Neetel Inside ニートノベル
表紙

転生した世界はとんでもないところでした!
VSネクロマンサー 踊れよオドロな死者の宴 俺がやらなきゃ世界は救えん!

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「ふぅ、ここが屍島か……」
  なにもない砂浜にたどり着いた俺達。手前に広がるのは岩場と枯れ果てた木々。島の奥の方では火山が不気味に黒煙を吐き、そのせいか島全体が厚い黒雲に覆われている。
「はぁはぁ……もう無理……」
「あんまりハァハァ言うなよ。なんかエロい」
「エロいって!…………おえっ」
「うわ、汚ね!」
  相当疲れたのだろう。身体中汗まみれで地面に伏せ腹にあったものを戻すピリア。
「ただでさえ飛行はきついのよ。普通は手ぶらでも10分か20分が限界なのにそれを荷物をもって一時間連続飛行だなんて……」
「最初の30分は俺の練習だろ……」
「……バケモノ」
  どっちが化け物だ。という突っ込みは置いておいて、リュック腹に持っていき全く立てそうにないピリアをおぶって島の中心部へと進んでいく。
「ねぇ……ちょっとだけ休ませて……」
「駄目だな」
「本当にお願い……」
  肩の辺りを強く握られるが、すぐに弱々しくなった。どうやら本当に辛いらしい。
「もっとましなところで休ませてやるからもう少しがんばれ」
  返事は帰ってこなかった。

 
  道中、休めそうな場所を見つけたので日影にピリアをおろし寝かせておいた。幸い下は土なので少しはましだろう。火山に近いせいか、若干暑さを感じた。ピリアのおでこをさわると若干熱っぽい。どうやら軽度の熱中症かもしれない。タオルを水で濡らし身体や顔の汗を拭き取りおでこにそれをのせる。若干はしたないが、熱がこもらないように大の字になってもらい、なるべくピリアを傷つけないようにかなり弱めのブリザードをピリアに放つ。そうすると、さっきまで荒かった息づかいが、若干おさまった……ような気がする。一通りピリアの看病が終わり、自分の休憩に入る。乾パンを一つとりだしそれを口に放りこむ。口が乾いたのでおちょこ一杯位の水を飲む。そして軽く目を閉じる。
  目を閉じているあいだいろんなことを考えていた。カノンちゃんに負けたこともそうだ。この世界を救うこともそうだ。浄化のことや、エッチなことも……だが、それよりももっと別のこと、意識が薄れた時にオージに言われたあの言葉が頭のなかに引っ掛かっていた。それについて考えようとしたとき、何者かの足音がした。ピリアを見るがまだ眠っている。次に足音のした方向に目を向ける。そこには招かざる客がいらっしゃった。
「グゥルルルゥゥ」
  さすがの俺もこいつらに浄化は難しいかもしれない。肌がただれ、目玉が飛び出し、
地面に落ちる度に煙をあげるよだれを垂らす元ワンちゃんが3匹ほどいらっしゃった。
  「もう死んでる奴は流石に契約外だよな? 」
  祈るような気持ちで剣を構え、敵と相対する。戦闘開始だと言わんばかりに犬が吠える。

     

「結局食えそうにないな……」
  案外犬コロ自体たいしたことはなかった。胴と頭がバラバラになっても動き続けたのはびっくりしたが凍らせることで事なきを得た。唯一の失敗はピリアを庇い右腕を噛まれたことくらいだ。一応応急処置はしたが未だに右腕が痛みで動かない。あの犬のよだれにはどんな成分が入っているんだ?
「で、お前はいつまで泣いてるんだよ」
  俺より少し離れたところで体育座りをしているピリアに声をかける。犬に噛まれたときの叫び声で起こしてしまったらしい。
「ごめんなさい……」
「だからあれほどついてくるなといったのに」
  余計なことをいってしまったのか、体を震わせすすり泣きを始める。
「とりあえずこの包帯を切ってくれよ。利き腕じゃないから切り辛くて仕方ない」
  左手でハサミの形をつくりそれを使うジェスチャーをする。そういえばこの世界にハサミはあるのだろうか?という心配をするまもなく、ピリアが両手を使って包帯を切ってくれた。
「おう、苦しゅうないぞ」
  包帯を受け取りリュックに詰め直す。噛まれたのが前腕部だったからなのか、肘は動く。ただ、手のひらをグーからパーにするのは困難だ。何よりビリビリしびれて動かそうにも動かせないのが現状だ。
「とりあえず痛みが引くまで休憩だな」
「あのときも……」
「カノンちゃんの話はいいだろ。もう過ぎたことだ」
「同じじゃない。あたしが寝てる間にあなたはボロボロになって」
「飛行の練習に付き合ってくれただろ?あれでチャラだ」
「あたしはあの時なにもしてないわ。勝手にあなたが飛んで、勝手にいろいろやり初めて……」
  涙でぐちゃぐちゃになった顔で俺を見るピリア。
「あたしなにもしてない、ただあなたの足を引っ張ってるだけで……ごめんなさい!」
「言いたいことはそれだけか?」
  リュックから水の入った瓶と、干し肉をとりだしピリアに渡す。
「これ食って飲んでこの島から出ていけ。ここでお前とお別れだ」
  受け取ろうとしないので、直接手渡しをする。
「ここにこれたのもお前のおかげだ、ありがとう。あとは気を付けて帰れよ」
  左手でのみでリュックを担ぐ。かなり軽くなったので問題無さそうだ。まだ痛みは引いていないがピリアのことを考えたらここに長居をするのは良くない。ピリアに静止の言葉をかけられたが無視して進んだ。
  しばらく歩いて後ろを振り返る。ピリアはついてきていなかった。

     

   毎回、四天王と呼ばれる強力な魔物が集まるのはこの屍島らしい。というのも、ピリア以外の各四天王にとって集まりやすいのと、この島を拠点とし、移動したがらないネクロマンサーに配慮した結果らしい。まずはその四天王とやらを倒せば魔王討伐の道が見えてくるはず。ちなみにピリアはネクロマンサー以外の四天王の居場所はわからないらしい。
 
  屍島と呼ばれる位だ。何かあるとは思っていたが想像以上だった。島の中心部に向かって進んでいくごとに白骨化した人間、腐り果てた元生き物がわんさか転がっていた。原因は不明だがどうやらこの島には本当に生き物一匹すんでおらず、まさに屍のみしか存在しないのだろう。幸い彼らは襲って来なかったが供養も兼ねて万一の時に備えて火葬しておいた。
  元々は賑やかだったであろう城下町も完全に寂れていたが、道中とは違い死体は1つも落ちていなかった。恐らく先程の犬の仲間にされたのだろう。むごい話である。右手はまだ若干しびれるが雑魚相手であれば問題は無さそうだ。いつ襲われてもいいように回りを警戒する。聞こえるのは自分の足音と風の音だけの筈だ。一歩、また一歩とゆっくり歩みながら火山同様不気味に佇む城に歩みを進める。そこにやつがいるはず。四天王の1人。ネクロマンサー・ユウテイが……

     

「すまんが成仏してくれよ!」
  ゾンビの大群を一気に炎で焼き尽くす。しばらくは苦しみ悶えるように体をバタバタさせながら仲間に抱きつく。炎が死体から死体に移りやがて黒い何かと死臭が部屋中に残る。
  首を跳ねても襲ってくる死体にたいして炎や氷の魔法は非常に有効だった。まぁ、炎で焼けば先程のように臭いに困るし、氷の魔法であるならばもう一撃加えてバラバラにしなければならないという手間があるが……
  ネクロマンサー・ユウテイの城は最悪だ。鎧を身に付けているものも何人かは居たがほとんどは肉と醜い体をさらしている化け物のみで現在の城主の趣味の悪さと倫理観が伺える。
「少なくとも次は人型以外が嬉しいぜ」
  しかしその願いはあっさり砕け散った。壁を破壊し、突如現れたのは自分より二回り大きい人型の怪物だ。
「ぐぅぁぁぁぁ」
「くそ、せめて人語を操ってくれ」
  鎧に包まれた怪物は右手についている鞭と化した5本の指で地面を叩き威嚇している。
「くそ!お前どっかであったことあるぞ」
  俺の記憶が正しければ……そう思って来た道を全力で引き返す。異臭を突っ切り角を曲がる。後ろからは鎧がぶつかる音と通常では考えられないような大きい足音。足音のテンポが短いことを考えると恐らく走っているのだろう。右腕が少し痛むが休んでいる暇はない。なるべく自分が有利な場所に移動しなければ……扉を開く時間ももったいない。目の前の扉を炎の魔法で焼き払いそのまま侵入する。目についた階段はかけ上がる。なるべく上へ、上へ……
  三回くらい階段を登っただろう。何枚もの扉を焼き払っただろう。その間、追跡者に            追い付かれなかったのも邪魔物に会うこともなかったのが奇跡だった。そしてその奇跡は最後まで続いてくれなかった。階段を登りきるとまずはゾンビ犬が襲ってきた。運よくこれに反応し首を切り落とす。キャン!という甲高い声のあと、獲物に逃げられたと言わんばかりに低く吠える音が聞こえたが無視をしようとしたときだ、何者かに足を捕まれ転倒。なりふり構わず捕まれてる足の方に火炎弾を打ち込む。何かの断末魔と共に右足が熱くなる。なにかに足首をつかまれている。それも無視して走り続ける。今でこそ追跡者の気配を感じないがいつ追いつかれるかわからないし目的地についたら少しは息を整えたい。天井から落ちてきたなにかを横と縦に切り分けそのまま突っ切る。肌に粘っこいなにかを感じながら見えないゴールに向かって走り続けた。
  どれくらい走っただろうか?どんな道を辿ったのだろうか?だだっ広い部屋のちょっと奥にひとつの王座がある。まぁ、ここならばいいだろう。足首を掴んでいる指を1つずつ丁寧に剥がし床に捨て一言。
「出てくるなら出てこいよ」
  その言葉を待っていましたと言わんばかりに天井から先程の追跡者が降ってきた。
「空から落ちてくるのは女の子だけでいいんだぜ」
  鞘から剣を抜き追跡者に構える。

     

  始めに動いたのは俺だった。鎧を着けた雑魚に対しては氷魔法で一気に凍らせるのが一番。鎧ごと叩き割れるからだ。まだ本調子ではない右手を広げてブリザードを放つ。これで奴も凍って……いない。なんとも間抜けに胴の部分しか凍らず、それも自力で砕かれてしまった。完全に奴を凍らせるのにはもう少し威力が必要なようだ。追跡者はしたり顔(のようにみえた)で俺に一歩ずつ近づいてくる。このままで終わるわけないだろばか野郎。正面が駄目なら別の方向で攻めるまで。背中に翼をはやし、次は真上からブリザード。しかしこれも無駄だった。ブリザードは相手を凍らせるまで魔法をあて続けなければならない。雑魚やピリアであればすぐに凍ってくれたが、このでかぶつはそうもいかない。凍らせる前に右足全体を鞭と化した五本指に掴まれてしまった。
「しまっ……」
  全部言い切る前に地面に体を思いっきり叩きつけられる運よく受け身はとれ、頭を守ることはできたがダメージはでかい。幸いこの鞭では足を引き裂くことはできないのだろうそれだけが救いだ。未だ鞭が伸びているので切らせてもらうことにする。
「真空波!」
  右手を振り発生した真空波は弧を描き追跡者の鞭を根元から断ち切った。鞭の力はぬけ地面に落ち溶けていく。一方追跡者は何事かもなかったかのように鞭元の長さに戻している。
「凍らせるのは無理、鞭に痛覚はなし。しかも無限に生えてくるのか……」
  剣を鞘にしまい左手をあける。別に諦めた訳ではない。まずは胴を守る鎧に氷のつぶてを喰らわせた、その後空いた左手で間髪入れずに火炎弾を打ち込む。予想通りなにも起こらない。それをひたすら交互に繰り返す。その間追跡者は重い足を一歩、また一歩と動かし俺に近づく。氷、炎を鎧に当てて、襲いかかる鞭は風で落とし距離を離す。何度か繰り返すうちに鋼鉄の鎧は歪な音をたて始める。
「そろそろだな」
  最後の火炎弾を打ち込み、追跡者からかなり距離をとる。両手で氷の魔法の力をためる。やがてじぶんの左手には白銀に輝く槍が握られていた。
「これでも喰らいやがれ!でかぶつ!」
  俺の左手から放たれた槍は一直線に追跡者の鎧に向かっていきそれを貫いたと思った ら鎧と共に砕け散った。
「がぁぁぉぁぁ」
「流石に痛いか。すぐに楽にしてやるよ」
  とどめを刺すために剣を抜き追跡者に近づく。間合いに入った瞬間だった丸太のように太い腕が横から飛び出し俺をはねていった。予想以上に吹っ飛ばされ壁に激突する。
「がはっ!い、痛てぇ……」
  油断していた。右手の鞭ばかりに集中していて左の存在を忘れていた。涙と血で混じった視界に奴の姿が移る。動きたくても動けない。追跡者に頭を掴まれる。不味い。殺される。頭に力が込められているのがわかる。不味い……このままでは…………
  諦めそうになったとき頭に込められていた力がふと抜けて俺は地面に落とされる。
  何が起きたのかわからなかった。朦朧とする意識で見たのは身体中が針まみれの追跡者と、俺に手をさしのべる羽の生えた何かだった。
「天使からのお迎えは早すぎるな……まだ死んでないぜ」
「こんなときに馬鹿なこと言わないでよ!あたしが来なかったらあなた……」
  差し出された手をがっちり握りしめ立ちあがるのを手伝ってもらう。
「油断するなよ。あの化け物、かなり怒ってるぜ」
  5本の鞭で地面を滅茶苦茶に叩く化け物を指差す。
「あいつの弱点は多分頭だ」
「なんで知ってるの?」
「それは後で教えてやるよ」
  言い終わる前にすでに火炎弾を頭に放り込む。追跡者は頭を押さえながらうめいている。
「同情するぜ。勝手に息返されて勝手に戦わされるんだからな」
  今度こそ引導を渡してやるために追跡者に近づく。鞘に剣は入っていない。ならばと右手に氷の力をためる。徐々に氷は右手を覆い凶器に変えた。幸い右手が痺れているお陰で寒さを感じない。初めて犬コロに噛まれたこと、ピリアが襲われてくれたことに感謝する。
  追跡者に一歩近づく。鞭が飛んでいくのが見える。一歩近づく。追跡者が振り上げた左手が地面に落ちた。俺の攻撃の間合いに入った瞬間何の迷いもなく頭を氷の槍で貫いた。左手があった場所から無数の鞭が生え、うごめいていたがやがてそれは停止した。
「やったのね……」
「いや、まだだ」
  動かなくなったものを炎で燃やし尽くす。死者に対するせめてもの情けだ。
「まさか僕の最高傑作を倒してしまうなんてね。驚いたよ」
  どこからわいてきたのか白髪の少年が手を叩きながら俺に近づいてきた。年は十代前半といったところか?
「冠に傘のマークの紋章か……趣味悪いな」
「おや?気に召さなかったかな?」
「ねぇユーテイ、あれはなんなの?」
  ピリアがユーテイに声をかける。その声には恐怖が混じっていた。
「あぁ、これは僕のペットだよ」
「悪趣味だな。まともな大人にはなれないぞ」
「はは、面白いこと言うね」
  ユーテイが王座に座り、リラックスするように延びをしたあといい放つ。
「こんにちは。勇者ハヤト。そしてピリア姉ちゃん。僕はユーテイ。僕は死者を扱うことのできるネクロマンサーのユーテイだ」
  自己紹介が終わった瞬間ピリアの叫び声が響く。いつの間にかピリアは謎の少女に囚われていた。血の気のない肌、手入れされていないボサボサの黒髪、無表情ではあるが美しさのある整った顔。
「そして紹介するよ。僕の唯一の友達だったユーリだ」

     

「ユーリはね、3年前の火山噴火に巻き込まれて死んだんだ……」
「ふーん」
  全く興味が湧かなかった。こんなきちがいの言うことに耳を貸すのさえ勿体ない。
「悪いがお前の過去なんかに興味がないんでな。さっさと終わらせて次の四天王の場所を吐いてもらおうか」
「まったく……仲間が囚われているというのにまずは自己の目的を達成させる。カノンさんの言う通りだね」
「ほう……カノンちゃんから俺のことを聞いてるのか」
  だったら話が早い。そうなれば次に俺がどうするかあのチビ助はわかるはずだ。
  ちらっとピリアの様子を見る。怯えた表情の中になにかを覚悟したようなものを感じる。
「あぁ、聞いてるよ。だからピリア姉ちゃんにはちょっとだけ苦しい思いをしてもらうよ」
  その言葉のあとだった。ユーリと言われたものはピリアの首筋に噛みつく。ピリアの首筋からは赤い血液が漏れ始め、ユーリが口を離すと血液はさらに流れ出す。
「や、やぁぁぁ……」
  小さく涙声をあげその場に倒れるピリア。2、3回ほど体をびくつかせ荒い息を吐きながら苦しみ始めた。床に血溜まりが出来上がる。
「すぐには死なないよ。このまま放置してたらどうなるかわかんないけどね」
「なら助けてやらないとな。どけ、ゾンビ」
  ピリアに近づきつつユーリに火の玉を放つ。爆発音がしたがユーりとやらの存在には興味はない。黒煙立ち込めるなか背のうから医療セットを取り出す。
「近づかれたら面倒だからな、タイフーン!」
  俺とピリアを中心に大規模な竜巻が起こる。俺がこの場を動かない限りこいつは止まない。攻撃が来ないうちにピリアの介抱を始める。薬草で消毒し、ガーゼをあてて包帯を巻く。医療セットを買ったとき婆さんに言われたことを思い出しながら……
「ハヤト……ごめんね……」
「しゃべるな。」
  治療を終えると同時に回りの竜巻を消滅させる。
  ユーリはというとすでに俺らから離れ、ユーテイのそばに居た。
「へぇ……こんな技も使えるんだね」
「ほかにもこんなこともできるようになったんだぜ」
  なにが起きたのか理解させないままただユーテイの近くに居た人形の左腕を奪ってやった。本来なら吹き出すはずの鮮血なく、ただどす黒い液体が彼女の腕があった場所から溢れるのみだ。
「な……?」
「速いだろ?さっきのデカブツには聞かなそうだったからお前の嫁さんで披露させてもらったぜ」
「よ、よくもユーリを……」
「怒るのはいいが、なにもしなくていいのか?」
  再びピリアのもとにたどり着いた頃にはユーリと呼ばれたゾンビは真っ二つに割れていた。
「弱いな、さっきの方が強かったぜ」
「う、うわぁぁぁぁぁ!」
  やけを起こしたのかユーテイは辺りにところ構わず魔法を乱射する。雷は天井を踊り、火炎弾は壁と言う壁を剥がしていく。
「人をもてあそんだ罪は重いぜ覚悟しな」
  とどめを刺そうとしたときだった。ユーリの遺体が輝きそこから優しい光が溢れ出す。それが人の形を作ると俺らに語りかける。
「勇者様、お止めください。そしてユーテイ、あなたを守ってあげられなくてごめんね」
  声を発した光の塊はピリアに近付く。そしてピリアを優しく包み込んだ。
「毒に犯されていますね……でも大丈夫です」
  その言葉通りピリアの息使いが穏やかになる。なるほど、これはすごい。
「そ、その声……ユーリなのか?」
「えぇ、そうですよ」
「ユ、ユーリ……」
「感動の再開というところだが悪いな、こいつにはお仕置きが必要なんだ」
「必要ありません」
「そういうと光はユーテイを包み込むと同時に雷撃を叩き込む」
「が、ぁぁぁユー……リ」
「ごめんなさい、ユーテイ。私がもっとしっかりしていれば……」
  一体なにが起こっているのか?理解する前に光は俺に語りかける。
「勇者様、お願いがあります。この島の呪いを……魔の力を浄化してください」

     

  スモークベーコンならず、スモーク勇者が出来上がりそうだ。現在俺は屍島の火山の煙を我慢しながら上を飛んでいた。さっきの光と共に。
「で、本当に大丈夫なんだよな?」
「えぇ、大丈夫です。ユーテイはしばらく目を覚ましません。万が一目を覚ましたとしても魔法はもう封印しています」
「……そうか」
  もしピリアが殴る蹴るをされたらどうしようかと考えたが、そこまであいつも弱くないはずだ。
「では、浄化に入るとするか」
  輝くグングニルを握り、上下に移動させる。左手で。
「うわぁ、大きいんですね」
「ごめん、黙ってて」
  グングニルをしごき続けて10分たっただろう。なにも出てこない。原因は考えられる。まず1つめ、右手が使えないこと2つめ、全然興奮しないし虚しいこと、そして3つめ……
「あのぉ、手伝ってくれませんか?」
「なんでですか」
「いや、普通に考えてスペルマを火口にぶちこむってハード過ぎませんか?」
「今までいろんな穴に注いだでしょ?」
「いや、穴は穴でも今回はがばがば過ぎるでしょ」
  おまけに奥まで突っ込んだら溶けちゃう。物理的に。
「では、どうしてほしいんですか?」
  すると、目の前の光は人型になり生前のユーリの姿となった。
「こうすればいいんですか?」
  するとユーリは俺のグングニルをいたずらし始める。
「あっ……いい……」
「へぇ、だったらこういうのはどうですか」
  俺におしりを突きだし、秘部の辺りに手で円形の形を作ったものがある。これはまさにあれだ。
「SUMATAという奴か……」
  俄然燃える。ユーリの背中にまたがり、腰を動かしながら胸を揉みしだく。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
「あら、ハヤトさんって変態だったんですね」
「な、なんの話だ……うぐ!」
「いっぱい出してください。この島の呪いを解くために」
「はぁ、あああうぅぅぅぅ!」
  肌と肌がぶつかり音をならす。それは段段とテンポが早くなる。そう、俺の快感と共に加速する!
「イク、イク、イク…………うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

  スペルマが火口に入り、溶岩に飲み込まれたと同時だった。新たな生命が誕生したのか、はたまた若返ったのかともかく火山は急に活動を始めた、まるで絶頂を迎えたとばかりに上空に放出される溶岩。天高く打ち上げられたそれは外気にさらされ急激に冷やされ岩石となって落ちていく。
  俺はというと、比較的安全であり、待ち人の待つ場所へ向かうことになった。


  あのあとの流れは速かった。ユーテイから次の四天王の居場所だけでなく、なぜユーテイ自身があれほどの魔力を持っていたのかということも聞き出すことができた。話せば長くなるし今は必要なことではないので次の機会にその話はしようと思う。別れ際にユーテイは俺にこう言っていた。
「あなたは魔王様に似ている」
  なにがどう似ているのか?それと魔王の居場所は教えてくれなかった。いや、居場所については知らないらしい。ちなみにユーテイはしばらくの間はこの島で暮らすらしい。自分を見つめ直すために……
「で、本当に渡るの?」
「だったら船が来るまで待つか?」
「それの方が安全じゃない?」
「だめだ、時間が勿体ない」
「えぇ……そんなぁ……」
「まぁいざとなったら俺に任せろ。ギリギリまで見捨てないから」
「それって自分がやばくなったら見捨てますよってこと?」
「……ノーコメントで」
「……まぁいいわこのまま足を引っ張る訳にはいけないからね」
  俺が合図をし、2人同時に飛び立つ。
「ねぇ、そういえば次の目的地は?」
  いけない、それは忘れてた……しかしそれすらも今は教える必要がない。
「俺についてくればいいだけだって」

       

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Neetsha