賭博師
その男は賭博師だった。べつに賭博師じゃなくったっていい、世界一の野球選手だろうと、敵機を五百機撃墜した戦闘機乗りでも、なんでもいい、男は賭博師だった。生きてる限り誰かを傷つけ、奪うことしかしらない男。その男の父も、祖父も、ずっとずっとどこまで遡っていったって、その男たちは賭博師だった。誰かを罠にかけ、ペテンに嵌め、二度と立ち上がれないようにする。男は賭博師だった。
いつか、愛して欲しいと男は思った。誰でもいい、俺を愛してくれと。
それでなにもしなければ、男はただの賭博師だった。だけれど男はいつかこう思い始めた、誰でもいい、誰か、
俺が愛したぶんだけ、俺を愛しかえしてくれ。
男は愛されなかった。男は賭博師だった。どれほど誰かを愛しても、男は賭博師だった。愛したぶんだけ嫌われて、誰にもたすけてもらえなかった。どんなに泣いても喚いても、
その男は、賭博師だった。