Neetel Inside ニートノベル
表紙

ピンク色似合うと思うよ。
黒瀬という女

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「用ってこれかよ」
「…だって」


黒瀬に連れて行かれたのは、図書室だった。

俺と黒瀬は図書室に入る入り口で、こそこそ話をしていた。
黒瀬が言うには、図書室の中にいるのは黒瀬の友人の雅人という奴らしい。
黒瀬も俺と同じ様に、男からは「男友達」という風にしか見られていないらしい。
そして女からは、かっこいいだのイケメンだの騒がれて、告白されるのもしょっちゅうだ。
本当、俺とまったく同じだった。

そして、その雅人という奴だが、黒瀬の友人であり、俺の事が好きらしい。
告白したいから黒瀬に俺をここまで連れて来て欲しいと頼んだというわけだ。
俺はノコノコと男に告白されるがために昼飯を食べ損ねたというわけか。


「ごめんって?…そんな怒らないでよ」
「なんで俺が男に告白されるために昼飯を抜かなきゃいけないんだよ」
「何か奢るから。放課後…」


両手を合わせて懇願する黒瀬を見ていると、どうも断れなかった。
「……授業終わったらファミレス直行だからな。」俺は黒瀬を指差し、図書室の扉を開いた。





「はぁー…腹一杯」
「……龍之介、食べ過ぎ」


そして約束通り、 俺たちは放課後、学校近くのファミレスにいた。
ハンバーグセットとパフェを食べて腹いっぱいになった俺を見て、黒瀬は呆れたように笑っていた。
黒瀬は自宅近くのコンビニでバイトしているらしい。
コンビニのバイトなんて制服は男女同じだから、男に間違えられるのは当たり前らしい。
そりゃそうだろ、だって男前だもん。

かくいう俺もバイト先で性別を間違えられることはしょっちゅうだ。
コンビニでバイトしてた頃は客のジジイにセクハラされたし、カフェのウエイターをしていた頃はメイド喫茶のスカウトがしつこかった。
そして今やっと、個人経営の喫茶店でのバイトに落ち着いている。
自宅近くだし、厄介な客も来ない。そして、女に間違えられても、キレる事は無くなった。
慣れというものなのだろうか。それに、いちいちムカついてたら身が持たない。


「今日も告白されたらしいじゃん、龍之介」
「黒瀬も昨日、手紙渡されてたじゃん。愛姫ちゃんすごーいじゃん」
「…龍之介に名前で呼ばれると馬鹿にされてる気がするんだよなぁ」






黒瀬の下の名前は愛姫(あいひめ)という。ほんと、似合わない名前だと思う。
……龍之介の俺が言うのもアレだが。
黒瀬が言うには、昔はとても女の子らしい子だったらしいが、中学になってから身長がグングンと伸び、顔も男前になっていったという。
俺からするととても羨ましいが、黒瀬にとっては俺と同じ悩みだ。


「んでさ、雅人フったの?」


もう入っていないジュースのストローを噛みながら黒瀬は言った。
フったって、当たり前だろ?!俺は強く言い返した。
黒瀬は切れ長の瞳をくしゃっと潰して笑った。俺が女なら惚れてる笑顔だ。


「…龍之介さー……もういっその事、女の子みたいにしてたら楽だなって思った事ある?」


さっきの笑顔からいきなり黒瀬は真顔になった。
この顔をする時は、黒瀬が本気の時だ。しかし、俺は黒瀬が言う事の意味がわからなかったので、聞き返してしまう。楽だなって…。どういう意味?


「……私達さぁ、外見こんなんじゃんか。龍之介は可愛いけど男だし、私はこんな見かけだけど、中身は普通の女なんだよね。龍之介だってそうでしょ?」
「当たり前じゃん」


そうだ。俺は女みたいな外見だ。というか、女にしか見えない。スカートを履いたら誰も疑わないだろう。肌も白いし、筋肉もつかない。
でも、俺は男であって女が好きだ、水着姿の女の子を見たらムラムラするし、女の子と仲良くしたいって思う。
黒瀬だってそうだ。アイドルの様な、中性的な顔立ち。すらっと身長は高く、王子様という言葉が似合う。
だけど黒瀬は女の子であるのだ。
もしかしたらフリフリのスカートを履きたいと思っているのかもしれない、かっこいい男の子とデートだってしたいだろう。
俺と黒瀬は同じなのだ。


「私がもっと男の子同然の性格だったら良かったのに。 」


だったらもっとのびのび出来たのになぁ。
こう見えても私、中身は乙女なんだよ。かっこいい白馬に乗った王子様を待ってたりするんだよ。外見とのギャップありすぎるでしょ?
黒瀬は少し悲しそうな顔で笑った。


黒瀬は可愛いよ。その言葉を投げかけようと思ったが、そんな事をわざわざ言わなくても俺は常日頃からそう思っているのだ、だって美形なんだから、別にそう思ってもおかしくは無い。わざわざ言う必要なんて…。


まぁようするに、恥ずかしくて言えなかった。


       

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