そして、なぜ年明けそうそうにキャバクラなんぞに来ているのか、
内藤は自問自答している。
「もっとさぁ、初詣とか、居酒屋とかあるだろーに。」
「僕もギャグで言ってるのかと思ってましたよ。」
「あの人の性格を忘れてた。ありゃ、天然だ。おれも鉄ちゃんみたいに帰ればよかった。」
内藤はこういうところは苦手である。
最初は一文字としゃべっていたが、女達が割って入ってきて独占してしまった。
なるほど一文字は女に好かれそうな顔をしている。
杉村もそれなりに楽しんでいるようで、ひとり内藤だけが浮いていた。
内藤の隣に3人目の女の子が座る。
きっと、また髪型の話から始まって、どこで髪を切っているのか聞かれたり、
服装を褒められたりするのだろう。
店のマニュアルの何も話してこない客の対応なのかもしれない。
職業病なのか、内藤はそんなことばかり考えている。
3人目の女の子も内藤のだんまりに耐えかねて、
5分ともたず交代した。
4人目の女は少し雰囲気が違って、
落ち着いたたたずまいのベテラン風の女性。
「ミユキです。私はなんて読んだらいい。」
「内藤隼人だ。好きなように呼べばいい。」
ミユキはの隣に座りながら、顔を近づけて内藤にしか聞こえないように囁いた。
「誘拐事件の話、聞かせてくれない。」
内藤は自分の仕事のことなど、話した覚えはない。
かまをかけたとしても、なぜ警官であるとバレたのだろう?
「あなたの個人情報が、ネットの掲示板にさらされているのを知らないの。」
内藤は何か得体の知れない恐怖を感じ店を出た。
警察の中に犯人と内通している人間がいる。
そうとしか考えられない。