由を説明せざるを得ないようです。自分はパソコンを立ち上げブラウザを開き、ニュースサイトにアクセスすると、「失神」というキーワードを入れて検索をかけました。そして出てきたのはこの見出し。
『謎の集団失神事件、今年8度目』
 これだけでピンと来た方には、名探偵とド変態という称号を抱き合わせで進呈します。
 淫乱と春木氏の決闘があったあの日の記憶を、自分は決して忘れる事が無いでしょう。淫乱が自ら集めた観客達の前で生ストリップからの公開オナニーショーを行い、最後はHVDO能力で観客達の記憶と一切の記録を消し飛ばすという荒業をしてのけたあの日。その行動はそもそも、くりちゃんの幼女化を解除し、自分の興味を戻すという崇高な目的があったはずなのですが、途中からは完全に淫乱自身の趣味ではないか、との疑惑も生じ、今、この記事の見出しは疑惑を確信まで引き上げてくれます。
 どうやらあの日以来、淫乱は、公開露出オナニーにドハマりしているようなのです。一夜限りの痴態を晒し、後には何も残さず、昼間は何食わぬ顔でお嬢様を演じている女子。それを淫乱と呼ばずして何と呼べばいいのでしょうか。
 人の変態活動に対してとやかく言うつもりはありませんが、「被害者は20代~50代の男性で、100人規模の時も。その全員が事件を記憶しておらず、真相は全くの謎に包まれている」とその豪快極まりない犯行状況を伝える記事を見る度に、自分の中に負い目が生まれるのは事実です。
 元来、オナニーとは1人でする事です。しかし露出狂であるあの淫乱は、人に見てもらう事で絶頂を得るというだけではなく、自分に対して「調教」を依頼してきました。それはつまり、自分の中に主としての才覚を嗅ぎ取り、その下につけばより良い快感が得られると判断した訳です。少なくとも、あの日以前は。
 端的に事をまとめる為にあえて俗っぽい言い方を選ぶなら、自分は「フラれて」しまったのかもしれません。実際、淫乱は自身のHVDO能力をこうしてフルに活用し、露出行為を繰り返している。一切の連絡が無いという事はつまり、そこに「ご主人様」の存在は必要なくなったと捉える事も出来ます。
 幼馴染に絶縁を言い渡され、淫乱雌奴隷には見限られ、言葉にするのも酷く慄然としてしまうのですが、なんだかこう、自分は凄く寂しくなってきました。思い返してみれば、自分はくりちゃんの事を友達のいないかわいそうな子と罵ってきましたが、よくよく考えてみたら自分も似たような物でした。朝起こしに来てくれる人の候補は出尽くし、しかもその全員が変態だったというのですから、自分の交友関係の狭さはスーパーの雑誌コーナー並です。
 電話の子機を手に握り締め、しばらく考え込みました。電話をして、自信満々に命令をして、断られたらどうしよう。そもそも番号が変わっているかもしれない。いや、着信拒否という可能性も……。淫乱の記憶の中に、自分が既にいない可能性がある事を知ると、針のむしろの上で逆立ちしているような気分になりました。自分は勇者にも向いていませんが、恋愛小説の主人公にも向いていません。まあそれは、分かりきっている事です。
 その時、子機の小さなディスプレイがパッと光りました。番号を確認する暇も無く、というかコールが鳴る前に自分は、誰かに肩を強く押し出されたかのごとく不可抗力的に通話ボタンを押して、耳にそれをあてていました。
「もしもし五十妻君のお宅ですか? 私、中学校の時の同級生の三枝瑞樹という者ですが……」
 その声を自分は待っていました。落とされた井戸の底に、ロープが投げ入れられた気分でした。


「淫乱ですか?」と、自分はうろたえ、脳内での呼称をそのまま口にしてしまいましたが、声で察してくれたらしく(台詞でもそうですが)、帰ってきた返事は「……ええ、淫乱よ」でした。
「し、失礼」自分はすかさず詫びをいれます。「三枝……さん」
「ずいぶん出るのが早かったみたいだけれど……誰かに電話する所だった?」
「あ、いえ、構いません」
 肩から力が抜けるくらいの沈黙の後、「そう、ならいいのだけれど」と落ち着いた声。自分はいつもの調子を取り戻すように努め、こう話を振ります。
「三枝……さんの方から電話なんて珍しいですね」
「その呼び方、どうにかならない?」と電話の向こうの淫乱が言いました。しかし今は既に「委員長」ではない事を考慮して、といったような事を説明すると、「それなら、今日付けで私は、翠郷高校の生徒会長になったから」と答えました。
 選挙もなく、一流の進学校の生徒会長に、新入生がなるというのは前代未聞の事であり、おそらくこれからも無い事でしょうが、淫乱もとい三枝生徒会長の力をもってすれば、おそらくは容易い事だったのでしょう。
「そうですか。ところで三枝生徒会長、今日はどういった御用ですか?」
「……いえ、特にこれといった用事がある訳ではないのだけれど、何をしているのか少し気になって」
「そうですか。自分は相変わらずですよ」瞬き2つ分の躊躇を挟み、「と、ところで、最近は精力的にストリップの方をしているみたいですね。この前、新聞に載っているのを見ましたよ」自分は画面の文字を視線でなぞります。
「ええ、まあ……」
 どうにも浮かない返事を聞いて、自分は一歩踏み込みます。
「どうしたのですか? 気持ちのいいオナニーがいつでも出来て良かったではないですか。安全に露出願望が満たされて」
「安全? ……そうでもないわ」と言った後、黙ってしまったので自分が「どうかされました?」と訊ねると、こう答えました。「回数をこなしている内に、段々とイクのが遅くなっているみたいなの。前にも言ったけれど、記憶と記録を飛ばす能力は、私の絶頂を条件に発動しているから……」
 自分は三枝生徒会長の言う事を頭の中で整理していきました。繰り返している内にイクのが遅くなってきた。という事はつまり、やがてはあの程度の刺激ではイケなくなってくるという可能性を示唆しています。公開オナニーによってオーガズムを得られないとなれば、能力も発動しない。つまり、三枝生徒会長の変態っぷりが白日の下に晒されてしまう。
 ここで真に肝心なのは、その事実を自分に伝える事によって、何をして欲しいのか、という事です。質問に答えただけのように見せていても、三枝生徒会長の弁には一切の無駄がありません。これはただの愚痴ではないと見るべきでしょう。逡巡している自分を置いて、三枝生徒会長は勝手に話題を変えました。
「ところで、今日これから私の通う翠郷高校とあなたの通う清陽高校の合併について最終打ち合わせをする事になっているの」
 いち生徒が学校同士の合併について話し合う事は通常あり得ない事ですが、三枝生徒会長ならば何も不思議ではありません。財力や権力といった言葉は彼女の為にあるような物であり、そのスケールの大きさは庶民である自分の想像の範疇を遥かに超えます。それに、自宅にお邪魔させていただいた時に散々驚かされたので、その辺の事に今はもう麻痺してしまいました。
「だけど、合併に反対している少し厄介なのが現れてね……」三枝生徒会長の口ぶりは困っているようでも楽しんでいるようでもありました。「実際に同じ校舎で授業を受けられるのは、予定よりも遅れてしまうかもしれないわ」
 おや、と自分の顔は自然と綻びました。部屋を整理していて昔好きだったおもちゃを見つけた時のような、さきほどまで感じていた寂しいという気持ちもあって、近い将来、三枝生徒会長と机を並べて授業を受ける絵を想うと、ぬくもりを感じました。違う学校になり、最高のオナニーも見つけ、権力を振るいまくってもなお、自分の傍にいる事を望んでくれている。こんなに嬉しい事はありません。
 しかし、だからこそ、自分は言い出せなくなってしまったのです。くりちゃんに見捨てられたから今度は三枝生徒会長お願いしますなどとのたまう事は、自分の中の何かが許さなかった。それはきっとちっぽけなプライドです。適当に捨ててしまうと、2度と見つからないほどに小さなプライドです。


「とにかく、お元気そうで安心しました」
「私も、五十妻君の声が聞けて良かったわ」
 自分自身が平静を取り繕っていたからかもしれません。三枝生徒会長が返事をした瞬間、その声色に、今自分が抱えているのと似た物を感じたのです。しかしそれは、自分のように「隠し事をしている」というよりは、「気づかれてはいけない」という種類の何かでした。
 三枝生徒会長が自分の中に見出してくれた「才能」によるものなのか、それともただの偶然なのかは分かりませんが、自分はピンと来てしましました。自然と頬が緩みます。
「ところで三枝生徒会長、今、受話器をどちらの手で持っていますか?」
「……左手だけれど、それがどうかしたの?」
「では、今から決して受話器を持ち替えないでくださいね」
 自分の言っている意味が分かったのか、三枝生徒会長の、「違う種類の」吐息を電話は拾いました。
「1つお願いがあるのですが、いいですか?」
「ええ、何?」
「三枝生徒会長ご自身の右手の指を舐めてみてもらえます?」
 決定的な一撃でした。三枝委員長は、しばらくの沈黙の後、「……ご主人様には何でも分かるのね」と観念したように奴隷の声になって、自らの右手を舐め始めました。ぺろぺろ、くちゅくちゅ……それから自分はとどめに「自分との通話を勝手にオナネタにするのはこれで最後にしてくださいね」と言って、電話を切ろうとしました。
「待って」向こう側からの声、「『望月ソフィア』という女に気をつけて、HVDO能力者よ。それと、さっき私が言った『厄介なの』というのが彼女」
 自分が受話器を耳に戻し、詳しい事を聞こうとした瞬間、通話は切れていました。おそらく絶頂に達したのでしょう。
 しかし再度かける気にはなれませんでした。もしもその『望月ソフィア』なる人物が敵だとすれば、それは自分自身の力で乗り越えなければならない試練です。三枝生徒会長の警告はありがたく受け取りましたが、あくまで自分はご主人様です。主導権は常に手元にあります。
 そしてとりあえず今の所、乗り越えなければならないのは、「不起症」とも呼ぶべき自分の体質です。何、前に1度は自分で起きる事が出来たのですから、完全に無理という事はないはずです。はっはっは。
 頭を抱えつつ心の中で虚勢を張る事1時間。
 その訪問者は、突如としてやってきました。
 呼び鈴が鳴り、「もしかしたらくりちゃんが思い改めて謝りにきたのかも」と一瞬でも思った自分は確かに馬鹿で、玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは、くりちゃんとは似ても似つかない大人しそうな1人の少女でした。
 見た目は、ちょうど耳を隠すくらいの短い黒髪に、深くて大きな丸い目。清純、という言葉がこれほどまでに似合うのも珍しい、小柄な少女。清陽高校の制服を着ていますが、少なくとも同じクラスではありません(これだけの美少女のチェックを自分が怠るはずがないという確固たる自信があります)。両手を重ねて腰のあたりでもじもじしていたので、腕と腕に挟まった、等々力氏でなくても思わず見蕩れてしまう豊満な胸が更に強調されていました。普通なら、ここまでいやらしい物を首からぶら下げていると多少なりともお下劣な印象を受けるはずなのですが、それでも彼女はなお「清純」だったのです。彼女の容姿の、一体どの部分がそうさせるのかはいまいち分かりませんでしたが、きっと彼女を初めて見た男は誰でも、「かわいい処女がいたものだ」という感想を抱くはずです。
 緊張しているのか、視線を泳がせたままずっと黙っている彼女を見かねて、自分は訊ねました。
「……えっと、何か?」
 唇を震わせながら、想像を裏切らない清く純な声で、少女はこう返してきたのです。
「あ、あの、私とセックスしてくださいませんか?」

       

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Neetsha