Neetel Inside ニートノベル
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『欠』能力者バトル
第二章第一話『ディスアビリティ 鷹観ナラクの場合』

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 時は遡りサトシがゲームを開始したころ。サトシとは別の場所でこちらも
ゲーム世界に放り込まれたプレイヤーが一人。彼は街の真ん中に一人たた
ずんでいた。

「初期位置が街とか……ついてませんねえ」

 このプレイヤー。名を鷹観 南洛たかみ ならく 。サトシやタイ
ヨウ、ウシトラとも異なる服装をしているナラクは空を見上げてその場か
ら動かない。


『街の中を移動できない』

 これが彼のディスアビリティ。街の中での移動制限はすなわち街の機能
の利用ができないことに直結するが、今回彼は運悪く初期位置に設定され
ていたポイントに街が出現してしまっていたため、これでは移動もできず、
ゲームを進行することができない。

「仕方がありませんねえ。これは街が移動するまで待つしかないでしょう
か」
 ため息交じりにそうひとりごつナラクであったが、彼は目線の先に自分
の方向へ向かってくるプレイヤーの姿をみとめる。



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Graphic Change
???→knight

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「これは渡りに船ですねえ。おーーーーーい!! 助けて下さーーーい!!」
 ナラクはメニュー画面を開きいくつか操作を終えた後、その人影に大声
で呼びかけた。




「ふはははは、おめえも災難だったなあ。この高貴なる我、
覇戒 王路はかい おうじ が通りかかっていなければ、あの場所
でのたれ死んでいただろう」
 たまたま通りかかったオウジに背負われて何とか移動手段を得たナラク。
オウジの背に背をわれながらナラクはようやく動けると伸びをする。

「いやあ、本当に助かりました。あなたと出会えていなければ丸一日あそ
こで動けずにいましたよ」
「ふはははは、おめえのような者を助けるのも、覇者の器たる高貴なる我
の役目。礼などいらんぞ」
「そうですか、ならついでに呪符屋に寄ってもらえませんかね? このまま
フィールドに出ていくのはさすがに不用心すぎますので」
 笑顔で話すナラク。オウジは彼を背負いながら首を縦に振る。

「高貴なる我も、実は店によりたいと考えていたのだ。『ゲーム内で使わ
れる言語を理解できない』。このディスアビリティのせいで店員と話が通
じないものだから高貴なる我としても困っていたのだ。ゆえにわれとして
もおまえの提案は好都合。お前ならば店までたどり着ければ店員と話もで
きるだろう。その際、高貴なる我の分も買ってほしいのだ」
「ああ、それはもちろん、喜んで。やはりプレイヤー同士で助け合う。こ
れがゲームの醍醐味ですよね」

 二人は呪符屋を目指す。




     

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呪符屋:いらっしゃい

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 呪符屋にたどりついたナラクとオウジ。ナラクはオウジに背中から降ろ
してもらうと呪符屋の店員に話しかけていた。


「オウジさん、どの呪符買いますかねえ」
 店員からカタログを受け取るナラク。オウジもそのカタログを覗き込む
がディスアビリティのせいで何が書かれているのか読み取ることはできな
い。

「我はこのゲームの世界の言語は解することができんのだ。そうはいって
もヘルプは確認できるため大体のことはわかるが、今一度説明してはくれ
ないか?」

 呪符にはいくつかの種類があり、また売られているものも店ごとに違う。
そのため店に入るまではどの呪符が売られているのかもわからず、オウジ
は何が欲しいか聞かれたところで答えることはできないのであった。

「そうですねえ。では、まず呪符の分類から紹介しましょうか」
 オウジからの要望を受け、ナラクが呪符の説明を開始する。

「呪符には簡単に分けて3種類。『攻撃』、『戦闘補助』、『便利』という
分類があります。ここに売られているもので僕たちが買える程度の値段と
なると

『攻撃』では、遠距離からダメージを与えることができる炎属性を持った
『烈火(インフェルノ)』、事前に地面等に仕掛けておき相手がその効果
範囲内に入った場合に発動する罠タイプの『蝸牛地雷(マイマイ・マイン)』
などですねえ。

『戦闘補助』では、即死級のダメージを食らっても一度だけHP1を残して
耐えれる『不倒業0(スプリット・スピリット0)』や、魔法耐性を一段階
上げる『加護の鳥(コート・バード)』等があります。

『便利』では、ダンジョンなどから脱出可能な『臆病な羊(エスケープ・
ゴート)』や、フィールドに一時的に非戦闘エリアを作り出す『矛止の域
(ブロック・ブロック)』等があります。

 今持ってる金額だと、二人合わせても買えて2~3枚と言ったところで
しょうか。私としては一枚、もしもの時のために『臆病な羊』は買って
おきたいのですが、オウジさんはどう考えますか?」
「……おまえ、よく呪符の性能をそこまで把握しているなあ。素直に感心
するぞ。それで、今言った中であったらやはり攻撃タイプの呪符が欲しい
ところ。では、『烈火』をもらおうか」







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呪符屋:お買い上げありがとうございます。またお越しくださいませ。

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 店主から渡される二色の呪符。赤い方をオウジ、青をナラクが受け取り
それぞれアイテムボックスへ。ナラクはオウジの背に乗りながら、
「オウジさん、重くないですか?」
 オウジに対し声をかける。

「この程度、我が大願の前では何の障害にもならん。それよりもナラク、
他によっておきたい所はないか? 我が連れて行くぞ」
「いえ、もうお金もありませんしこのままフィールドまでお願いします」
「了解。ではいくか」

 店を出る二人。背に負ぶさったナラクは手持無沙汰に足をぶらつかせる。

「揺れてかなわん。じっとしていてくれぬか」
「ああ、すみません。ゲーム開始からずっと動いてないので体が固まって
しまって。歩くのに邪魔なら動きません」
 謝りながらも笑顔を崩さないナラクは、オウジに言われて動きを止める。


「そういえばオウジさん」
「どうしたナラク?」
「いや、ここであったのも何かの縁。オウジさんとはこれから一緒に旅を
共にできないかなと思いまして……つきましては二人でパーティ組みません
か?」
「おお、共に来てくれるのか。こちらとしては願ってもないこと。是非と
もお願いしたい」
 頷くオウジ。ナラクはオウジからの了承を受け頷き返す。

「あはは、ありがとうございます。やはり未知の状況に陥ったときは助け
合いが大切ですね。特にこのゲームはディスアビリティが設定されています。
互いの欠点を補い合いゲームクリアを目指す、まさに助け合いのゲームと
言えるでしょう」
「確かに、今の状況もそうだが案外設計者もそう考えてこのゲームを作った
のかもしれんな」
 オウジは高らかに笑う。

「そうだ、オウジさん。今後の策を練るためにも互いにステータスとか見
せ合いませんか?」
「おう、別にいいが先にパーティ登録しないか? もうすぐ街の端につくし
パーティの登録は街などの非戦闘区域でしかできないであろう」
「いえいえ、別にそこまで急ぐ理由もないですし、まずは互いのことを知っ
てからパーティを組む。それでも遅くないじゃないですか」
「……まあ、そうだな。よし、わかった。では、これが我のステータスだ」

 浮かぶメニュー画面。黒い板状のそれをオウジは指で操作していく。並
ぶ文字の羅列の中からステータスを選択。オウジ達の眼前にステータスと
書かれた画面が表示された。

「お前も同じ騎士だろう? ならそんなにステータスも我と大差ないと思う
のだが」
 首をかしげるオウジ。それに構わずナラクはオウジの背中に乗ったまま
ステータス画面をのぞき見る。

「確かに、防御力、HPが高め……ですねえ。私も当然同じです。けれど念
のため。ついでです、騎士の能力等も確認してよろしいですか?」
「うん? それこそ同じものであろう。さっきから確認しすぎではないか?
仲間への過度な詮索は信用を失うぞ」
「いやあ、ははは。そんなつもりはなかったんですけどね。どうも用心深
い性格なもので……(騎士の能力確認はあきらめましょうか)」
 何かを小声でつぶやいたナラク。そうこうする間にも二人は街の端まで
たどりつく。

「では、街を出る前にパーティを組んでおくか」
「そうですね……でも、その前にいったん私を街の外に出してもらってい
いですか? 開始からずっと動けてないので体が固まってしまって。さっき
からむずむずしてるんですよ」
「そうか、ではいったん街の外で降ろすぞ」

 街とフィールドの境界には青い線が引かれている。そこを一歩出ればモン
スターのはびこる危険な世界。オウジはその未知なる世界に一歩踏み出す
感覚を覚えながらフィールドへと出た。

「べつに何かがあったわけじゃねえけどなんか身が引き締まる思いだな。
正直言ってこれからどんな障害があるかわからぬが我は絶対に元の世界へ
と帰るつもりだ。ナラク、お前のこともできる限りサポートする。二人で
ゲームクリアを目指そうぞ」
「ははは、それはまたありがたい」

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Damage35
HP=0

Player:Hakai Ouji
Live→Dead

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「なっ!?」
 いったい何が起こったのか、突如受けたダメージの表示に辺りを見回す
オウジ。そこで目に入ったのは短刀を自分の背に突き立てるナラクの姿。

「一人盛り上がっているところ申し訳ありませんねえ。でもよかったじゃ
ないですか。この世界からは解放されますよ、もちろんデッドエンドですが」
 いまだ状況を理解できないオウジ。徐々にその顔は青く変色していく。

「なぜ……」
 話すことも苦しいのか、オウジの放った言葉はほとんど声にならず掻き
消えていく。

「あなたを殺す理由ですか? ああ、わかるわけもないですよねえ。実際
街から出してもらえたことには感謝してますし。恨まれる理由がないって
やつですよねえ? 恨みはなくてもこっちには殺る理由はあるんですよ」


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Graphic Change
knight→???

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 饒舌に語るナラクはメニュー画面をいじると、鎧姿だったその姿が、顔
まで覆った黒装束へと変わる。

「っ!?」
 声にならないおどろき。オウジは目を見開いてナラクの姿を見る。

「おどろくのも当然、不思議がるのも当然。私だって騎士の能力を知りま
せんからねえ。これが私の、暗殺者の能力、

『自装癖(トリック・ホリック)』。

姿を偽るだけのまったくもってしょうもない能力です。けれどもこんなく
そ能力でも、私はこれがなきゃ生き残れない、頼らなきゃ勝ち残れない。
胸糞悪いったらありゃしない。ああ! 神は私を見捨てたもうたか!!
……って、私、無神論者なんですけどね。ははははは。さあ、そろそろあ
なたのキャラも消滅するころですかねえ。騎士は耐久性の高い職業。レベ
ルが上がり装備がそろえば一撃では殺せなくなる……それじゃ困るんですよ。
私が。けれども恨まないでくださいよ。だってこれは裏切り、騙しあいの
ゲームなんですから」
 ナラクの口元が引き上がる。

「がっ、あっ」
「それでは、会えたらまた来世で」
 オウジの体がまばゆい光を放つ。




 数刻の後、オウジの肉体はフィールドの上からきれいさっぱり消滅した
のであった。




「まずは一人。さあさあ、はりきって次行きましょうか!! ……こほん。
粛々と行きましょう。」
 一つ咳をするとナラクは静かに街を後にするのであった。




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Player:鷹観 南洛
Job :暗殺者
Skill :『自装癖(トリック・ホリック)』
グラフィックをほかの職業の物に変更可能
条件として一度その職業のプレイヤーの姿を見る必要がある。
object:プレイヤー残数1 現在15/16


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Neetsha