Neetel Inside 文芸新都
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匿名で官能小説企画
女教師の土曜の夜

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 神田佳奈は中学校の英語教師だ。教員になって1年と数カ月が経っている。昨年度は右も左も分からないまま言うことを聞かない生徒たちと悪戦苦闘の日々を続け、あっという間に1年が経っていた。少しは仕事に慣れたと言いたいところだが今年からは学級担任を任され、やはり悪戦苦闘が続いている。生徒と関わらない時間での雑務も案外多く、定時の17時に帰れることはほとんどない。土曜日にも部活動の顧問として出勤しなくてはならない。
 一週間の仕事を終えた土曜の夜は、バーに行って一人で酒を飲むようになった。と言ってもたいていの場合はしばらく飲んでいるとバーの男客に声をかけられ、談笑しながらの酒になる。その後ラブホテルに流れ込むところまでが習慣になっていた。

 この日は珍しく佳奈の方から男に声をかけた。普段より少し疲れが溜まっていたのかもしれない。同年代のスーツを着た男で、人当たりが良さそうな顔をしている。この人なら仕事の愚痴を聞いてくれそうな気がした。そして今日はホテルに行くことにはならないかもしれないという気もした。しかし20分後、二人は連れ立ってバーを後にした。会計は男のおごりだった。
 ホテルまでの道すがら、これで良いのかと自問することがある。自分の行動は教師として恥ずべきものではないのかと。そのたび
「あれだけ必死に働いたんだから、これぐらい許してほしい」
「プライベートにまで口を出される筋合いはない」
 と心の中で何者かに言い訳をする。もっとも彼女は自分の生徒が不純異性交遊をしていればどんな理由があってもそれを許さないだろうし、プライベートの不可侵などということは考えもしないだろう。そうした自己矛盾に気付くと無性に酒を飲みたくなるが、歩きながら酒は飲めないので代わりに男の腕に体をよせた。

 ホテルの部屋に入ると男は佳奈の体を抱きしめキスをしてきた。酒の臭いがした。
「男は下品だ」と思う。
 しかし自分も同じ酒の臭いを放つ同類なのだろう。佳奈は男の背中に手を回し、酒臭い吐息とともに男の口の中に舌を入れた。
 シャワーを浴びてベッドに横たわると男にバスローブを脱がされた。軽く肌に触れられるとものすごくくすぐったい。思わず笑みがこぼれる。男の指が乳房に触れた。体が浮き上がるように気持ちいい。男にもっとそれをさせるために、色っぽい声を出してみた。男は乳房を揉み始めた。さらに気持ちよくなる。打算ではなく自然にあえぎ声が漏れる。それに応じるように男の吐息も荒くなり、乳房を揉む力も増していく。気持ちよさのあまり我を忘れそうになる佳奈だったが、乳房を思い切りわしづかみにされると少し痛みを感じた。佳奈は男の手をゆるめさせるために、男の股間に手を伸ばした。
 男の性器をゆっくりなでまわしていると、少し冷静になった頭にぼんやりといろんな考えが浮かんだ。自分はいつからこんなはしたない女になったのだろう。悪いことをしているつもりはないが悪い女になったと思う。こんな自分が教師などしていていいのだろうか。しかし自分がこんな風になったのは教師になったせいだとも思う。
 だからどうだということは考えられない。頭に浮かんぶ考えは何かの答と結びつくこともなく、ただ浮かんでは消えていく他なかった。それが延々繰り返されるのが嫌になり、佳奈は男の手をとって自分の性器に触れさせた。とろけるような気持ちよさが頭のもやもやを消してくれた。

 互いに性器を触り合っていると、男が
「舐めて」
 と囁いた。佳奈は
「もっと気持ちよくしてほしい」
 と答えた。男の返事がなかったので
「入れて」
 と具体的に言った。男の反応は鈍く、挿れる前に舐めてほしい様子だった。仕方がないので男の耳元で精いっぱいの色っぽい声で
「入れて…」
「我慢できないの…」
「早く…」
 と囁いてみた。同時に男の性器をなでる手を速め、腰をくねらせ、乳房を男の体に押し付けた。男はまんざらでもない顔をしながら枕元の避妊具に手を伸ばした。
 男は佳奈の体に多い被さり、避妊具に包まれた性器を佳奈の性器に挿入した。佳奈は少し痛みを感じたがこれはいつものことだ。痛みはあってもやっぱりこれが一番気持ちいい。
「もっと…」
 と声が漏れる。それが
「もっと速くして欲しい」のか、
「もっと深く入れて欲しい」のか、
「もっとたくさん突いて欲しい」のか、自分でも分からなかった。もう何も考えられなくなっていた。ずっと何も考えられない状態にして欲しい。そう思う気持ちも浮かんだそばから男の性器に突かれるたびかき消えていった。もっとそうして欲しい。佳奈は男の体にしがみ付いた。

 男が一旦動きを止め、正常位から後背位に切り替えるわずかな時間に、また少し頭が冷静になった。昔の、大学生の頃を思い出した。それは立派な教師になろうと勉学に励んでいた頃であり、初めて男性と交際した頃であり、要するに今の自分とはほど遠い、純粋だった昔の自分を思い出していた。ただしそれは瞬間的で断片的な回想であり、具体的なエピソードと呼べる記憶が蘇ったというわけではない。それでも佳奈は昔の自分を思い出すことで何かやりきれない気持ちになった。
 男が後ろから性器を挿入し、佳奈の奥へ打ちつけた。飛びそうになる意識の中で、佳奈は少し寂しくなった。誰かに抱きしめてほしいと思った。男は後ろから何度も性器を打ちつける。佳奈はシーツを握りしめた。惨めになったような気がした。何もかもを忘れたくなって、男の動きに合わせて腰を振った。快楽で腰に力が入らなくなり、男が動きを速めてそれに合わせられなくなっても、佳奈は懸命に腰を振り続けた。いつまでもそうしていたかったけれど、ほどなく男は射精してしまった。


 男は「明日予定がないなら一緒に泊っていかないか」と誘ってきたが、佳奈はそれを丁重に断った。男と別れて家に帰る途中、やっぱりこういうことはよくないと思った。もっと健全に生きようと思った。
 けれど仕事の疲れは癒さなければならないので、来週もバーには行くだろう。
「でももう絶対ホテルになんか行かないわ」
 そう声に出してみた。独り言をつぶやくなんて私はかなり酔っているな、と思った。


〈終わり〉

     

【作者あとがき】
 読んでくださってありがとうございます。
 エロも小説も初挑戦だったので、難しかったけど書いてて楽しかったです。読みやすさ重視でシンプルにまとめたつもりですが、果たして上手くいっているんでしょうかね。
 ご意見ご感想などいただけると嬉しいです。

       

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