Neetel Inside ニートノベル
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不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
48・希春とキス!?!?

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月曜のミーティングで希春に真琴を引き合わせたいので事前に話を通しておく事にした。

夜、希春にLINEを送る。

[ プロモの音楽担当に推薦したい人を見つけました!
堤 真琴さんといいます。
彼女がフーガを読んで作った曲を偶然聞いてそれがとても良かったです!
ぜひ聴いてもらいたいので次のミーティングに連れて行きたいのですけど大丈夫かな? ]と送った。

既読がつかない……お仕事中かもう寝てるとか?

僕は返事を待つ間、久々に新都社を開いた。

な!!なんと!!!
『雲海のフーガ』のアンソロジー企画がベータマガジンで立ち上がってる!!

こんなの新都社出身のレジェンド級マンガ作家でしかあり得ないよ。

シリアスにギャグ、マンガに小説と皆さんちゃんと描かれてて申し訳なくなる……何もお返し出来なくて誠にごめんなさい。

それより何より新しい作家さんが新都社に続々と参入して来てて盛り上がっているのが嬉しい! 昔あったという新都社ブームを実際に見てるみたい……

♪ピコン

希春からビデオ通話が来た。

「こんばんは♪ヒツジくん。連絡ありがと。
ごめんね♪ お風呂入ってたの」

希春は自室なのだろうか上品でシックな調度品に囲まれた部屋にいる。

ローブ姿で頭にバスタオルを巻いて顔は薄ピンクに上気している。

さすがに可愛いなぁ、こんな姿はテレビでも雑誌でも見たことが無い……そもそも国民的アイドル希春とこうやってお話しすること自体が奇跡だ。

「こんばんは。こちらこそ突然ごめんね」

「やっほー♪そこヒツジくんの部屋なんだ!
昭和レトロないい感じのお部屋ね♪
LINE読んだけど、スッゴい引きね! やっぱ何か持ってる人は違うなー♪」

「いやたまたま出会ったんだ。
ストリートミュージシャンの人なんだけど、とても良い曲だと思うからぜひ使って欲しいんだ。
プロデューサーは希春だからまず聞いて判断してもらわないといけないけど」

希春は急にジト目で
「ところで“彼女”って書いてあったけど、どんな女性?若いの?」と鋭く尋ねる。

うぐ!

「ハイ……デス」

「まさかとは思うけど……また美少女とか?」

「ぅ、ぅーんどうなのかな、世間一般的には可愛い方じゃないかな、知らないけどハハハ」

いや飛びっきりの美少女だけどそこはボヤかして
「それに音楽を聞いた時は男子だと思ってたし中性的な感じかな」続けた。

「ふーん、それであたしより可愛い?」

「そそそそそんな!!!その子はまだ16歳だし、そそそそういう目で見てないから。
それに希春はトップアイドルなんだし希春以上の人なんて滅多にいないよハハハハハ」

「ヒツジくんって何かやましー感情があると目が泳いで言葉数が多くなるからすぐ分かっちゃう。
けど、そういう所もカワイイ♪
まぁヒツジくんの事だから外見に惑わされたとは思わないから信じてるよ♪」

ふぅ希春が大人で良かった……こういう余裕をエリナ達も見習って欲しいよ。

「でね希春、さっそくその子を月曜日に会わせたいんだけどいいかなって」

「あれれ♪ヒツジくん、天気予報見てないの?
台風が急にコースを変えてこっちに来ているんだって。
明日から月曜にかけて上陸するみたいだから中止にしようかと思ってて」

「え、そうなんだ……じゃあ火曜以降になるね」

「そのコ、どこに住んでるの?
遠くだとカミナリマガジンに来るの大変だろうから少しスケジュールに余裕を持たせた方がいいでしょ?」

「すすすす住んでる所は僕の所の近くだだからだだだだ大丈夫だよ!!!!」

「ちょっと待って!その慌てぶり変だよ!
具体的にどこ住み?」

どきっ!!!

「えとえとえーと……僕の隣の部屋ス、ハイ」

「えー!!隣って!!!ちょっと待ってよ!!!
エリナも桜子さんも楓ちゃんも一つ屋根の下に住んでおきながその真琴ってコまでいるの!?!?」と叫び声を上げる。

ひえっ!さっきまでの余裕は一体いずこ?

「いや急に住むことになったというか……」

「もーホント悔しー!(ドン)
ヒツジくんがいつも他の女性と同じ建物で暮らしていると考えるだけで、毎日胸が張り裂けそうな思いしてるんだからね!!」

怒った顔もめちゃプリティ……なんて思ってる場合じゃない。

「その、真琴は他に行く所がない境遇だから取り敢えず桜子さんのご厚意で空いてる部屋に住むことになったんだ」

「ふーん、じゃあ一時的な事なんだね。
ところでまだ他に部屋空いてる?」

「い、一階に一部屋空いてるハズだけど」

「じゃ、あたしそこに引っ越す♪
そしたら毎日会えるでしょ?でしょ♪」

「そんな!!!スーパーアイドルがこんな平凡な住宅地に引っ越したら大騒ぎだよ。
連日野次馬が押し寄せて近所迷惑になるから!!」

「じゃあさ、ご近所さん達にお金渡して引っ越して貰うとか?」

「ダメだよ!みんなそれぞれの生活があるんだから掻き乱しちゃいけないよ」

「えー!つまんないなー。
何だかあたしだけ除け者にされてるみたい……」

「あわわわ希春はプロデューサーなんだし、トップアイドルなんだし、そういうのは……」

「んーもぅ!そんなの全然慰めになってないんですけど!!
じゃあね♪ヒツジくん……埋め合わせにキスして♪」

「はい????」

「こうして画面越しでチュッとして。
それで許してあげる♪
ほら」

そう言って希春は顔をインカメラに近づけた。

画面いっぱいに実物大の希春の唇が大写しになる。

「……ほら早く♪……」と脳幹がとろけそうな甘い声でささやく。

もしここで断ってしまえば本当に希春は財力をもって近隣の家々を地上げする事も考えられる……

ゴクリ。ドキドキ

僕は姿勢を正して画面を袖で拭いた。

いやいや、よくよく考えると自分のスマホに唇をつけるだけだ(確認)

画面の向こうの相手が藤咲希春ということでポスターや雑誌にキスするのと変わりはない(ハズ)

チュッ

と軽く画面に口づけた。

「うはー♪」

希春は紅潮した頬を掌で何度もさすりながら満面の笑みを浮かべている。

目はうっすらと涙で濡れ彼女の美しさが一層輝いている。

「あはは♪
ヒツジくんとキスしちゃった……
やー恥ずかしぃ♪
じゃまたミーティングのスケジュール決まったら連絡するね♪
おやすみバイバイ」と真っ赤になった顔を手で扇ぎながら慌ただしく切った。

改めて希春の仕草を反芻していると僕の顔も真っ赤になっていた。

       

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