英雄になりたい。その一心で聖十字軍に入隊したものの、現実に打ちひしがれていた。俺の想像していた英雄は蛮族を蹴散らし、民を解放し、人びとに感謝される。そんな英雄を描いていた。実際は違った。
そこにすむ人びとの文化を否定し、村に火を放ち、逃げ回る住民を殺してまわる。金目になりそうなものや、女子供は生け捕りにし、奴隷や売春婦として商人に売り付ける。その後、得た金を持って村に戻る。
大量の富をもたらした俺に村の人びとは祝杯をあげる。若者や子供たちは俺の武勇伝を聞きたがる。酔っていたので話してやった。逃げ回る蛮族を蹴散らし、隠し持っていた財宝を見つけ持ち帰ったこと。殺された仲間の恨みを晴らしたこと。
血の気のある連中や正義感が人一番強い連中は弟子入りを求めてきた。俺の武勇伝を、決して誇って語ってはいけない戦果に目を輝かせている。なにも知らない屈託のない瞳。耐えきれない。
俺は席をたち誰もいないところで、誰にも見られず吐いた。
「貴様、今の話は本当か?」
「俺は嘘をつかないぜ。なんたって聖十字軍の英雄様だぜ」
カッコつけてはいるが俺は今、敵の捕虜となっている。情けない話だ、逃げる敵を深追いし弟子達は全滅。俺はというと真っ先に、一目散ににげたはずなのにあっさり捕まってしまったのだ。
「さぁ、俺の知っていることは全部吐いたぜ。あとは一思いにやってくれよ」
無言で近づく若い男。俺たち見たいに衣服や鎧を着けず、植物のみで肌を隠している。
「蛮族よ、仲間たちの恨みだ」
痛いのはわかった。それから意識がなくなっていく。これでいいんだ。