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やっと犬が死んでくれた!/近松九九

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 犬が死んだ。
 ずっと「死ねばいいのに」と思っていた犬が、とうとう、死んだ。



 ボクがまだ四つか五つくらいの時に、うちに犬がやって来た。つぶらな瞳の可愛らしい、テディベアのような犬だった。母はこの犬が「ゴールデン・レトリバー」であると言った。とっても賢い犬なのよ、と嬉しそうに笑っていた。よしよしと優しく母に撫でられ幸せそうに眼を細める犬を見て、ボクは少なからず嫉妬心を抱いたのを覚えている。
 母はゴールデン・レトリバーとは大変賢い犬であると言ったが、そんなのは間違いだ、とボクは思っていた。犬はことあるごとにボクに跳びかかって来ては、腕を噛んだり、足を噛んだり、しまいにはボクの大切にしていた玩具を持って行ってしまったりと、凡そ賢いとは正反対の行動ばかり取っていた。ボクはそんな愚かな犬が嫌いでたまらなかったし、なによりその愚行を母から微笑み交じりに許容されているのが気に食わなかった。我慢できず、犬のくせに、とボクは犬を殴った。二の腕を噛まれた。
 犬はとにかく良く食べた。朝、晩二回の食事ではどうにも足らないらしく、度々ドッグフードを入れているケースに前足をかけては、くぅんと寂しげに啼いていた。ボクは母から「犬のゴハンは一日二回で良いのよ。それ以上あげたらおデブになっちゃうの」と言われていたため、犬の泣き落としには引っかからなかった。オマエはただ食べたいだけだろう。もう足りてるはずなんだ。この食いしん坊め。ほくそ笑みながら、おやつのケーキを食べた。犬は悔しそうだった。たまに犬が襲いかかって来てボクのおやつを奪おうとしてきた。そういうときはおやつの欠片をポンと遠くに放り投げてやれば、もうボクの方には向かってこなかった。まったく馬鹿な奴だ。
 そういえば一つだけ、犬に進んで与えていた食べ物があった。パンの耳だ。ボクは朝食に出てくる食パンの耳というものが大嫌いで、母が見ていない隙に中心部分だけくりぬいて、残った外側をすかさず足元にいる犬の口に押し込んだ。犬は馬鹿だから、あんなにもマズイパンの耳を嬉しそうにムシャムシャ食べていた。ボクはその様子を優越感に浸りながら眺めた。
 家族旅行には必ず犬も参加していた。「どうして」と父に尋ねたところ「だって家に独りぼっちじゃかわいそうだろ?」とのことだった。そんなの知るかと思った。犬がいるとろくなことが起こらないから、ボクは犬との旅行が好きじゃなかった。
 夏に海に行ったときのことである。ボクは泳ぎもせず、ただ黙々と砂の城を造っていた。芸術的な城を完成させてやろうと躍起になっていた。父は「泳げばいいのに」と残念そうだった。母は「背中だけ真っ赤になるわよ」と口うるさかった。ボクは両親の言葉なんて完全に無視して城の建設に没頭した。一時間ほど建設を続け、ようやっと完成のめどが立ったころ、突如、犬が正面から突進してきた。そのまま僕に衝突した。当然、砂の城は大破。天下を取るどころか建築途中で陥落。ボクは怒り狂った。見ると犬は口に、どこで見つけてきたのか、二リットルのペットボトルを咥えていた。蓋の部分を上手く奥歯で噛んでいる。ははん、なるほど。これで遊んでもらいたかったわけか。ボクはそのとき、たいそういやらしく笑ったと思う。ボクは犬の口からペットボトルをもぎ取ると、全身全霊の力を込めて、沖へ放り投げた。ペットボトルは歪な放物線を描いてから、十メートルくらい先に着水した。思ったより飛ばなくて残念だったが、まぁ良いと思った。何しろ水面だ。犬如きでは取りに行けまい。
 ボクは当時、犬が泳げるなんてことを知らなかった。だから当然、犬は海岸でしょんぼりと項垂れるだろうと思っていた。けれども犬は泳げる。ボクよりもずっと上手に。犬は一瞬の躊躇もなくペットボトルを追って海に出た。頭だけを水面からだし、目を疑う速度で沖へ向かった。ボクは仰天し、同時に焦った。けれどもボクの感情の揺れなど気にせず、犬はいとも簡単にペットボトルまでたどり着いた。
 が、問題はそれからだった。最初、犬はペットボトルのふたの部分を咥えていた。その理由は本体部分が太すぎて、口に入らなかったからに他ならない。嫌な予感がした。背中に冷たいものを感じた。
 犬は大きく口を開いていたが、水面の不安定で横倒し状態のペットボトルを咥えるなんて至難の業。ペットボトルは、犬の前歯にぶつかるたび、さらに沖へと追いやられていた。犬は馬鹿だから、諦めずに泳ぎ続けていた。
 戻ってこいよ。ボクは叫んだ。犬は泳ぎ続けた。餌をあげるから。ボクは叫んだ。犬はペットボトルに夢中だった。馬鹿野郎。ボクは叫んだ。犬の頭がもはや点にしか見えなくなってしまった。
 白く泡立った大きな波が打ち寄せ、ボクの足を濡れた砂で埋めた。水は想像してたよりずっと冷たくて、濡れた足は驚くほど重たかった。
 途端、ボクは恐ろしくなって、両親のいる海の家へ走った。座敷に座る母は「どうしたの? お腹すいたの?」と焼きそばを差し出してきた。寝転がっていた父は「こっちで昼寝しようぜ」とにやりと笑んだ。ボクは喉元まで出かかっていた様々な言葉を全て飲み込んで、焼きそばを貰い、父の横に寝転んだ。ボクのせいで犬がいなくなったという事実を、どうしても伝えることができなかった。ボクは「もう海は飽きた」と言って、そのままシャワーを浴び、服を着た。これで良いのだ、とボクは自分に言い聞かせた。
 ところが、シャワー室から戻って来たとき、ボクは驚くべき光景を目にした。母が犬と遊んでいたのである。全身ずぶ濡れで、少々ボリュームダウンしているが、間違いなくうちの犬だった。犬はまるで何事もなかったかのように、楽しげに尻尾を振って母とじゃれていた。くそっ、とボクは悪態を吐いた。余計な心配させやがって、と思った。
 だから犬との旅行は嫌いなのだ。
 ボクはほんの少しでも犬の心肺をしてしまったことを激しく悔いた。一生、旅行なんて行ってやるものか。そう心に誓った。けれども両親は、春になれば丘へ草原へ、夏になれば海へ山へ、秋になれば川へ紅葉へ、冬になれば雪へ湖へ、ボクを無理やり連れて行った。犬も一緒だった。犬さえいなければ、と幾度唇を噛んだことか。
 いつの頃か忘れたが、犬に子供ができた。母曰く「素敵な旦那さんがいたの」とのことだった。 
 犬の腹は日に日に膨らんでいき、それに反比例して、ボクにちょっかいを出してくることが少なくなってきた。それまでボクと父とで行っていた散歩は中止となり、母による庭での運動に切り替わった。犬だけでなく、両親までそわそわしていた。ボクはなんだかおもしろくなかった。
 出産は動物病院で行ったらしい。この辺の記憶はあいまいだが、あるとき家に帰ってたら、父が「おい見ろよ」とボクの背を押して、それまで使っていなかった部屋へ僕を案内したことは覚えている。部屋の扉を僅かにあけ、二人で一緒に中を覗き込んだ。そこには七匹ほどの小さなぬいぐるみのような生き物と、その生き物を優しく抱き、舐める、良く見慣れた生き物がいた。
 父がボクの頭にぽんと手を乗せた。見上げると、父は満足げに目を細めていた。遅れて母がやって来た。母はクスクス笑いながらつぅと涙を零していた。
 ボクと犬とでは流れている時間の速さが違うのだと、その時初めて理解した。僕にとってはたったの数年でも、犬にとっては十年にも二十年にも及ぶ年月だったのである。自分が何だかちっぽけな存在に思えた。それはおそらく、見下していた存在が、自分よりも先を行っていたと知る、屈辱だったのだろう。
 子犬たちは生後数か月ほどで一匹ずつ他の家庭へ引き取られていった。母は「子犬ちゃんたちも向こうの家で幸せに暮らすわよ」と言っていた。果たして本当にそうなのだろうか。ボクは首をかしげた。引き取られるとき、子犬たちは啼いていた。泣いていた。犬も啼いていた。泣いていた。笑っているのは人間たちだけだった。幸せなのは人間だけなのではないだろうか。
 おまえ、寂しいのか。ボクは犬に問いかけてみた。返答はなかった。当たり前だ。ボクはその時初めて「わたしたち」と「あなたたち」は違うのだと、心から理解したのだった。
 中学校が大嫌いだった。理由は割愛するが、とにかく中学校が嫌いだった。行きたくなかった。けれども両親にそれを悟られるのは何だかとても嫌だったので、毎日元気に玄関を出ていた。学校では一人だった。よく図書室にいた。給食の時間が苦痛だった。父の勧めで入っていた部活が地獄だった。自分の人見知りが良くないのだとは理解していたが、どうしようもなかった。
 両親はよくボクの学校生活について尋ねてきた。ボクは適当に嘘を述べてから、口を噤んで沈黙した。両親に心配されるのが何より嫌だった。ただの意地だった。無駄なあがきだった。そんな僕の愚行を笑うかのように、犬はよくボクの傍にトテトテと歩みよってきて、頬を舐めた。泣きたくなった。泣いた時もあった。犬はふわふわとしていて、抱きしめると心地よかった。そういえばこのころはよく一緒に散歩に行った。お互い暇人だもんな、と池の周りを歩きながら呟いたのを覚えている。座り心地の良い木かぶに腰掛け昼寝もした。ボクが眠っている間、犬はいつもボクの脚もとで体を丸めていた。
 高校では気の合う友人ができたこともあり、学校に行くのが楽しかった。家にいる時間は中学時代と比較にならないほど少なくなり、自然、犬の散歩には行かなくなった。ボクの気持ちなんて何も考えず、トテトテと歩み寄って来ては、ボクを無理やり手綱のあるところへ連れて行こうとしてくる犬に、少なからず苛立ちを覚えていた。その度に「もうお前なんかに構ってやれないんだ」と呟いて、犬を庭に追い出した。うちの庭はそれなりに広かったため、それで十分な散歩になると考えたのである。
 ボクが高校三年生になるころには、犬はすっかり散歩をねだらなくなっていた。そればかりか、日がな一日犬小屋で眠ってばかりで、まともに歩いている姿を見ることさえ少なくなっていた。母は何かと犬の名前を呼んでは動かそうとしていたが、ボクは内心、これで良いではないかと思っていた。図体のでかい犬であったため、家の中で歩き回られるのは大変迷惑なのである。受験勉強の邪魔なのである。シャープペンシルでごりごりと問題集を削りながら、ボクは犬が怠け者になってくれたことを喜んだ。
 ある日のことである。長時間の課外授業を終え帰宅したボクに、母が今にも泣きだしそうな形相で言った。「あの子、歩けなくなっちゃたの」、と。
 母の後ろには腰から下にギブスを巻いた犬がいた。両の前足に顎を乗せ、母とは対照的に、呑気な寝息を立てていた。
 教科書の詰まった重たいカバンを下ろしながら、「事故にでもあったの?」と問うた。「もう歳だから、筋肉が弱ってしまったの」と母は涙をぬぐった。「治らないの?」と言いながら冷蔵庫の戸を開いた。何が飲みたいわけでも食べたいわけでもなかったが、自然とそうしていた。
 母が言うには、もう犬は、人で言うところの90歳近くで、足が弱って立てなくなることも極めて自然なことらしい。当然、これは老化からの障害であるため、治ることはない。「かわいそうにねぇ」と母は優しく犬の頭を撫でた。犬は眠たそうに母を見上げ、ついでに僕にも視線を送ってから、再びまぶたを閉じて寝息をたてはじめた。
 犬は間抜けなことに、自分の後ろ脚が動かなくなったことに気が付いていないようだった。足が健在だったころと同じように、食事中はテーブルの下までやって来て食べ物をねだるし、テレビを見ているときは隣に来て一緒に画面を眺めようとする。けれども後ろ足が動かないため、移動するには前足で体全体を引きずる形になってしまっていた。ずる、ずる。ずる、ずる。オカルト染みた足音が響いた。その度に「うるさいっ」と声を上げ、犬と距離を開けた。
 動かぬ後ろ足を無理に引きずるため、犬はたびたび血を流していた。足の傷には埃や毛がこびりつき、膿んで、汚らしかった。見かねた母が摩擦を軽減させるためにギブスを付けてあげたが、どうやら犬はそれが気に食わなかったらしく、半日も待たずにずたずたに噛み裂かれてしまった。母は「弱ったわ」と笑っていたが、せっかくの好意を無駄にする犬にボクは怒りを覚えた。
 犬の行動がおかしくなった。真っ先に気付いたのはボクだった。
 犬は食い意地の張っているため、ボクが夜食を摘む度に足元にやって来ていたのだが、その日も例に漏れず、相伴にあずかろうとズルズル足を引きずってやって来た。無論、ボクは犬に食べ物を与える気などない。無視である。犬は餌の貰えぬことがじれったいのか、コツコツとテーブルに頭をぶつけていた。何度も、何度も。コツ、コツ、コツ、コツ。
 テーブルが十度小さく揺れたころ、さすがに犬の行動が異常であると気が付いた。これはモノをねだっているわけではない。多すぎる。長すぎる。何かがおかしい。
 ボクは嫌々ではあったが、犬の様子を覗き見た。ふらふらと覚束ない足取りで、テーブルの脚へ鼻頭をぶつけに行く。幾度も、幾度も、狂ったように。
 あぁ、これはもうだめだ。もう死ぬな。近いうちに死んでしまうな。ボクはその時、自然と、無感情に、そう思った。近いうちにいなくなる。近いうちに消えてくれる。ボクはおかしくなってしまった犬の背にそっと手を乗せてみた。ふわふわとした毛並みは遠い昔。今はもう、ごわごわと不快にかたい。
 身体の内側でぐつぐつと、感情が沸騰を始めるのが分かった。けれどもボクは沸き立つそのすべてを、残った夜食と一緒に胃袋へ流し込んだ。消化し、吸収し、なくしてしまおう。吐き出してしまうのは良くないから。
 もって一か月だろう。ボクは勝手に予言した。いや、犬の異変に気が付いた父も同じようなことを言っていた。もう、犬は永くない。それがボクら家族の共通の見解だった。
 ところが、犬はなかなか死ななかった。瞳は完全に白み、後ろ足は完全に動かず、声はかすれ、あごの力もなくなり、糞尿を垂れ流すようになっても、それでもまだ、死ななかった。残りわずかになった命の灯火というモノを、大事に、大切に、迷惑なほど心を込めて、守っているのだろう。おかげでボクら家族は犬のよだれ、糞尿、足跡、そして血を、日に幾度も拭き取らなくてはいけなかった。歩けないくせにズルズルと動き回るため、音が大変耳障りだった。夜中トイレに行きたいとき、足元に注意しないと犬を踏んでしまい、不快な悲鳴を聴く羽目になった。
 邪魔だった。
 目障りだった。
 勉強の障害でしかなかった。
 生活の敵でしかなかった。
 そんな犬に、ボクは心中で「死ね」と言った。 
 精一杯の憎しみを込めて「死ね」と言った。 
 それでも犬は、死ななかった。
 呆れるほどしぶとく、憎らしいほど必死に、吐き気を催すほど醜く、生き続けた。
 犬は――。
 動かない後ろ足を引きずり歩き、狂ったように自分の尻尾を噛み続け、血しぶきをまき散らし、自らの糞の上で眠り、唾液は止まることを知らず、白んだ瞳からは涙がこぼれ、目ヤニで右目が開かなくなり、四六時中空腹を訴え、胃袋は食物を拒絶し、吐瀉物により窒息しかけ、頭を撫でる母の手を噛み、助け起こす父の顔に傷を負わせ、僅かに残る理性によって罪の重さに気付き、啼いて、泣いて、哭いて……。
 犬がその命の終わりを迎えたのは、それから一年後。
 明け方、ボクだけが、犬の死んでいることに気付いた。
 ボクは犬の死をそっと両親に知らせ、そのまま再びベッドに戻った。 
 まだ温かい布団の中で、冷たい床の感触を思い出しながら、

 ――やっと死んでくれた。

 そう、呟いたことを、覚えている。





 死。冷えた空気。寒空。薄く張る霜。固まる肉。白い息。ボクの息。生。
 思い出す。思い出す。思い出す。人形のように動かぬ犬。かつて命だったモノ。
 手のひらに残る感触。ふとした瞬間によみがえる。月日。歳月。星霜。役立たず。
 聴こえる鳴き声。わんわんわん。聞こえる尻尾。ぱたぱたぱた。聴こえる足音。とてとてとて。
 ずるずるずる。ずるずるずる。ずるずるずる。ずる、ずる、ずる。
 夢。気のせい。
 フラッシュバック。
 ごめんなさい。ゆるしてください。ごめんなさい。ごめんなさい。
 後悔。罪悪。ただの偽善。弱い心。
 とて、とて、とて。ずる、ずる、ずる。近づいてくる。食事中。いやしんぼう。
 パンの耳。放り投げる。なくならない。なくならない。なくならない。
 泣いていた母。泣いていた父。眠っていたボク。ごめんなさい。
 かつて生きていたもの。屍。いつのまにか無くなった。白い粉。これはなに? ごめんなさい。
 いなくなったモノ。なくなった場所。犬小屋はどこ? ごめんなさい。
 散歩。行こう。行かなければ。仕事。義務。独りぼっち。キミはどこ? ごめんなさい。
 ずる、ずる、ずる。
 ずる、ずる、ずる。
 聞こえないはずの足音。耳に残るか弱い叫び。
 死んでしまえと思っていた。心から。
 死ねばいいのにと願っていた。本心から。
 苦しいのなら死ねばいい。そうまでして生きる理由はないだろう。どうして生に固執する。なにがキミを縛っている。死ね。死ね。死んでしまえ。楽になれ。
 なかなか死なない犬に対し、ボクは毎日語りかけた。
 動かない後ろ足をさすり、傷だらけの尻尾に薬を塗り、血しぶきをふき取り、毛にこびりついた糞を取り除き、唾液を吸い取って、白い瞳からこぼれる涙をぬぐい、目ヤニを取り除き、流動食を食べさせ、胃の薬を飲ませ、吐瀉物を受け止め、手を噛まれ、顔に傷を負い、罪悪感でいっぱいの瞳を向けられて、啼きながら、泣きながら、哭きながら……。
 死ねよ。死ぬべきだ。
 ボクは毎日、語りかけていた。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。ごめんなさい。
 ごめんなさい。ごめんなさい。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
 
 ごめんなさい……。
 もう、近づいてこないで……。
 ごめんなさい……。




 












 ところで、犬。
 キミは本当に、死んだのかい?
















 
 
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