Neetel Inside ニートノベル
表紙

昇天の拳
愛の力でパワーアップ!疲れてる時こそお風呂です!

ターゲットの百合草小春の処置は下部に任せ、指扇は夜の歌舞伎町、しかも細い通りを迷いなく歩いていた。足を止めた場所は「マッサージ快楽園」いかがわしいマッサージ店の暖簾を潜ると30代半ばの男が暇そうに新聞を読んでいた。
「どうも夜遅くにすみません、マッサージをお願いします」
指扇の言葉に反応する男。顔を見るや、強面からは想像できないような笑顔を向ける。
「いやー、嬉しいよ。ちょうどひましてたもんでな。まぁいつも通り奥に行っててくれすぐに準備をする」

男の技術は素晴らしい。凝っている部分を的確に揉みしだいていく。指扇にとってはこれが一番の快楽である。
「お兄さん。仕事帰りなのかい?」
「まぁ、そんなところです」
ありふれた会話である。
「マスター。そう言えば入り口の看板……」
「あぁ、昔からあったのをそのまま使ってるのさ。ここに住んでいたマッサージの神様のご利益があるかも知れないからな」
「マッサージの……神様……」
上半身の筋肉のコリがほぐされていく。その心地よさ。
「話してやりたいところだが……残念時間だ。20分で二千円だ」
速い。指扇は思ったが時計を確認すると確かに20分経っている。
「すまないねぇ。ただ、これもマッサージの神様の仕業かも知れねぇ」
「いや、いいんです。寧ろこちらこそ……本当は長い時間やってもらいたいんですが」
頭を掻く指扇。その言葉は本当だ。そして指扇は思った。決してこれは神の仕業ではない。

また来ます。偽りのない言葉をマスターにぶつけ快楽園を去って間もない頃だった。
「おい、そこの二人。こそこそしていないで出てこい」
ビュンと風が吹きつぶれた空き缶がカンカン音をあげながら転がっていく。木々が揺れざわつく。人の気配を吹き飛ばすほどの強い風だが指扇の眼光は鋭く一点に集中していた。
「……いるのはわかっているんだ。無駄な抵抗はよせ」
ビタッと止む風。人のいる気配がない。
指扇はジャケットの内側からなにかをとりだし投げ込む。先程の風ごと切り刻む勢いのまま指扇から放たれた何かは茂みをズタズタにしていく。
「ちょっ!ちょっとぉ酷いですよぉ!」
女の声がする。
「あらあら。流石に駄目だったようですねぇ」
「ふん、俺も舐められたものだな」
「あら?そうですか?」
指扇の目の前に現れたのはまたしても美少女。しかも二人組である。
「初めに名前を聞かせて貰おうか」
「まったまったー!普通あなたが先に名乗るもんじゃないのぉ!」
ショートカットの少女がぷりぷりする。すると指扇、なにかを投げ込んだ先を指差す。
「そこの名刺に俺のすべてが載っているはずだ」
「え!?うそうそ!」
下手したら自分の首を飛ばしていた名刺を探す少女。あったー!と喜びの雄叫びをあげると同時に読み始める。
「イケメンデリバリーマッサージ師、指扇紫電、二十五歳。電話番号は、0x0-6x2x-x8x0……」
「ちなみにその電話番号は本物だぜ」
すると長髪の女がおもむろに携帯電話をとりだしコールする。セカーイノスッベーテーガミ……
「どうも、お電話ありがとうございます。イケメンデリバリーマッサージ師。指扇紫電と申します」
「なるほど。何一つ嘘はついていないようですね」
口元に手を当てて納得する長髪。
「では、こちらも自己紹介をさせていただきます。私の名は如月そしてこっちが……」
「はいはーい!睦月でーす!よろしくー!」
「……あんたら殺し屋か?」
状況によっては殺すと目で訴える指扇。
それを残念そうにいなす如月。
「ええ、そうです」
「なんでこの俺が……」
「それはいえないのだよ!」
「ボスの次に素敵な方だと思いましたが……残念ながらここでお別れですわ」
如月が言い終わると同時に放たれる人の頭くらいはある鉄球弾。後ろのゴミ箱が恐ろしい形にひしゃげる。
「あら、髪が痛むのでさっさと終わらせたかったのですが」
「おいおい……仕込み銃は反則じゃねぇか?」
「人を殺せる名刺を持ってる人が言う台詞じゃないよね……それ!」
正論と共に放たれるロケット砲。指扇はそれに驚きつつも別の路地に避難する。姿勢を低くした瞬間にパチンコ玉らしきものが頭上を飛んでいく。目の前の壁にめり込む。
「あちゃー」
「あちゃーじゃない!殺す気か!」
「それが私たちの任務なので……睦月ちゃん。まわって!」
「はいよ!バンバンバーン!」
お次は頭上から、モーター音と共に降り注ぐBB弾。
「がっ!」
跳弾が肩に当たる。それでも充分痛い。
「どう?改造銃のお味は?」
答える前に足元に投げ込まれる手榴弾。とっさの判断で安全な方向、且つ睦月が居そうな場所に蹴り飛ばす。
「きゃあぁぁ!」
BB弾が飛び出す音と同時に響きわたる睦月の叫び声。
「如月ちゃん。こいつ結構手練れだよ!」
「そうみたいね」
「おいおい、こんなの、本物の銃とたいして違いがないじゃねぇか」
彼女達が繰り出す攻撃は凄まじいものだった。さっきまで立ち並んでいたゴミ箱達はもう役割を果たすことができなくなってしまっているし、何個かのBB弾は壁にめり込んでいる。
(攻めて……やつらに近づければ……)
ここで指扇は迷った。危険を省みなければ彼女達二人を簡単に捻ることができる。しかし……いや、ここで迷う必要はない。この状況を乗り切ることが最優先だ。
「あまり使いたくないが……ふん!」
二の腕に指を突き刺す。物陰から見ていた如月、睦月の両名は驚きを隠せない。
「不感孔を突かせてもらった。これで俺は痛みを感じない体になった」
本当はそれだけではないのだが……
「ふん、そんなの!気にしないよー!」
放たれるBB弾。それに向かって走る指扇。
「モーター音が近い……ここか!」
「げっ……な、なんで?」
「む……睦月ちゃん!大丈夫!」
如月からは何も見えない。一方指扇と睦月はというと……
「や、やめてぇ」
腕を組まれ地面に押し付けられている。
「しばらくおとなしくしてもらうぞ……ハァ!!!」
肩甲骨を思いっきり親指で押す。押さえつけていた腕を離す。
「貴様には武器になってもらうぞ……」
返事はない。

「む、睦月ちゃん!なんで……しっかりして!」
しばらくして如月が現れる。彼女は親友の虚ろな表情にショックをうけている。
「そんな……む、睦月ちゃん」
「少しだけ彼女には細工させてもらった。そして如月。お前にはこいつの最期を見届けてもらうぞ」
指扇は睦月の両こめかみを親指で押さえつける。するとどうだろうか。助けて……助けて……と呻き声を出すではないか!
「た、助けて、あたしおかしくなるぅ!やだ!如月ちゃん助けて!」
指扇が指を離すと同時に、睦月は如月に勢いよく走り出す。しかし如月、愕然とした表情でそれを見ているだけだった。
睦月の状態。それは正常なものではなかった。息づかいが荒く、足元もおぼつかない。汗も多量にかいている。だが、問題はそうではなかった。
「やだ!やだ!身体のなかから熱いの!キャンキュンするの!助けて!如月ちゃん!身体の中の熱いのをとって!」
まさに淫獣!発情した雌豚と化した睦月は如月に覆い被さる。
「やん!やめて睦月ちゃん!こんなところで」
「わかってるよ!でも……我慢できない!なんで?嫌だよ!怖いよ!如月ちゃん……如月ちゃん!!!」
睦月は己の股を如月の太股に擦り付け、来ている服を剥ぎ取り始める。まるで欲望が抑えられなくなった強姦魔のようである。
「指扇!あなた睦月ちゃんになにをしたの!答えて!」
「快楽秘孔の一つ"暴欲孔"を押させてもらった」
暴欲孔、押されたら最期、死に至るまで己の欲望を満たそうとする秘孔。解除する方法は死ぬか、欲望を満たすかである。そして、睦月の生死は如月にかかっているのである。
「やだっ!ごめんね!如月……ちゃん!んあっ!どう……して……もぉ!とめられなぃぃぃ!!!」
「いや!睦月ちゃん……ひゃっ!あぁ、そこは……んんん!」
今にも泣き出しそうな顔の如月。しかし彼女には泣いている暇などない。
かつてない興奮によって睦月の心拍数はどんどん上がっていく。早く冷ませてあげなければやがて睦月の心臓はパンクし還らぬものとなるだろう。しかし如月はそれを行わない。なぜか?気づかないからである!このからくりに気づくわけがない!!!
「如月、睦月はこのままでは死んでしまうぞ!彼女を救うヒントを教えてやろうか?」
「死」というワードに反応する如月。睦月に自慢の身体を蹂躙されながらも神にもすがるような目で指扇を……見る!
「簡単だ。今すぐに彼女を満足させろ。俺からは以上だ」

如月は考えた。彼女を満足させる方法とは……そして辿り着いた答えは……
「む、睦月ちゃん。んんん……」
ディープキスである。しかしこれは悪手。指扇は冷ややかな視線を如月達に送る。これではいたずらに睦月を興奮させるだけである。現に睦月の顔がさらに雌の顔になっていく。
「あぁ、如月ちゃんのエッチなキス……もっと……頂戴」
「ん!?んんん~~!!!」
押し倒される如月。言わんこっちゃない。
更に睦月。もう下着を脱いで露になった秘部を如月の腹部にこすりつけ始めるではないか。淫乱甚だしい。
「あー!もっと欲しいよ!如月ちゃん!もうあたしだめかもぉ!壊れちゃう!!!大破しちゃうよお!!!」
「いいぞ睦月。そのまま欲望の海で轟沈するがいいさ!さぁ!早く!沈め!轟沈しろ!睦月ぃぃぃぃ!!!」
「さ……せ……んあ!……ない!!!睦月ちゃんあぁぁ!!!助け……ける!!!」
その時扉は開かれた。向かう場所はヴァルハラでもなく、禁断の園でもなく、アルカディアでもない……
ただ、その鍵で扉を開くことに気づくのは遅すぎた。最後の希望への道サンクト・ペテルニウムは生ではなく、淫魔と死神が蔓延る死への一本道と化していた。
「お前はもう……死んでいる」
「ひぃ!ひぃ!あぁ……ああああああああああああああああ!!!!!」
指扇の一言を打ち消す魂の叫び!
涙!汗!潮!すべてを弾け飛ばした少女の顔は幸福感と快楽、そして安らかな物となっていた。もう、彼女は物言わぬ。今ここで命を散らせたのである!!!
「ああ!睦月ちゃん!睦月ちゃんーーー!!!」
「テクノ・ブレイクさ……女でもなる。勉強になったな」
「こ、このーーー!」
ぼろぼろの状態での進撃は愚かである。怒りに任せた拳は呆気なくねじ伏せられた。そして如月自身にも呪縛を、宿命を押しつけられる。
「さて、お前に押した秘孔"天秤傾感孔"という。俺の言うことを聞かなかった場合快感がお前の身体を襲う。素直に言うことを聞いたら快感が引く……クククお前はどっちを選ぶかな?」
究極のアメと鞭!快楽か、忠誠か!それとも死か!
「そして俺がお前に望むものは1つだ!なぜ俺を狙った!お前達のボスは一体何者だ!答えて貰おう」
「言えません……ひゃあ!!!」
言えない。それはつまり拒否に当たる。そして拒否した代償として彼女の身体を快楽が襲う!弓なりに反る彼女。秘部は噴水と化し、己の清水が亡き友の身体を濡らす。
「さぁ、どうする?このまま快楽に溺れ果てるか?それとも素直に従うか?」
「いいます……言い……」
その時彼女の身体は凍りついたように硬直する。さっきまでの快感が波を引いたようになくなっていくのだ。本来は喜ばしいことなのである。しかし正常な感覚が麻痺した彼女にとっては一大事である。
「言い……ません!!!にゃあああああ!」
再び快楽が襲う!そしてその顔には喜びが混じっている!
「ああ!良い凄く良い!もういい!私も壊れたい!凄いから!これすごい!睦月ちゃん!!!あたしも!!!!!イッイッイッ……イクーーーーーー!!!!!!」
乱れる長髪!飛び散る愛汁!
「あぁ!ごめんなさい!ごめんなさいボス!如月ぃ!沈んじゃう!!!壊れちゃう!あ!あ!駄目!ボスぅ!如月ぃのことぉ!いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
都会の喧騒に響く如月の声。それが彼女の言う"ボス"に届いたかはわからない。ただ、これだけは言える。
「お前はもう……死んでいる」
最後の一滴を絞り出した後、また新たな屍が生まれた。
……さて、ボスとは一体誰だったのだろうか?
表紙

井生 明 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha