Neetel Inside ニートノベル
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不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
52・楽しく苦しい療養生活??(1/2)

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昼からの精密検査の結果、やはり重度の自律神経失調症との診断が下された。

直すにはとにかく安静にしてストレスを取り除くか、根本原因以上の癒しを得るかが治療の鍵となるそうなのだけど……

ガチャリ、ダダダ!!

「牧野さん! ごめんなさい大事な時に側にいれなくて!」
「ダーリン! 心配で心配で生きてる心地しなかったの!」
「お父さん! せっかくの忠告を無視して……お買い物に行ったばかりに……ゴメンなさい!」
「牧野クン! ウチを残して逝っちゃダメだべ!!」と涙を目に浮かべた桜子さん、エリナ、真琴、愛里が一斉に病室に入ってきた。

澪奈さん、希春、楓ちゃんがその後に続く。

こんな僕を心配してくれるのはありがたいけど、彼女達のあふれる気持ちが少なからず負担になっているのは確か……

僕は希春に
「えっと、このコは真琴……」と紹介しようとした。

「うんマコちんね♪ さっき自己紹介しあったばかりなの。
音楽をちょっと聞かせてもらったけど最高に気にいっちゃった!
やっぱりヒツジくんは才能を引き寄せる何かを持っているのね♪」

「偶然知り合っただけなんだけど……でもプロデューサーさんのお眼鏡にかなって良かったよ。
プロモに使ってくれるよね?」

希春は真琴を抱き締めて
「もちろん♪ あとはスタジオ録音して音付けたら完成だから楽しみにしてね。
それまでにしっかり直してよ♪」

「お父さん……本当にありがとう……憧れの藤咲希春さんとお仕事出来るなんて……夢みたい。ボクもがんばるから……」と真琴は顔を赤くしてモジモジしながら感謝を述べる。

エリナは
「よかったね、マコちん」と真琴の頭を撫でる。

僕は美少女達の結束を見てホンワカしながら
「うんうん……」とうなずくと涙が溢れた。

こんな素敵な女性達を負担に感じてるとは僕はなんてダメなんだろう。

「ダーリン、そんなに泣かないで……」とエリナがハンカチで涙を拭ってくれる。

「ちょっエリナ!
勝手にあたしのヒツジくんのお世話しないで!」と希春がエリナの肩を指でツンツンして押しのける。

「Nej! エリナとダーリンは共同創作者、公私に渡るパートナーなんだから介護するのは当然でしょ!
希春が入って来る余地は蚊の脳ミソ程も無いの!」

「言ったわね!ぺちゃぱいサン!」

「なによ胴長短足サン!」

「牧野クンと結婚するのはウチだべ」

うわわ、美少女同士の低レベルなイガミ合い……これは完治が遠のくなぁ。

その時

コンコン
「失礼します」
ガチャリ

看護婦さんが
「牧野さん、お夕食です」とトレイを押して入ってきた。

まだ夕方6時前なのに病院の夕食は早いんだな。

看護婦さんは
「すみません。今日は人手が足りないのでお見舞いの方で食事介助をしてもらえますか?」と言うと

「ええ、大丈夫です!」
「ja! もちろん!喜んでやりますわ!」
「こういう仕事も担当編集の務めですから!」
「ウチ、妹が小さい時世話してたから得意だべ!」
「おばあちゃんの介護で……慣れてるから」
「だーめ!ヒツジくんはあたしがお世話するの♪」
とみんなでワイワイとトレイを奪いあっている。

脇で見ていた楓ちゃんが
「お兄ちゃんは誰から食べさせてもらいたいの?」と言うと、皆が一斉に

「「「「「「誰? ギラリ」」」」」」

と僕を見つめる。

「えと、えーと、決めるのは公平にじゃんけんとか???」ととっさに答えた。

すると

最初はグー!じゃーんけーんポーンっ!!!!!

と黄色い声が響いたあと、澪奈さんがチョキを高々と掲げて

「きゃほー↑やったーヤッター↑↑」

泣きながらピョンピョン跳ねまわる。

こうして澪奈さんが僕の食事介助をしてくれる事となった。

澪奈さんは髪をポニーテールにすると病院から貸し出されたエプロンを身につける。

ゴクリ……

バリバリのキャリアウーマン澪奈さんの家庭的な姿はギャップと相まって素敵すぎる……

澪奈さんは味噌汁をスプーンですくい、少し口をつける。

「澪奈!なに味見してるの?」とエリナ。

「熱くないか確かめてるの。
もし火傷でもしたら大変でしょ」と澪奈さんが答える。

いや、病院でそんなアチアチなの出ないと思うけど……

「はい、では先生、アーン」と澪奈さんがスプーンを僕の口に近づける。

え? これって間接キスになるんじゃ……???

わざわざ言うのも意識しすぎな気もするし、澪奈さんのような大人な女性はそんな子供っぽい事を気にしないのかもしれない。

僕は黙って口を開いた。

ズズズ、ごくん

「あら、ヤダあたしったら……スプーンを拭わないで……これって間接キスですね」と澪奈さんが赤らめた頬を擦る。

希春が
「間接キスだなんて、小学生じゃないんだから」と呆れた声をあげ
「この際だからみんなに言っておくけど、あたしヒツジくんとキスしましたからねー♪」と歌うように皆に告げた。

ぶほぉっ!!!

僕は二口目の味噌汁を吹き出してしまった。

       

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