【雑誌名】週刊少年VIP
【作品名】鉄甲ボンゴ
【作者名】ウッチェロ
【作品URL】http://www.studio-uccello.com/BONGO/index.html
【普通の漫画より労力がかかっている】
3Dモデル漫画だが、普通の手書き漫画より遥かに労力がかけられており、決して手抜きではない。
話も当初は「鉄人28号」という印象だったが、実は「エヴァンゲリオン」でもあり、「サイボーグ009」でもあり…。色んな作品からのオマージュが感じられる。
男の子の好きな物がぜんぶ詰め込まれたような作品。すべてが好みだ。
当初は人形劇やコミPo!のようなチープさが目についたが、話数を重ねるごとに洗練されていき、今では普通の漫画以上に自然で手間がかかっているのは明らかだ。
3Dモデルでも漫画として見せるにはコマ割りや構図など色々と工夫せねばならない。
コミPo!漫画がチープに感じられるのは、その辺りのコマ割りや構図がとてもワンパターンで素人丸出しだからだと思う。
ウッチェロ先生はそのあたりの技術がズバ抜けて高く、本当に絵が描けない人なのかと疑いたくなるほど上手い。めちゃくちゃ読みやすい。状況説明を丁寧にしてくれるし、間を取るのが上手い。画面構成に強弱があり、テンポが良い。
絵が描けなくてもこれだけできるというのは、やはり映像制作のプロだからだろうか。でもそれだけではなく、物凄く多くの漫画を読んでこられたのかもしれない。(関西にスタジオがあれば個人的に仕事を頼んでいるところだ。ホームページのデザインとか写真とかお願いしたい)
また、時折挿入される「解説」の川崎市観光案内が良いアクセントにもなっている。これが結構楽しみ。川崎競馬場と海水浴場の解説が最高に笑った。
それにウッチェロ先生の文章はとても読みやすく、小説とは違って漫画だからこその読みやすいテキストになっている。
例を出すときりがないが、例えば7話。野田刑事とメイドのケイちゃんのデート回が個人的にお気に入りなんだが、テキストだけでもめちゃくちゃ笑える。言い回しにセンスを感じる。発砲許可を(笑)
ベタ褒めだが好みだからしょうがない。
……決して手抜きの感想ではないぞ。
【機械か人間か】
以下はネタバレになるので注意。
「かのん」を作るために費やされた数々の犠牲、そして2年でリセットされるという記憶の設定…。
娘を想う父の心が暴走した結果、人道や生命の倫理を無視したやり方で誕生したかのんとボンゴ。
それに対し、機械による世界征服を企む敵との決着がそろそろ佳境に入ろうとしている。
根津やプロトらとの決着もついたし、本当に最終決戦という雰囲気だ。
最期、機械に取り込まれるように、人間の知性や身体を捨てさせられた根津。
100年以上抱えてきたいびつな野望潰え、名前も分からず死んでいったプロトのマスター。
彼らも当初の印象よりも遥かに見どころがあり、掘り下げられたうえで退場していった。
いずれも機械か人間かあいまいな存在と思われる。
そしてかのん、ボンゴ、機械による世界征服を企む敵もまた、機械か人間かあいまいな存在だ。
最後に勝つのは機械か、人間か、括目して見届けたいところだ。
日常パートが明るかっただけに、8話で一気にハードでシリアスな感じに引き寄せられた。
いやがおうにも最終決戦に期待がかかる。
……普通の感想ですみません。
【余談だが】
ウッチェロ先生のミシュガルド漫画で「ビビの日々」がコミックニートで好評連載中だ!
内容のかなりの部分で「ミシュガルド戦記」からの設定を取り入れてくださっている。
実にありがたいし、内容も実にハイクオリティ。
皆さんこちらも面白いのでぜひ読みましょう!
……宣伝みたいですみません。