Neetel Inside ニートノベル
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不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
18・ホムセン ジョーカー事件(2/2)

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エリナは涙をぽろぽろと流して立ち尽くしている。

でも無事だ!!良かった! 

僕はエリナを両手で抱えて車へと走った。

エリナは車の中でもずっと泣いて嗚咽を漏らしているだけだった。

僕はエリナの頭をなでながら
「ゴメンね。僕が勇気を出して網田さん振り払っていれば、あんな怖ろしい目に遭わなかったのに」と言った。

エリナはショックが深いのか泣いてまだ何も喋れないようだ。

とにかく現場を離れよう。

ブロロロロ

いったんアパートに戻り、エリナを桜子さんに預けた。

僕なんかがいるよりも桜子さんの超絶癒しパワーの方がHP回復するに決まっている。

「事情は後で話しますから、とにかくエリナをよろしくお願いします」と頼んで、荷物を降ろしてレンタカーを返しに行った。

歩いて帰る途中何台ものパトカーがホームセンターの方に向かっていた…何だか胸騒ぎがして走る。

ようやくアパートに辿り着いた。

エリナは無事なのだろうか…あんな怖ろしい目に遭ったんだ、心の傷が残ったりしなければいいけど…

僕は重い気持ちで桜子さん宅のピンポンを押した。

反応は無いが、何やら室内から明るい声が聞こえる。

僕は
「お邪魔しまーす」と言ってドアを開けた。

奥の部屋からエリナの声で
「Oh……それで牧野先生ホントすごかったんですの!
あっという間にジョーカーを倒したんですよ!
クルッ(→)ドーン(→)ドカーンで瞬殺ですよ!瞬殺!!
それからあたしをお姫様ダッコして車まで超速ダッシュ!
もーカッコ良すぎてたまんなくて感動しまくって、ずっとボロ泣きしちゃった」

僕は
「あのーすみません、ピンポン鳴らしたんですけど気がつかれなかったみたいで…勝手に上がらせてもらいました」と頭を下げて部屋に入った。

エリナは立ち上がって
「Oh! ダーリンDarlingだーりん! あたしの騎士様!!」と飛びついてくる。

うわ!なんだなんだ!? でも元気な事にひとまずホッとした。

エリナは
「ね、先生からも桜子さん達に話して聞かせてよ、ジョーカーを倒した所!」とせがむ。

ジョーカーを倒した? 何です、それ?

桜子さんは
「本当ですか? 牧野さんが回し蹴りでやっつけたなんて……」と驚いた声をあげると、ちょうどテレビの地域ニュースのアナウンサーが
『次は、通り魔未遂犯確保の瞬間です』と言った。

画面が切り替わり、あのホームセンターでの一件を撮影した防犯カメラの映像が流れた。

映像の中の僕はジョーカー男が襲いかかった瞬間、もんどり打って胴回し回転蹴りをいれてた!!!!

そしてジョーカー男は蹴り飛ばされて、逃げる網田さんと頭をぶつけて……二人はバタリと倒れた。

ええ!! こんな事になってたの!?

「これ牧野さんよね!すごい凄い!」

「お兄ちゃん、格闘家みたい!!!」

「Du ser fantastisk ut! あたしの言った通りでしょ!」

僕は網田さんに突き飛ばされて、足がもつれてスッ転んだだけなのに…

アナウンサーは
『警察では犯人逮捕に繋がったこの人物に感謝の意を伝えたいとの事で、情報提供を募っています』と締めくくった。

楓ちゃんは
「お兄ちゃん、 警察行こう! 金一封出るかもよ」

「いや、あれは偶然だし…感謝されるような事じゃないよ。
うーん、でも事故とは言え網田さんには悪いことしたな…」

桜子さんが
「牧野さん、武術とか格闘技されてるんでしょ?」と聞いた。

「してませんよ!」

「いーえ、隠しても無駄。
あの状況であんな大技、普通とっさに出ないわ。
あっ! そうか!
格闘家が手を出すと凶器を使ったと見なされるから黙っているのね。
大丈夫よ、大手柄なんだから」

楓ちゃんが
「あーなるほど!だから警察が来る前に逃げたんだ!!」

「違うって! エリナを救うのにテンパっていただけ」

エリナは
「あの調子コキ失礼バカ野郎に頭を掴まれても耐えてたのは、そういうワケだったのですね……
手を振り払うだけで圧倒的暴力と見なされるから」と涙をうっすら浮かべる。

「だから違うってば!」

「そうやって簡単に否定しちゃうところが……さすがあたしのダーリン……
やだ……カッコよすぎてまた泣けてきた…」

楓ちゃんがスマホ画面を僕に向け
「ほら見てみてツイッター! お兄ちゃんが犯人をやっつけたところアップされてる!」と見せる。

現場にいた買い物客が騒ぎを撮影したところをあげたようだ。

僕が胴回し回転蹴りを入れて(?)立ち上がった所まで撮影されていて、最後顔が少し映ってる。

幸いなことにエリナの顔はちょうど物陰に隠れていた。

「mycket! あー凜々しいですわ」

「ねぇお兄ちゃん、#イケメン格闘家、で拡散されてるよ」

「はは……僕はイケメンでも格闘家でも無いから身バレはしなさそうで安心した…」

桜子さんは
「はいはい隠しておきたいなら安心して。私たち絶対に秘密にしますからね」とウィンクした。

       

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