Neetel Inside 文芸新都
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LOWSOUND 十字路の虹
28 Cabal Of Lindwurm

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 ある日マリアが住処に帰ってくると、リンドブルム陰謀団の人間たちが壁や床に泥を擦り付けているところだった。
 特になにも言うでもなく、家に戻って、翌日出て行くと、廊下でバルクホルンとエリクソンが雑談していた。珍しく私服だった。
「なにしてるの?」マリアが尋ねた。「活動は終わったの?」
「終わった」バルクホルンが答えた。「第八十五次調整が完了し、次回まで凍結となったんじゃな」
「次回っていつ?」
「来年かもしれないし」エリクソンが魚肉ソーセージを食べながら言う。「三百年後かも。前回は栄誉の年代末期だった。その前は三王国戦争のころだったかな」
「いや、栄誉の年代のは前々回じゃろ」少年が訂正する。「その後もう一回あった、分派が暴走してエラいことになったやつ」
「あ、そっか。いずれにしても、我々のおかげでセミが脱皮するのを見れたり、姑がある程度嫌味を言わなくなったり、あるいは肩こりや、眼鏡が曇ったりするのが軽減されてるんだから、マリアも感謝しないといけないよ」
「いや、私は裸眼なんで感謝はしないよ」
「そうか。さて」エリクソンはソーセージを食べ終えると立ち上がって、「オレは次の調整まで地下に潜るよ」
「ああ、元気でな」
「さらば同志ゲレオン・バルクホルンよ」
「ああ、同志アダルバート・エリクソンよ」
 彼は去っていった。バルクホルンはその後もアパートにいて、なんどか廊下でその姿を見かけた。何があったわけでもないが、その別れの日、夕焼けがやたらに綺麗だった。

       

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