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 夜中にふと、目が覚める。
 眠りが浅いこともその要因の一つだが、それ以上に嫌な予感が彼女の全身を包み込んだ事もある。
 アリスはのそりと布団から這い出ると、カーテンを開けて窓から外を見てみる。
 するとそこには夜の闇が広がっている。残念なことに暗雲が立ち込めているせいで星を見ることはできないが、アリスにとってそれはそこまで重要なことではない。
 ヒトガタが出てきているわけではない。だとしたらもっとアリスのテンションは上がっているはずだ。
 まるでその見えない夜闇の中に、何か隠れているのかもしれないと、アリスはジッと目を凝らす。
 だが、やはり何も見えない。

 
 「…………」


 また、これだ。
 不安に駆られ、こうしてありもしない悪魔に怯えている。
 はっきりしたことを言うと、自分は死霊など怖くはない。
 例え、自分が人を殺したりしても、罪悪感など何一つ感じないことはもう知っている。


 あの懐かしい日々。
 絶望と悪意に満ち溢れ、たった一人の眠り姫のために――否、自分の欲望のために少女たちを殺し続けた日々を――
 どうやって忘れることができようか。

 しかし、ここは違う。
 この世界は違う。
 この世界にそんな事実は存在しない。
 
 だが、なかったことにはできないのだ。

 たとえ、誰も知らないことだとしても。


 もう一度、アリスは空を見上げてみる。



 そこには―――――――何かがあるはずなのだ。



 寝よう。
 アリスは今感じている懸念を全て忘れることにすると、再び布団に潜り込んだ。


 楽しい一日は楽しいままに終わりたい。
 すでに日付が変わっていることに気が付かないまま、アリスはそんな思いを抱き、再びの眠りについた。









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