不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
17・ホムセン ジョーカー事件(1/2)
叫び声の方を向くと買い物客が一斉に逃げ惑っている。
「きゃあああ」
「逃げろ!逃げろ!」
「ヤバイヤバイ」
どうした? 事件? 火事?
「え? な、何? 怖い……」とエリナは僕にしがみつく。
すると突然、群衆の向こうから包丁を振り回している若い男がこちらに走ってきた!
「うがぁぁあオレはもう終わりなんだぁああ、みんな道連れだぁぁぁあ一緒に死ね!ゴラァアアア!!!!」と男の絶叫が聞こえる!
これは通り魔というかジョーカーというか、無差別殺傷のヤバイやつだ!!!
僕は
「こっち来て! 逃げよう!!」とエリナの手を引いた。
「Nej……無理…足が…足が動かないの……」
エリナが泣きながらガタガタと震えている。
「お願い…先生だけでも逃げて…」
僕は
「ダメだよ!」と言ってエリナを抱えて逃げようとすると腰が重くて動けない。
横を見ると
「牧野ぉぉ…!!!! オレも足動かないンだわ…」と網田さんが泣きながら僕にしがみついてる。
格闘技やっているんでしょ! 自分で何とかしてよ!
そんな事より……ウサロック先生にもしもの事があれば世界の一大喪失…いや目の前で泣いている女の子を何とかして守らないと!
「エリナ! とりあえず僕の後ろに隠れて!」
「はい!」
「牧野…すまねンだわ!」
エリナを壁際にやって僕は両手を広げた。
ジョーカー男は目をギラつかせながらこちらへやって来た。
しかし隅の僕達の存在にはまだ気がついていないようだ…
どうか、そのまま通り過ぎてくれ……
その時、恐怖で我を失った網田さんが
「んほおおぉぉぉお!!!!!こえぇぇぇンだわ怖えぇンだわ!!!!」と僕の背中で絶叫した。
それに反応して、ジョーカー男はこちらを向き刃物を構えて突っ込んでくる!
「エリナよく聞いて! 僕が何とか防ぐから、その間に勇気を出して逃げるんだよ!!」
「いや!そんなのイヤ!!」
「了解なンだわ!!!!」
ジョーカー男はもう3メートル前にまで迫っている。
「うごぉおおあぁああ」
雄叫びを上げて刃物をかざしたジョーカー男を前にすると、僕も恐怖でガタガタと震えた。
その時、僕の後ろから
「牧野ぉおお!!!早く何とかしてするンだわ!!!!」と声がして、ドンと前に突き出された。
僕を突き飛ばした網田さんが横をすり抜け逃げてゆく。
丁度そこへジョーカー男が突進して来るのが見えた。
押された衝撃と緊張から足がもつれて、僕は前のめりに蹴つまずいて派手に一回転した。
最悪だ……
ゴンッ!
ゴチッ!ゴチッ!
「ぐげ」「あが」
ドサッ!
痛たたた……僕はワケも分からず起き上がった。
転んだ痛みだけで、まだ刺されてはいないようだ。
???
なぜだか目の前にはジョーカー男と網田さんが気絶して倒れている。
何で? 誰の仕業? いや、それよりも…
「エリナ!大丈夫!?」と叫んで振り返った。