僕はポンコツ
3-last『僕はポンコツ』
「今から思えば、いくらでも言いたいことがあったよ。
16年。
16年だぞ?
『やればできる』と言われ続けて、『無理をさせすぎた』?
……ふざけんな。
ふざんけんなよ!
僕がどんな気持ちで日々を過ごしていたか、知っているのか?
何と比べるわけでもないのに、途方もない劣等感。自分で自分を追い詰めて苦しんで、あげく精神が病んで通学もできないような状態にまでなって!
バカすぎるだろ! いいようにされて!
…………
……あのときあっさりと許してしまった、だからこの矛先をどこに向ければいいかわからない。ふと思い出すたびに怒りが湧き上がって、でもどこにも出せないから溜め込んで、静まるまでじっと我慢しているんだ、今さら罵っても意味ないからな。
…………
……
ああ、ごめん。もう落ち着いたから。
……ごめん、嘘。まだ頭に血が昇ってる。
今は逆らうわけでもなく、未練たらしく勉強している。学生の本分だろうし、損はしないからな。ははっ。
でも、どれだけがんばっていい点取っても、満たされないよ。つまらない。
……
で、だ。
それ以上にな、すごく悲しいんだよ。
16年、子供に無理をさせてしまった。
結果、子供は少しおかしくなった。
親から『無理をさせすぎた』と謝られた。
僕はこう思う。
その子供の16年って、なんだったんだろうな。
無駄、とまでは言わない。思わない。思いたくない。
でも間違いなく、普通の人間の16年と比べたら曲がっているだろうし、劣っているよな?
『無理をさせすぎた』
今ではこう聞こえるよ。
『育て方を間違えた』
被害妄想と言ったらそこまでかもしれないけど、僕にはそう聞こえるんだよ。
いや、実際そうじゃないか? 親が子にそんな謝罪をするんだぞ?
まあ、なんでもいいか。少なくとも僕はそう聞こえるんだから。僕はどうしようもなく、出来そこないに仕上がってしまったんだろうね。
これが、言いたかったこと、だよ。ずっとずっと誰かに言いたくて、言えなくて、ようやく言えたこと。
困るよね。でも、言いたかったんだ。誰でも、誰でも良かったんだ。わかってもらいたいわけじゃない、言いたかっただけ。
……そうだった、謝らないといけないことがある。
前に送った手紙。あのテキストファイルのことだけどね。
『僕のこと、どう思いますか?』
あれは、自分のことを認めてほしいだけだったんだ。別に立川さんじゃなくても良かった、あれも誰でも良かった。僕と親しければ親しいほど、優しいことを言ってくれる、そう考えただけなんだ。
立川さんがどう感じたのかは知らないけど、たしかに、卑怯だ。
卑怯だ。
ごめん。
……ごめんなさい」